渡辺氏は「日本発のパブリック・ブロックチェーンでユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)を狙っている」と語る26歳の起業家だ。どんな子供時代を過ごしたのか。「典型的なサッカー少年、少し前まで金融や株式会社の基本知識もなかった」と笑う。

横浜市の出身。プロサッカーチームのFC東京の下部組織に属し、中学・高校はサッカーの強豪校として知られる暁星学園で学んだ。主将を務め、部活にのめり込んだが、高2の時の東京都大会で2位に終わった。暁星は東京大学出身で俳優として活躍する香川照之氏らを輩出した進学校でもある。サッカーをやめ、受験勉強に全力を注いだ。そして、慶応義塾大学経済学部に進学した。

インドの貧困街では子供たちから「お金をくれ」と手を伸ばされ、ショックを受けたという。

「これまではサッカーしか知らなかったが、世界を歩いてみよう」。世界各国の学生で構成する国際的NPOのアイセックに属し、インドや中国、ロシアなど海外を歩いて回った。「お金をくれ」。インドの貧困街では子供たちから手を伸ばされ、ショックを受けた。格差社会の現実や大気汚染の街、社会主義国家の実情を目の当たりにした。「社会の課題を解決するには、どうしたらいいのか」と悩み、帰国後はソフトバンク系の人工知能(AI)企業でもインターンシップ(就業体験)で働いた。

「革命を起こせないのか」と起業を模索

多くのNPO関係者とも交わったが、「ビジョンは素晴らしいが、お金がうまく回っていない。世界を変えるような社会にインパクトを与えているのは政治家とIT(情報技術)起業家が多い。しかし、今のネット社会ではグーグルには勝てない。革命を起こせないのか」と考えながら、起業を模索した。

そんな時、目に飛び込んできたのがビットコイン。「7万円の価値があっという間に200万円に、何これ」と圧倒された。17年、大学3年の時に米シリコンバレーに近いサンフランシスコ州立大学に留学した。しかし、経済学を学ぶのが目的ではない。現地でブロックチェーン技術を学び、起業のノウハウを身につけるためだ。現地企業に英語で自己PR状を送りまくった。医療系のブロックチェーン企業、クロニクルドに採用され、1年間、昼夜を問わず猛烈に働いた。

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ゴールは会社を清算すること