2021/12/28

これまでアステラス製薬や江崎グリコ、スルガ銀行、アスクル、資生堂など複数社の社外取締役を務めてきた。他業界の企業も少なくないが「例えば化粧品業界なら、健康意識の高まりやドクターズコスメの流行など、自分が関わる医療業界と重なる部分があり、知見が役に立つ」と話す。

需要の高まり受け、自らチャレンジ

金融庁と東京証券取引所が6月に改定した企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)は女性役員の積極登用を促す

今、女性の社外取締役を求める動きはこれまでになく高まっている。金融庁と東京証券取引所が6月に改定した企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)は女性役員の積極登用を促した。女性役員の有無を投資するか否かの判断材料とする機関投資家も多い。従来は女性の社外取締役を「数合わせ」的に選任するケースもみられたが、今や企業側も会社の変革や成長に貢献できる人材を求めるようになってきた。

需要の高まりを受け、自ら社外取締役に手を挙げる女性も出てきている。昨年12月、社外役員の候補者を企業に紹介するサービスを始めたビザスクには、役員経験者、定年退職したキャリア女性のほか、30~40代の起業経験者などが役員候補として登録してくる。

その1人、斉木愛子さんは大学卒業後、大和証券SMBC(当時)やUBS銀行などでキャリアを積んだ。19年に独立し、ベンチャー企業の取締役を務める傍ら、この秋にベンチャーのSDGs/ESG(環境・社会・企業統治)経営を支援する会社を起業した。

「取締役や起業、海外での勤務経験、育児と仕事の両立などの経験を生かせたら」と斉木さん。金融、テクノロジーなどの分野に強みがあることを示す「スキルマップ」などを作成し、社外取締役を探す企業に積極的にアピールする。

ビザスクで社外役員の紹介事業を担当する草野琢也さんによると、社外取締役の報酬には相場があり一部上場の大手企業だと年収600万~1千万円ほど。マザーズ上場だと400万~600万円前後が多い。もちろん報酬だけが目的ではないが、企業の意思決定にかかわり、相応の待遇を得られる社外取締役には、女性の新たなキャリアの選択肢として注目が集まる。

メディヴァの大石さんは社外取締役を目指す女性に「何かの分野で強みを持ち、突出すると声がかかりやすくなる」と話す。社外取締役の活用に本気の企業と女性のニーズが一致すれば、やる気のある女性の能力を生かせる場が広がっていくだろう。

社内役員育成の後押しも
東京商工リサーチによると、21年3月期決算の上場企業2220社の女性役員比率は7.4%で前年より1.4ポイント上昇した。女性役員数は1835人で前年より20.8%増えた。

とはいえ女性役員比率が2~4割を占める欧米とはまだかけ離れている。社外取締役に女性を起用するだけでなく、社内での育成も重要だ。だが女性のロールモデルがいない企業も少なくない。複数企業の社外取締役を務める榎本知佐さんは「役員になった企業の女性社員と面談や懇親の機会を持つこともある」という。女性の社外取締役は、社内の女性活躍推進を後押しする存在にもなる。
(砂山絵理子)

[日本経済新聞朝刊2021年12月27日付]