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ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している八重洲ブックセンター本店だ。ゴールデンウイークはほぼコロナ前と同じような人出だった。平日の回復こそ鈍いが客数はかなり上向いてきている。それでもついで買いやまとめ買いが以前ほどではなく、ビジネス書の売り上げも伸び悩む。そんな中、書店員が注目するのは、デジタル施策をプロバスケットボールチームに持ち込み、チームをリーグ屈指の人気チームへと変容させたマーケティングの体験的解説書だった。

ユーチューブチャンネル登録者が10万人突破

その本は藤掛直人『ファンをつくる力』(日経BP)。副題には「デジタルで仕組み化できる2年で25倍増の顧客分析マーケティング」とある。著者の藤掛氏はBリーグのチームを運営するDeNA川崎ブレイブサンダース(川崎市)の事業戦略マーケティング部部長だ。DeNAが東芝からチームを承継する際、子会社の立ち上げや経営戦略策定を主導、体制をつくった後はチームのマーケティング領域を統括し、ファン層拡大に取り組んだ。その軌跡を「あらゆるビジネスでも応用できるエッセンスとして抽出」したのが本書だ。

YouTube(ユーチューブ)チャンネル登録者10万人突破(Jリーグ・Bリーグ合わせて1位)。tiktok(ティックトック)フォロワー数10万人突破(日本のプロスポーツクラブで読売ジャイアンツに次いで2位)。これが藤掛氏らが実現した結果だ。これはそのまま観客動員や大幅な売り上げ増にも結びついている。どのような施策でこんなことができたのか。

それは「戦略的にデータやデジタルを活用することによってファン層を拡大した」ことに尽きる。そしてこの「ファンをつくる」は仕組み化できると著者はいう。このことを実際の川崎ブレイブサンダースの施策を追いながら解説する形で解き明かしていく。ファンがファンを呼び、どんどん人気が高まっていく、臨場感たっぷりの魅力的な成功物語として読むこともできるが、記述は仕組み化のプロセスとして構成されており、多くのビジネスパーソンが自分の仕事の参考にできる構成だ。

著者によれば、仕組み化は3つのプロセスに分解できる。①個性の定義と体現②体験価値の最大化③体験人数の増加――の3つだ。このうち②体験価値の最大化と③体験人数の増加は「汎用的で再現性のある手法が存在する」と著者は見る。この部分を、その下準備としてデータを集めるところから書き起こし、データ活用で②③を実現する、さらなるデジタル施策でこの2つを飛躍させるという順番でたどってみせる。

2階ビジネス書売り場の新刊・話題書を集めた書棚に面陳列で展示する(八重洲ブックセンター本店)

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