デジタルサービスや街づくり…19の多様な事例

全体は4章構成。第1章でパーパスモデルのつくり方・見方を解説したあと、第2章では実際のプロジェクト事例のパーパスモデルが示される。学校と保護者の連絡手段をデジタル化するサービス「スクリレ」、小田急線地下化で生まれた空き地を活用した新しい商店街づくり、デジタルテクノロジーでヘルスケア分野のイノベーションを加速するラボ……内外合わせて19の事例が紹介され、さまざまなテーマ・規模感・主体の共創プロジェクトでこのモデルが有用なことを明らかにする。後半の2章では、よりよい共創を実現するためのポイントや、共創しやすい社会をつくる個人や社会環境について考察する。

パーパスを重視する考え方は、パーパス経営がいわれるようになって日本企業にも浸透し始めてきた。本書を読むと、そうした考え方は1つの組織や立場を超えて多くのステークホルダーを巻き込んでいくプロセスでも、きわめて重要なことだと気づかされる。

「8月の刊行からずっとランキング上位で売れ続けている」と同書店でビジネス書を担当する本田翔也さんは話す。関連書と合わせて展示する特設のワゴンは26日で終了したが、企画系やデザイン系などのビジネスパーソンが多いこの街では、今後も息の長い売れ筋になっていきそうだ。

1位は21年刊のマーケティング本

それでは先週のベスト5を見ていこう。

(1)世界のマーケターは、いま何を考えているのか? 廣田周作著(クロスメディア・パブリッシング)
(2)パーパスモデル吉備友理恵・近藤哲朗著(学芸出版社)
(3)プロ目線のインスタ運用法石川侑輝著(クロスメディア・パブリッシング)
(4)カルチュラル・コンピテンシー花井優太・鷲尾和彦著(ブートレグ)
(5)マスター・オブ・スケールリード・ホフマンほか著(マガジンハウス)

(青山ブックセンター本店、2022年10月17~23日)

1位は本欄2月の記事「次世代のマーケティング像 世界の事例を読み解き探る」で紹介した本。なんと1年ほど前の2021年11月刊で、強力な新刊が出てこない中、再浮上した格好だ。今回紹介した『パーパスモデル』は2位だった。インスタグラムを使ったマーケティングの方法を具体的に解説した本が3位に入った。4位の本は、経済と人間のこれからの関係をさまざまな事例から考えていく本。2人の著者は編集者と写真家だ。5位はビル・ゲイツら多くの成功した起業家へのインタビューから事業拡大のルールを導き出した本。ポッドキャストの人気番組をもとに編集した内容だ。

(水柿武志)

パーパスモデル: 人を巻き込む共創のつくりかた

著者 : 吉備 友理恵・近藤 哲朗
出版 : 学芸出版社
価格 : 2,530 円(税込み)