プロ野球楽天でテクノロジー活用 CTOとして目指す先セラヴィリゾート泉郷 上田顕さん

注目の職業やビジネスに携わり、第一線で働く人のキャリアを紹介する連載「フロントランナーの履歴書」。今回は、かつて楽天野球団(プロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルス)でテクノロジー活用の土台を作った上田顕さん(37)。現在はホテル・貸別荘・愛犬リゾート施設などを展開するセラヴィリゾート泉郷(東京・豊島)でCTOを務める。CTOについて「最高技術責任者」と思いきや、実は「チーフ・トランスフォーメーション・オフィサー(最高変革責任者)」だという。

DX込みで「よろず企業改革」引き受けるCTO

「改革にはデータやアウトプットも必要ですが、やはりまず現場主義が大事。ホテルの現地スタッフと話す際には、球団時代の経験が生きています」

こう語る上田さんのキャリアで目を引くのは、まさに楽天イーグルスでテクノロジー活用を推進した経験だ。当時のつながりで、現在も副業でプロ野球のデータ分析を手掛けるデルタ(東京・豊島)に参画。17年8月から戦略アドバイザーとして、データ活用周りの新規事業などについて助言している。

かつて楽天野球団でテクノロジー活用の土台を作った上田さん

上田さんの現職は「CTO」だ。技術の方のCTOは役職として設ける企業が増えてきたが、上田さんのような変革の方のCTOはまだ例が少ない。

大手企業では2009年6月にソニーが導入したほか、日本板硝子や野村ホールディングス、三菱ふそうトラック・バスなどが新設。上田さんの役職の正式名称は「事業変革推進担当オフィサー」で、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)も含めて、会社をよくするために何でもやります」と話す。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、セラヴィリゾート泉郷をはじめとするホテル業界は苦戦を強いられている。そんな中でコロナ後を見据えて経営の基盤を強くするため、足元で矢継ぎ早に改革への種まきを進めている。具体的には経営戦略の策定、業務改革や組織・人事のトランスフォーメーション、データを活用した経営スタイルの導入などだ。

野球界からなぜ企業再生の道へ進んだのか。上田さんの「変化球」なキャリア人生について聞いた。

元野球少年、「球団経営」目指してまずは銀行へ

――野球の仕事には昔から関心があったのですか。

「幼稚園から高校まで野球をやっていましたが、高校生の時に肩を故障してプレーからは離れました。東北大理学部に進学した04年の秋、仙台市に楽天イーグルスが誕生しました。そのアルバイト第1号として、05年の初年度からグラウンドキーパーに採用されたのが球団との接点です。ボールボーイやバッティングキャッチャーも担当させてもらうなど、アルバイトは4年生まで続けました」

「その時に『球団経営って面白そうだな』と思い、いつか担える人間になろうという目標を決めました。大学での専攻は人文地理でしたが、勉強のために経営の本ばかり読んでいました。卒業論文でも、『地域とスポーツ』の観点でむりやり結び付けて球団経営に関して書いたほどです。卒業後は球団職員として入社して業界にチャレンジする道がありましたが、『世の中では経済が大事だ。お金のことを勉強したい』と思って銀行を選択しました」

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テクノロジー活用、スピード立ち上げ