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ナッツの女王・ピスタチオ なぜ、最近身近になった?

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NIKKEI STYLE

ピスタチオに関する話題に触れることが多くなった。気になり出した最初は人気洋菓子店の新しいケーキの話題だったり、有名レストランの新作デザートの話題だったりしたのだが、最近はそうした"よそ行き"タイプのお店ではない、住宅地エリアの飲食店やコンビニでも手に入る身近なものにまでピスタチオが浸透してきた。

身近なお菓子にもピスタチオが続々登場

たとえば、チロルチョコ(東京・千代田)は、今年1月18日に「チロルチョコ〈プレミアムピスタチオ〉」を発売した(ローソン限定)。コンビニで1個売りのチロルチョコは1個20円程度で売っていることが多いのだが、こちらは1個45円。ピスタチオクリームの入ったチョコは珍しくないのでどのへんが「プレミアム」なのかと思いきや、中にピスタチオが丸々1粒入っている。

同じ日に、「モスバーガー」では、「まぜるシェイク ピスタチオ」(Sサイズ310円)を発売。これは3月下旬までの期間限定だったのだが、3月には続いて「ひんやりドルチェ ピスタチオ&ラズベリー」(1個190円)を発売(9月中旬まで)。ピスタチオものは切らさない構えのようだ。

また、豆乳メーカーであるマルサンアイとキッコーマンソイフーズ(東京・港)は2月と3月に「豆乳飲料ピスタチオ」を相次いで発売し、しのぎを削っている。興味深いのは、どちらも、パックのまま凍らせて食べることも勧めている点。ピスタチオと言えばアイスクリーム、ジェラートのフレーバーとしても今や定番だが、そこはアイス専門店だけでなく食品メーカーとしても押さえたいようだ。

そんな"ピスタチオブーム"の火付け役だったと言われているのが、「成城石井」が2020年に売り出したイタリアPOLICOM社製「ピスタチオスプレッド」だ。パンに塗るだけでなく、ビスケットやクラッカーにつけたり、アイスクリームにかけたり、牛乳に溶かして飲んだりなど、SNS(交流サイト)でも話題になった。話題の商品だと、今では品薄かと思いきや、実店舗でも同社の通販サイトでも依然取り扱いは多く、定番商品になっているようだ。

しかし、"アラ還"の筆者からすると、どうも最近のピスタチオのイメージがかつてとは違うように感じる。ピスタチオを最初に食べたのは、バブルの頃のバーだっただろうか。その頃のイメージは、ほかのナッツ類よりはちょっと高めな割に小皿に出てくる量は少なく、おいしいけれど物足りない。そして一皿に何個かはひどく汚れたものや殻が開いていないなどのハズレがあったものだ。

主産地がイランから米国へシフト

ところが最近、スーパーマーケットでピスタチオを探してみたところ、300グラムで900円程度が相場のようだと気がついた。さすがにピーナツの手軽さには及ばないが、昔抱いた"希少感"が薄らぐ価格と感じる。

そして意外だったのが、きれいで食べやすいということ。まず、一つひとつのサイズが大きく粒ぞろいになったと感じた。そして、殻にシミがある汚れたものや、閉じたままの殻も1袋の中にほとんど見当たらない。

品質がよくなって価格が下がった? ビジネスパーソンなら、そこにイノベーションがあった気配を感じるではないか。

そこで、ピスタチオの生産について調べてみたところ、主産地のシフトがあることが分かった。かつてピスタチオの最大の生産国と言えばイランで、日本でも2000年ごろまではイラン産がシェアの半分を占めていた。ところが、国連食糧農業機関(FAO)の統計を見てみると、20年の生産量上位は、1位米国(約47万4000t)、2位トルコ(約29万6300t)。イランは3位に転落し、生産量は約19万tで米国に倍以上水をあけられている。

イランの生産量が大きく落ち込んだのは18年。それは米国トランプ政権がイランに対して厳しい経済制裁を科した年で、国際的な事情がからんでいるかもしれないが、農産物は制裁の対象外だったはずなのでほかの要因があるかもしれない。

ただ、確かなことは、米国内ではピスタチオ投資が熱を帯びているということだ。08年のリーマン・ショック以降、投資マネーが不動産や株や債券などから新しいビジネスへ流れる動きがあり、それがピスタチオ栽培にも向かったという。今でも海外のサイトを検索してみると、ピスタチオ投資を誘うページが(ちょっと怪しい気配の漂うものも含めて)そこそこヒットする。

ピスタチオは木の実だが、植樹してから十分な収穫量が得られるようになるまで6~8年程度を要するという。そして、米国でのピスタチオ生産量が10万t台のレベルから一気に40万tの大台に乗せてきたのが16年。リーマン・ショック以降に植樹したピスタチオが採れ出して市場に流れ込んだ様子を感じさせる変化だ。

ピスタチオビジネスはブルーオーシャンだった

しかし、なぜピスタチオなのか。食糧難やたんぱく質供給難について警鐘が鳴らされる昨今、ほかにも有望な農産物はあるのではないか。

さらに調べると、FAOのある資料に行き着いた。それは中央アジアの国の農業生産を高めるためにピスタチオとクルミの栽培を推進することを説明する資料なのだが、有利なポイントとして挙げているなかにこういうものがある。(1)広大な土地(2)適した気象条件=夏季の乾燥――。中央アジアの乾燥地帯原産のピスタチオの木は高温と低温に強く、また乾燥を好むのだ。

そして資料はさらに、ピスタチオとクルミのビジネスとしての魅力を挙げる。それによれば、これらは今後需要の増加が見込まれ、輸出の可能性がある。その半面、従来の生産地では市場志向に合わせる考え方が欠けており、栽培や収穫の技術も昔のままで、歩留まりが悪い。一方、市場では既存の品種が評価されていない、といったことが挙げられている。つまり、ピスタチオとクルミの生産は、近代化すれば勝てるというストーリーだ。

さて、資料にあるようなピスタチオとクルミ栽培に向く、乾燥した地域で広大な農地は米国にも多い。ただ、米国ではすでにクルミは大々的に栽培されているが、ピスタチオはそこまで栽培されていないとなれば、投資家たちにはピスタチオビジネスは"ブルーオーシャン"に見えただろう。

一方、イラン産ピスタチオは他国産に比べて風味がよいと評価されていたが、いくつかの弱点を抱えていた。それは栽培、収穫、選果などの調製作業が人手によるもので効率が悪いことと、もう一つ致命的だったのはカビの発生による毒素発生のリスクが高いことだった(一般に、ナッツ類に発生するカビは強い毒の原因として恐れられる)。そのため、日本の輸入管理でも検疫のレベルを上げるなどの対応を採ったため、00年前後に日本でのシェアはイラン産が縮小し米国産が大きくなり始めていた。

ただ、その米国ではアーモンドやクルミなどと同じく機械作業による効率化が進んでいるという長所があったが、風味の評価で負けていた。それに対して、品種選びと栽培管理で風味を向上させる研究が始まった。

カビ発生の抑制については、ピスタチオは未熟段階で殻が開いてしまったり、熟し過ぎてしまったりするとカビが発生しやすくなるため、それを防いだり除去したりといった栽培上の管理を行う。また、収穫してから24時間以内に速やかに一次乾燥を済ませるといった調製段階での管理も厳格に行うという。

また、殻が開いていない実を取り除く選果も機械化しているという。これは人が目で見て選別するしかないだろうと思っていたが、米国では機械化に成功した。ニードルピッカーという、その名の通り針状の部品を持った装置で、針は開いた殻には引っかかり、閉じた殻には引っかからないために選別が可能だという。これと色彩選別機を併用することで、高効率で高精度な選果が可能になった。

こうした基本的な技術革新が進んでいたところへ、リーマン・ショック以降に積極的な投資があり、米国が急速にピスタチオ生産国として首位に躍り出た。そして、日本の店頭に並ぶピスタチオの品質が上がり、また価格も下がることで製菓、外食、食品メーカーでも積極的に新商品開発が行われているというわけだ。

さて、高温・低温・乾燥に強く、商品としても魅力のある農産物となれば、もちろん米国以外でも注目される。実際、2位のトルコも米国を猛追しているし、ヨーロッパからアジアにかけてピスタチオに力を入れ始めている国々はまだある。ということは、今後さらにおいしいピスタチオを手軽に楽しめるようになるかもしれない。

願わくは「ピスタチオバブル」ということにはならないでほしいところだが。とりあえず、当分はピスタチオを使った新商品からは目が離せそうにない。

(香雪社 斎藤訓之)

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