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次々に枯れる 「神々が逆さまに植えた木」

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ナショナルジオグラフィック日本版

マダガスカル島の南西部を訪れると、「グランドマザー」と呼ばれる古木に出合える。最も古い幹は1600年前のものと考えられており、3本の幹が融合したその姿は、まるで巨大な壺(つぼ)のようだ。

グランドマザーはバオバブの木だ。バオバブが世界中の人々から愛される理由は、樹齢の長さだけでなく、その特徴的な樹冠にある。バオバブの木のてっぺんからは、まるで感電した髪の毛のように、あるいは場所を間違えて生えた根っこのように、モジャモジャとした枝が伸びている。神々が逆さまに植えた木との伝説があるのはそのためだ。

「バオバブの幹に近づくと、何か力強いものを感じます」と語るのは、この記事の写真を撮影したウィリアム・ダニエルズ氏。「それは良きものを感じさせるエネルギーなのです」

しかし、バオバブは今、危機に直面している。2018年にはアフリカ南部でとくに古く、とくに大きいバオバブが次々に枯れていることが学術誌に報告された。2021年の研究では、バオバブは気候変動に対して脆弱であり、バオバブ属のうち4種が今世紀中に生育できる地域を大幅に失う可能性があるとの予測が出された。そこにはグランドマザーの種も含まれている。

科学者らはまた、バオバブの森の喪失が、そこに生きる動植物にどのような影響を与えるのかについても評価を進めている。バオバブは、生態系において重要な役割を果たす「キーストーン種」だと考えられている。キーストーン種が減少すれば、その変化は生態系全体に影響を及ぼす。

固有の動植物があふれるマダガスカル

バオバブの木は、アフリカとオーストラリアにそれぞれ1種が自生しているが、マダガスカルにおけるバオバブの存在は極めて重要だ。

この島は、世界でもとくに豊かな生物多様性を有する。かつてはアフリカ大陸の一部だったマダガスカルは、8000万年以上前に島となり、今はインド洋のモザンビーク沖に浮かんでいる。長い時間を孤立した島で生き、進化を遂げてきた動植物の90%は、今日の地球上でここにしか存在しない。島には7種のバオバブが生息し、うち6種はマダガスカルの固有種だ。

「マダガスカル亜区(マダガスカル周辺の生物地理区)のバオバブのとくにすばらしい点はそこにあります」と、米ウィスコンシン大学マディソン校の植物学者で進化生物学者ニサ・カリミ氏は言う。「アフリカ大陸全土で1種であるのに対し、マダガスカルにはバオバブが6種存在するのです」

マダガスカルに多様なバオバブが生息している理由のひとつは、その地形にある。日本の1.6倍ほどの大きさがあるこの島は、標高差に富んでおり、動物が対岸に渡れないような川が網の目のように走っている。おかげで独特の生態系をいくつも作り出し、樹木、哺乳類、爬虫類(はちゅうるい)、花がその狭い範囲に適応して生息している。

バオバブの木と同様、この島に生息する何千種類もの動植物が環境の脅威にさらされている。

キツネザルの仲間も絶滅が危ぶまれている動物のひとつだ。彼らは数種のバオバブの授粉者としての役割も担っている。マダガスカルに生息する109種のキツネザルのうち、3分の1近くがまもなく姿を消そうとしている。

2023年1月に学術誌「Nature Communications」に掲載された論文によると、もしマダガスカルに固有の哺乳類がすべて絶滅した場合、それと同等の動物たちが進化を遂げるまでには2300万年の時がかかるという。

変わる気候、逃げ場のない島

バオバブを取り巻く状況をさらに複雑にしているのが人為的な脅威だ。世界でもとりわけ貧しい国のひとつであるマダガスカルでは、農民たちがより耕作に適した土地を手に入れるために森林を伐採する。最近の研究によると、主に伐採によって、過去20年間でこの国の森林面積の4分の1近くが失われたという。

バオバブの中でもとくに絶滅のリスクが高いのが、アダンソニア・ペリエリ(Adansonia perrieri)という種だ。現在残っているのは200本程度であり、このまま永久に失われてしまう可能性もある。

また、マダガスカル南部には、過去2年間にわたる干ばつが原因で飢饉(ききん)がもたらされた。同時に、マダガスカル東部では記録的な降雨によって鉄砲水が発生した。異常気象は、この先マダガスカルで増えていくことが予想されているが、この国はそれらに対処するための資源をもたない。

それでも、「根底にある問題は気候変動であるという事実を見失ってはならない」と論文の共著者で、英キュー植物園の植物学者マリア・ボロンツォバ氏は言う。

バオバブの運命は

気候の変化によって気温が上昇し、降雨パターンが変化する中、世界中で木々の移動が見られるようになった。温暖な地域では、樹木はより涼しい場所を求めて極地の方向へと動き始めている。

一方、マダガスカルでは別の移動が起きそうだ。研究者らは気温上昇と降雨パターンの変化がマダガスカルのバオバブの森に与える影響をモデル化し、バオバブの生息地は今後100年の間に縮小するとの予測を出している。研究によると、島北部のバオバブは、季節的な気温変化の少ない環境を求めてさらに北の熱帯方向へ移動する必要があるが、海岸に到達したところで行き場所を失うだろうという。マダガスカルの最北端に生息するバオバブ種の一部は、2100年までに姿を消す可能性がある。

「気候変動が島の大部分を変えてしまうことはわかっています」と、フランスの研究機関CIRADの生態学者で、上記の研究に携わったジスラン・ヴィエイユダン氏は語る。「どんな展開が待っているのか、正確にはわかりませんが、かなりの変化があり、生物多様性が大きく影響を受けることは確かです」

地域社会と協力したり、バオバブの保護エリアを設けたりすることに加えて、科学者らはバオバブのDNAの備蓄を進めている。バオバブの遺伝子の断片を集めることで、干ばつへの耐性などの特定の形質を発見し、それを今後育てる木に導入したいと考えているのだ。

ウィスコンシン大学のカリミ氏によると、特定のバオバブは、塩分濃度の高い水や乾燥した土地などの新しい条件に適応する可能性があるという。カリミ氏らは、変わりゆく世界において森を再生させられる可能性の高い木を保存するために、多様な種類のバオバブの種子を探している。

「劇的に変動する気候の中で、森林を再生できる種子を確保するつもりです」と氏は言う。

(文 SARAH GIBBENS、写真 WILLIAM DANIELS、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2023年2月19日付]

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