主産地がイランから米国へシフト

マルサンアイの「豆乳飲料ピスタチオ」(画像提供:マルサンアイ)
キッコーマンも「豆乳飲料ピスタチオ」を提供(画像提供:キッコーマンソイフーズ)

ところが最近、スーパーマーケットでピスタチオを探してみたところ、300グラムで900円程度が相場のようだと気がついた。さすがにピーナツの手軽さには及ばないが、昔抱いた“希少感”が薄らぐ価格と感じる。

そして意外だったのが、きれいで食べやすいということ。まず、一つひとつのサイズが大きく粒ぞろいになったと感じた。そして、殻にシミがある汚れたものや、閉じたままの殻も1袋の中にほとんど見当たらない。

ピスタチオブームの火付け役だったと言われている「成城石井」の「ピスタチオスプレッド」(イタリアPOLICOM社製)

品質がよくなって価格が下がった? ビジネスパーソンなら、そこにイノベーションがあった気配を感じるではないか。

そこで、ピスタチオの生産について調べてみたところ、主産地のシフトがあることが分かった。かつてピスタチオの最大の生産国と言えばイランで、日本でも2000年ごろまではイラン産がシェアの半分を占めていた。ところが、国連食糧農業機関(FAO)の統計を見てみると、20年の生産量上位は、1位米国(約47万4000t)、2位トルコ(約29万6300t)。イランは3位に転落し、生産量は約19万tで米国に倍以上水をあけられている。

イランの生産量が大きく落ち込んだのは18年。それは米国トランプ政権がイランに対して厳しい経済制裁を科した年で、国際的な事情がからんでいるかもしれないが、農産物は制裁の対象外だったはずなのでほかの要因があるかもしれない。

ブルボンもピスタチオを使った菓子を2月から期間限定で発売。写真は「濃厚チョコブラウニーピスタチオ」(写真提供:ブルボン)

ただ、確かなことは、米国内ではピスタチオ投資が熱を帯びているということだ。08年のリーマン・ショック以降、投資マネーが不動産や株や債券などから新しいビジネスへ流れる動きがあり、それがピスタチオ栽培にも向かったという。今でも海外のサイトを検索してみると、ピスタチオ投資を誘うページが(ちょっと怪しい気配の漂うものも含めて)そこそこヒットする。

ピスタチオは木の実だが、植樹してから十分な収穫量が得られるようになるまで6~8年程度を要するという。そして、米国でのピスタチオ生産量が10万t台のレベルから一気に40万tの大台に乗せてきたのが16年。リーマン・ショック以降に植樹したピスタチオが採れ出して市場に流れ込んだ様子を感じさせる変化だ。

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ピスタチオビジネスはブルーオーシャンだった