日経Gooday

たんぱく質ファーストの生活で、牛肉を意識

――現役時代、パフォーマンスを発揮するために、心がけていた生活習慣やセルフケアについて教えてください。

食事は基本的に自炊ですが、09年から栄養士によるサポートを受けていたので、練習や筋トレをよりよいものにするためには、食事は不可欠だと考えていました。たんぱく質の摂取はもちろん、同時に鉄分もとりたかったので、スーパーでは牛肉を買うことを意識していました。たんぱく質に含まれたアミノ酸を体内で枯渇させないことが、回復につながりやすく翌日のよい練習につながるので、サプリやプロテインもトレーニング後には必ずとっていました。

こんなことを話すと、ストイックに見えるかもしれませんが、神経質になりすぎず、おなかがすいたら食べていたという感じです。食べないと痩せる体質なので、無理して食べることでベスト体重をキープしていました。

――鉄分を意識してとっているという話でしたが、生理周期による貧血などはありましたか。

貧血はありませんが、女性ホルモンの分泌の変化で体がむくみ、アキレス腱がスパイクのかかと部分に触れて、ものすごく痛いんです。くるぶし丈の靴下が当たるだけでも痛かった。スパイクは足にピッタリの大きさで作られていますからなおさら。その圧痛を引き起こさないために、医師に相談して低用量ピルを飲み、試合日に生理が重ならないようにコントロールしていました。私はアキレス腱のために飲んでいたので、他の選手とは用途が違うと思いますが。

――睡眠については?

そんなに意識していないですが、とにかく練習がハードで疲れ果ててしまうので、入眠は早かったです。あとは、疲労を感じたときには酸素カプセルを活用していました。使った翌日は、目覚めがよかったと思います。

日常生活を練習以上に大切にしなければいけないと、社会人になってから思えるようになりました。この大前提は、絶対に忘れないようにしようと心がけていました。

――福島さんにとってのリラックスタイムは?

最近のリラックスタイムは、飼い犬のミニチュア・ピンシャーと一緒に過ごすことです。でも、共感を得られるか分からないですが、自分の限界に挑むような練習は、じつは私にとってはストレスではありませんでした。だから、リラックスは何かと聞かれると、速く走れたときや、できないことができるようになったときなんです。限界に挑んで結果につながったときこそ、最高にハッピーな気分になれる。そう考えると、一番のストレス解消法は、練習することだったと思います。

30代に突入して疲労が抜けにくくなり、ケガも治りにくくなって、休むことの重要性を学びましたが、ケガで練習を休むことは私にとってハッピーではなかったし、休まずに練習できることこそハッピーでした。そういう意味では、ケガで苦しい期間もあったけれど、充実した幸せな競技人生だったと思います。

もちろん、今もとても幸せですよ。アキレス腱は痛くないし、晴れた日にグラウンドに行くのは楽しいし、大学生たちが練習を頑張っているのを見るのも楽しい。大学院で学び、いろんな経験をしながら陸上で培った感覚を学生選手たちに共有できればと思っています。

――福島さんにとって、陸上競技とは?

何でしょうね。魅力的で素晴らしいものであることは間違いないですが、自分にとって何なのか分からないからこそ、何十年もやってこられたかもしれないし、分からないから面白かったのかもしれない。いろんな人に迷惑をかけましたが、関わってくれた方々も幸せだと思ってもらえたなら、私も幸せです。

(ライター 高島三幸、写真 厚地健太郎、ヘアメーク 高柳尚子)

福島千里さん
1988年北海道生まれ。北京・ロンドン・リオデジャネイロ五輪日本代表。女子100m(11秒21)、200m(22秒88)の日本記録保持者。日本選手権の100mで2010年から2016年で7連覇を成し遂げ、2011年の世界陸上では日本女子史上初となる準決勝進出を果たした。2022年1月に現役生活を引退。引退後は、セイコースマイルアンバサダー(スポーツ担当)として次世代育成に貢献している。

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