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メキシコ「マヤの道」 文化の衰退を防げるか

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

中米ユカタン半島に残された古代の道路網と廃線路が、全長100キロメートルにおよぶメキシコ初の長距離トレイル「マヤの道(カミノ・デル・マヤブ)」に生まれ変わった。

スタート地は、ユカタン州の州都メリダから20キロメートル南にある19世紀の大農園ソヤスチェ。ゴールはマヤの神殿が残るマヤパン。徒歩なら5日間、サイクリングなら3日間のコースで、ユカタン半島のマヤ文明に触れられる。

地元のマヤの人々とともに作られたこのトレイルは、メキシコ先住民の物語を伝えつつ、この地域の人々を搾取の歴史から解放することを目指している。

「『マヤの道』の一番の目的は、マヤ人の文化、歴史、伝統を守ることです」と、アルベルト・ガブリエル・グティエレス・セルベラ氏は説明する。氏は、このトレイルの建設と管理に携わる環境保護団体エコゲレロのディレクターだ。「『マヤの道』は観光客のためだけのプロジェクトではありません。すべてのコミュニティーの、すべての人びとのためのプロジェクトです」

不利な条件に置かれたマヤ人

ユカタン半島がスペインに征服された16世紀以降、マヤの人々は入植者が決めた階級制度の底辺に押しやられてきた。マヤ語ではなくスペイン語が第1言語とされ、マヤの寺院は破壊され、その石を使ってキリスト教の教会が建てられた。

「現在もマヤの人々は不利な条件に置かれたままだ」と、自身もマヤ系のグティエレス・セルベラ氏は語る。地元に仕事がないため、多くの人がメリダの建設現場やリゾート地であるカンクンのホテルで働かざるを得ず、それがまたマヤ文化の衰退につながっている。

「マヤの道」がこのような状況を変えるきっかけとなることを、氏は期待する。「観光を通じて雇用の機会と、人々が地元に残る選択肢ができることを望んでいます」

搾取の歴史を物語る大農園アシエンダ

マヤ最初期の都市のひとつであるソヤスチェで、私は「マヤの道」を自転車で周遊するグループに加わった。

7世紀、マヤ文明は中米全域とメキシコ南部に拡大、メキシコのチチェンイツァやグアテマラのティカルには壮大な寺院が建てられた。しかし9世紀、干ばつ、戦争、人口過密などの影響でマヤの最盛期は終わる。その後マヤ文明は持ち直したものの、15世紀の終わりになると侵略者がやってくる。スペイン人征服者は1527年にユカタン半島を略奪、1542年、ティホと呼ばれたマヤの土地にメリダの街を築いた。旧世界から持ち込まれた病気によってマヤ人は大打撃を受け、その土地は入植者に分け与えられた。

この土地が、大農場「アシエンダ」の起源だ。現在、「マヤの道」沿いには、スペインによる征服後に作られた邸宅とこれを囲む大農場アシエンダがいくつもある。アシエンダは一種のプランテーション制で、「現代のユカタン半島の歴史は、アシエンダの歴史といえます」とエコゲレロのガイドを務めるイスラエル・オルティス氏は話す。

19世紀までに、ユカタン半島のアシエンダでは、エネケンの栽培が盛んになる。エネケンはリュウゼツランの一種で、丈夫な繊維がロープの材料として重宝された。この「緑の黄金」のおかげでメリダは裕福になったが、その背後には農場でのマヤ人たちの強制労働があった。第2次世界大戦後に合成繊維が登場し、エネケンの需要が失われるまで、こうした搾取は続いた。

かつてのアシエンダの大邸宅は多くが廃虚となっているが、なかにはアシエンダ・ヤスコポイルのように、博物館やブティックホテルに改装されたアシエンダもある。しかし、「何も変わっていません」とオルティス氏は指摘する。その所有者は200年前と同じ一族だからだ。

観光地化する神の泉

サイクリングの2日目、私たちはセノーテに立ち寄った。セノーテは陥没穴に淡水がたまった泉で、ユカタン半島におよそ3000カ所あるという。

セノーテは古くから旅行者の人気を集めてきたが、「マヤ人にとって、セノーテは神聖な場所です」とオルティス氏は訴える。観光地化と伝統との折り合いをつけるのは簡単ではないが、オルティス氏はこの天然資源を単に高値で売るのではなく、コミュニティーが自ら観光を管理することを勧める。

たとえば、アバラにある「ホセ・ペチュ・レミのアバラの職人の家」では、ウイピル(女性が着るポンチョ型の衣服)や手彫りのジャガー像、地元産のハチミツなど、ユカタン半島の伝統的な製品が売られている。「ここでは多くの人が農業をしていますが、収入はわずかです」とレミ氏は話す。「(伝統的な)手工芸品を売ることで、副収入を得て、文化とルーツを守ることができます」

経済的な困難が原因で酒や麻薬に依存する人がいることからも、副収入は重要だとレミ氏は考える。手工芸品店を運営するほかにも、レミ氏は音楽や食べ物、買い物を楽しめる文化イベントを定期的に開催して、地元の人々に仕事を提供し、アバラの文化を発信する機会の構築に努めている。「伝統、伝統的知識、そしてマヤ語は、マヤ文化の最も重要な部分です」とグティエレス・セルベラ氏は言う。

サイクリング最終日の3日目、私たちはレスタウランテ・コミュニタリオで朝食を食べた。地元ムクイチェの女性が経営する、廃虚を改装したレストランだ。

エルシー・マリア・ネイディ・バカブ氏が、パパツレス(コーントルティーヤでゆで卵を巻き、サルサをたっぷり塗ったもの)、タマレス(トウモロコシ粉の生地に肉や野菜を包んで蒸したもの)、ポクチュック(オレンジの果汁でマリネした豚肉を焼いたもの)などの伝統料理を作っている。

「マヤ族であるということは、誇りを持つということです」と言うネイディ・バカブ氏は、ウイピルを着たり、マヤ語を話したりするだけでなく、このような料理を提供することも伝統を守る重要な方法だと考える。

おなかがいっぱいになった私たちは、草木や野生動物のあふれる道を、「マヤの道」の終点マヤパンへと向かった。自転車を降り、日に焼けた筋肉痛の脚でククルカン神殿の頂上まで急な石段を登る。かつてマヤ文明の首都だったマヤパンの中心にあるピラミッドだ。頂上からは、ユカタン半島の森やサイクリングしてきた道を見渡すことができる。

「『マヤの道』がきつい道であることは間違いない」とオルティス氏は言う。しかし、至れり尽くせりのリゾートホテルでは決して得られない、知られざるメキシコを垣間見る貴重な経験だ。

グティエレス・セルベラ氏は、「マヤの道」を拡張してユカタン半島全体を結ぶネットワークにしたいと考えている。「『マヤの道』では、単に旅行するだけではありません。訪れた場所に、何かを還元することができるのです」

(文・写真 Richard Collett、訳 山内百合子、日経ナショナル ジオグラフィック)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2022年9月18日付]

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