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NIKKEIリスキリングの連載「職種&スキルの図鑑」では、注目の職種で活躍している人に、どんなスキルが必要なのか、どうすれば身につくのかを聞き、関連するスキルも解説します。第2回ではカスタマーサクセスと同じく営業の分業化が進む中で生まれた新職種「インサイドセールス」について取り上げます。

<記事のポイント>
・インサイドセールスは、成約につながりそうな顧客・キーパーソンを探し出す
・必要なスキルは「情報収集」と「仮説思考」
・時間や場所にとらわれずに働ける

前回、米国発の「The Model(ザ・モデル)」と呼ばれる営業の分業体制について説明しました。インサイドセールスはその起点となる仕事で、一言で言えば、訪問しない営業。電話やウェブ会議ツール、メール、SNSを使って、マーケティング部門が収集した情報などをもとに見込み顧客にアプローチし、商談化する可能性の高い案件を「フィールドセールス」(対面営業担当)につなぎます。

「ザ・モデル型」を採用していたのは、クラウド経由でソフトウエアを提供して利用料を得るSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)系スタートアップや外資系が中心でしたが、デジタル化やコロナ禍によるリモートワーク普及を背景に導入する企業が増加。エン・ジャパンによると同社の求人サイト「AMBI」に掲載されたインサイドセールスの求人数(2022年)は20年比で約4倍にまで増えています。

インサイドセールスの実際の業務はどんなもので、どんなスキルセットが必要なのか? 独ソフトウエア大手SAPや米マイクロソフトを経て、2020年から富士通でインサイドセールス機能を担うデジタルセールス部門の立ち上げ・統括をする友廣啓爾さんに聞きました。

インサイドセールスとは「新規営業の専門家」

インサイドセールスというと「テレアポ(テレフォンアポインター)」と同じだと勘違いする人がいますが、僕から見ると全く違う仕事です。テレアポも商談や訪問のアポイントを取りますが、用意されたリストの上から順番に電話をかけるのが普通で、短時間でできるだけ多くのアポを取ることが重視されます。

それに対しインサイドセールスは、個々の顧客に関する情報を事前に徹底して集め、優先順位をつけてアプローチします。もちろんアポの数も大事ですがより重要なのは質。いかに決定権を持つキーパーソンを探りあて、実際の商談につながる確度の高いアポをとるかが問われます。

一度アプローチして断られたとしても、それはタイミングが悪かったのか、交渉の相手が適切ではなかったのかなど理由を分析し、それぞれの理由に合ったフォローの仕方で顧客の関心を温めて育てる「ナーチャリング」をします。また商談まで進んだけれども契約には至っていないとか、交渉が停滞している案件を再び加速させる役割も担います。その意味でインサイドセールスとフィールドセールスは完全に分かれているわけではなく、ペアを組んで顧客にアプローチする関係です。

インサイドセールスは顧客との最初の接点になるので、やりとりの中から自社の製品やサービスがどう見られているのか本音を汲み取り、マーケティング部や製品部、さらには経営陣などに顧客の声をフィードバックするのも重要な役割です。

従来の営業は人海戦術でした。しかも個々人の勘や経験頼みでノウハウが属人化されていましたが、インサイドセールスは属人化を排して再現性がある型を作り、チーム全体としての効率向上を目指します。

富士通でインサイドセールスの組織を立ち上げた友廣さん

富士通でインサイドセールスの組織を立ち上げた友廣さん

もう一つ、これは『ザ・モデル』の著者である福田康隆さんからお聞きしたんですが、営業というのは古今東西、新規営業が実は苦手なんです。やっぱり誰だって、既存顧客のところに行く方が楽ですから。でもそれではこれからの時代、ビジネスを持続的に成長させることはできません。

僕はインサイドセールスとは、マーケティングから渡された潜在顧客のクオリファイ(精査)とナーチャリングだけでなく、自分たちで新たに顧客を掘り起こす新規営業の専門家であり、その企業の「顔」だと位置付けています。

僕がインサイドセールスに必要だと考えるスキルは以下の5つです。

①情報収集
アクティブリスニング
③仮説思考
チームワーク
⑤SFA活用
(※それぞれクリックすると、各スキルの初歩を学べる別記事に飛びます。順次追加していきます)

各スキルがなぜ必要なのか、どんな場面で使うのか、具体的にお話ししましょう。

徹底した情報武装が大切なワケ 

昔から「営業はガッツと根性だ」と言われてきました。確かにそういう側面もありますが、インサイドセールスと従来の営業の一番の違いは、データを駆使して情報武装をすることです。そのために必要なのが①の情報収集のスキルです。

お客さまにコンタクトする前に、その会社の中期経営計画から有価証券報告書、営業利益率などはもちろん、過去に自社内の誰がいつ、先方の誰にどういうアプローチをしたか、競合の会社、製品は何かなどを事細かに調べます。その際、顧客層ごとのニーズの違いを把握し、ターゲット顧客を特定するSTP分析(Segmentation Targeting Positioning)や、顧客と自社と競合をそれぞれ分析する3C分析(Customer Company Competitor)などマーケティング戦略のフレームワークも使います。

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