「花を食べる」ことに違和感を感じる人がいるかもしれない。だが、日本では古くから花を料理に活用してきた。その代表が「菊の花」だ。毎年9月の重陽の節句の際に日本酒に菊の花を浮かべてたしなむ習慣は平安時代のころからあったとされ、江戸時代には花そのものを食用にしたという記載が文献に記されている。現在でもあえ物や酢の物として食卓に上る。

当初は黄色の菊のみだったようだが、昭和の時代になって山形県内で紫菊の生産が盛んになり、紫色の菊も流通するようになった。前回、このコラムでご紹介した「桜の花の塩漬け」もエディブルフラワーの一種といえるだろう。
エディブルフラワーの3つの魅力
エディブルフラワーの魅力は大きくは3つある。まずは、なんといってもその華やかさだ。料理にエディブルフラワーが添えてあるだけで、彩りが豊かになり、料理がぐっと華やぐ。前菜やサラダ、メインの魚や肉料理、デザートやドリンクまでその用途も幅広い。
2つめは、エディブルフラワーの持つ味わいや香り。上質な砂糖のような甘味や爽やかな酸味、さらには心地よい苦味だったり、ピリッとする辛みがあったりする品種もある。サクサク、シャキシャキだったり、ねとっとした粘りがあったり食感が異なる品種もある。それが料理においてはスパイス効果を発揮し、アクセントになる。
3つめは、その栄養価の高さ。品種にもよるが、ビタミンAやビタミンCに富むものや、カリウムを中心に各種ミネラルや、食物繊維を豊富に含むものも多い。エディブルフラワーの栄養価についての研究はまだ途上だが、ある民間企業と大学との共同研究結果によると、ビオラに含有される総ポリフェノール含有量は、スーパーフードであるアサイーの約4倍、マキベリーの約1.5倍含まれている――というデータもある。
エディブルフラワーソルトの場合、使用されている花の香りやその他のスパイスとの相性にもよるが、カルパッチョやサラダなど前菜系の料理に適している場合が多い。また、肉料理よりも魚料理に向いている。生クリームやチョコレート、ミルク、あんこ、いずれの風味にも合うので、ミルクやチョコレート味のアイスにぱらっとかけたり、ぜんざいやどらやきに足したり、チョコレートケーキやショートケーキにトッピングするのもおすすめだ。