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若い腸年齢が健康長寿のもと 食物繊維の摂取がカギ

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私たちの腸にすみ着いている腸内細菌が健康や長寿に密接に関わっていることが明らかになってきた。京都府立医科大学大学院の内藤裕二教授は腸の健康を維持したり、逆に老化を促進したりする要因を解析。腸の老化度を導き出す「gAge(gut clock of aging、ジーエイジ=腸年齢)」という指標を作った。この指標の精度を高めていけば、その人の健康寿命も予測できるかもしれないという。腸の加齢進行を促す食事や、逆に腸の若さを維持するのに役立つ食事について、内藤教授に聞いた。

高齢になってもなるべく病気知らずでいたいと思うなら、見直したいのが腸の健康。「日本人の平均寿命と健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)はこの20年間、いずれも伸び続けている。しかし、平均寿命と健康寿命の間には男性は約9年、女性は約12年というギャップがある。この期間は寝たきりなど日常生活に制限があるということ。どうすればこの溝を埋められるか、解決策の1つとして腸の老化促進因子のコントロールがあると考えている」と内藤教授は指摘する。

同じ年齢でも若く見える人や、老けて見える人がいるように、老化は必ずしも同じスピードで進んでいかない。「体の老化度を示す生物学的年齢は人によって異なる。腸内にすむ腸内細菌叢(そう)もその年齢を左右している可能性がある」(内藤教授)。

私たちの腸にすむ40兆個とも100兆個ともいわれる腸内細菌の集合体を腸内細菌叢という。近年、研究が一気に進み、腸内細菌叢が炎症性腸疾患や大腸がんなど消化管の病気だけでなく、肥満や2型糖尿病などの生活習慣病や精神疾患といった病気と関わることを示唆する報告が相次いでいる。「若年者と長寿者の腸内細菌叢の比較により、どんな腸内細菌叢を持ち、どんな食生活をしている人では病気のリスクが低く、健康長寿の可能性が高いのかが洗い出されてきた。そこで、これまでに学術的な根拠が得られている因子を総合的に評価し、腸内環境からその人の生物学的年齢を推定する指標を作った」と内藤教授は話す。それが腸年齢で、腸年齢を進める「アクセル要因」と、若さを維持したり逆戻りさせたりする「ブレーキ要因」を整理すると下記のようになる(図表1)。

腸の老化度 腸年齢チェックリストで確認

内藤教授は私たちが生活習慣や食生活をチェックすることで腸年齢を算出できる「腸年齢チェックリスト」(図表2)も作成した。「例えば、お酒をよく飲み、こってりした食事が好きな人は腸年齢が進みやすいが、豆腐やイモ、雑穀など植物性食品を取る人は腸に良い作用をもたらす有用菌の占有率が高くなり、腸年齢が進みにくい。自分の生活が腸にどんな影響を与えているのかが分かれば、確実性の高い対策を取ることができる」(内藤教授)。まずは自分の腸年齢を確かめてみよう。

「多くの研究により、腸年齢が進むことで慢性的な炎症が生じることが分かってきた。ここでいう炎症とは感染症によって起こる肺炎のような急性の炎症ではなく、体内で常に起きている微量かつ持続的な炎症のこと」(内藤教授)。なかでも、腸管の表面(上皮細胞)を通過して体に悪さをする異物が侵入するのを防いでいる「バリア機能」が破綻することによって起こる炎症は全身に波及し、さまざまな疾患につながる。チェックリストにある「肉類が好き」が高じて脂肪を取り過ぎる一方、食物繊維の摂取が少なくなると悪玉菌が増え、腸表面を守る粘液層が薄く脆弱になる。「こうして手薄になった腸バリアを通過した細菌や異物などが体内に漏れ出し、炎症を起こしていく。つまり、腸は老化やそれに伴う疾患の起点の1つとなる」(内藤教授)。

京丹後市、百寿者が全国平均の3倍

内藤教授は2017年から百寿者数が全国平均の約3倍に上る長寿地域の京都府京丹後市で、高齢者の腸内細菌叢と健康度合いの関連を調べている。すると、この地域の高齢者の腸内には炎症を抑えたり、異物が体内に侵入するのを防いだりする免疫物質「IgA(免疫グロブリンA)」の分泌を促す「酪酸産生菌」という種類の菌が多く存在していた。さらに、サルコペニア(加齢による骨格筋量や筋力の低下)の人の割合も少なかった[1]。

フィンランドで成人約7200人(平均年齢49.5歳)を15年間追跡した研究をもとに「寿命を短くする腸内細菌はプロテオバクテリア門の菌ではないか」という仮説が、21年に発表されたばかり[2]だが、京丹後市の高齢者ではこのプロテオバクテリア門の菌の占有率も少なかったという。「酪酸産生菌やビフィズス菌といった有用な働きをする菌は、酸素がある環境では生きられない。健康な人の腸の奥は酸素が入り込まないようにバリアが巡らされているので、これらの有用菌が生きやすい。一方、寿命を短くするプロテオバクテリア門の菌は、多少酸素があっても生き抜くことができる菌。つまり、炎症によって腸管のバリア機能が壊れ、腸管内に酸素が入り込む状態が起きると、このような菌がすみ着きやすくなるのだろう。こうした悪い働きをする菌がすみ着きやすい腸に変わることが老化促進の出発点になると考えられる」(内藤教授)。

京丹後市と京都市に住む人の疾病データを比較した結果、京丹後市では大腸がんの罹患(りかん)率が約半数で、認知症発症率も低く、血管年齢が若いことも分かってきているという。では、京丹後市の高齢者が疾病に強い腸内細菌叢を維持できている要因は何か。食事調査を行った結果、京丹後市の高齢者は根菜や果物、全粒穀物(玄米、雑穀など精製されていない穀物)、イモ類、豆類、海藻を食べる頻度が高かった(図表3)。

「豆類や全粒穀物に豊富な食物繊維は、酪酸など健康維持の要になる短鎖脂肪酸という物質を作る腸内細菌の餌になる。また、植物性食品はポリフェノールやカロテノイドといった抗炎症や抗酸化作用が強い物質も多く含む。多様な植物性の食品を取ることが腸内細菌叢の多様性を高め、炎症抑制に働いているのだろう」(内藤教授)。また、豆類やイモ類、穀物類には消化されずに腸に届いて有用菌の餌になる難消化性デンプン(レジスタントスターチ)も豊富だ。がんの遺伝的リスクが高い人を対象に平均2年間、定期的にレジスタントスターチを摂取させた英国の研究では、膵臓(すいぞう)がんや胃がん、胆道がんなどを半分以上減少させたという[3]。

「腸の健康を考えるとき、日本人の食生活の一番の弱点は食物繊維量の少なさにあるといっていい。玄米から食物繊維などを取り除いた白米や白パンを主食にしているため、穀物由来の食物繊維摂取量は世界の中でも特に少ない。3食に1食だけでも主食を全粒穀物に変えるだけで、腸年齢進行にブレーキをかけることができるはずだ」(内藤教授)。

慢性的な便秘も要注意

前述の腸年齢チェックリストでは腸年齢のアクセル要因として便秘に関わるものが4項目挙げられている。「加齢とともに増える便秘は自覚しやすい腸年齢の進行症状といえる」(内藤教授)。慢性的な便秘は老化を進行させるだけでなく、寿命にも関わるとする報告も多い。例えば、排便しようとして強くいきむと血圧が上昇し、心臓に負担がかかることが知られているが、米国で約336万人を約7年間追跡した調査では、便秘で下剤を使用している人は死亡リスクが有意に高くなり(図表4)、また、主に動脈硬化によって起こる冠動脈心疾患や虚血性脳卒中リスクが高くなった。

内藤教授は便秘と健康長寿の関係について「食事に含まれる脂肪の吸収を促すために胆汁酸が腸内に分泌されるが、これを腸内細菌が餌にしてできる二次胆汁酸は腸を動かしたり、便の水分量を整えてスムーズな排せつを促すのに欠かせない。二次胆汁酸は老化速度を遅らせる働きを持つ物質としても注目されている。しかし、便秘の人では一般に腸内の二次胆汁酸の量が低下する。たかが便秘、されど便秘。便秘の放置は危険だ。下痢傾向の人も大腸の水分調節機能が衰えている。思い当たる人は対策を取った方がいい」と説明する。

そのためにも心がけたいのはスムーズな消化吸収と排せつを維持することであり、有用菌の餌となる食物繊維類をしっかり取る食生活だ。腸の健康バランスを崩す「高脂肪食(特に動物性脂肪)」「食物繊維をほとんど含まない高糖質食」「高塩分食」といった偏った食生活はなるべく控えたい。「ドイツで行われた研究で、塩分の取り過ぎによって腸内の乳酸菌が減少し、Th17という炎症細胞が増加して血圧が上昇することが確認されている」(内藤教授)[4]。

今日から、腸年齢のアクセル要因を減らし、ブレーキ要因を増やす生活を始めよう。10年、20年後に腸はあなたにその恩恵をもたらしてくれるはずだ。

(ライター 柳本操)

内藤裕二
京都府立医科大学大学院医学研究科 生体免疫栄養学講座教授。京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学教室准教授、および同附属病院内視鏡・超音波診療部部長などを経て2021年より現職。炎症性腸疾患、腸内細菌叢、消化器病学を専門とする。

[1]J Clin Biochem Nutr. 2019 Sep;65(2):125-131.

[2]Nat Commun. 2021 May 11;12(1):2671.

[3]Cancer Prev Res (Phila). 2022 Jul 25;OF1-OF12.

[4]Nature. 2017 Nov 30;551(7682):585-589.

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