検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

米マスク義務廃止 生活正常化へロゼ・シャンパン人気

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

今春マスク着用義務の撤廃が相次いだ米国で、生活正常化へ向けた「お祝いの酒」が人気を呼んでいる。欧米で祝い酒といえばシャンパンと相場が決まっているが、近ごろ注目を浴びているのは、ロゼ・シャンパン。フランス・シャンパーニュ地方の桜色の発泡性ワインだ。「特に、Z世代(1990年代半ばから2010年ごろまでに生まれた世代)の若い女性たちに人気で、乾杯している様子がとてもよくSNS(交流サイト)にアップされるようになっている」と、シャンパーニュ委員会日本事務局代表・笹本由香里さんは話す。

実は、米国でのロゼ・シャンパンの消費はパンデミックが始まった年から伸びている。シャンパーニュ委員会によれば、米国へ輸出する全シャンパンに対するロゼの占有率(輸出量ベース)は、20年、21年に18パーセント台となり、10パーセント台半ばで推移していたコロナ前に比べ2~3パーセント増加。金額ベースでは、21年に全体の5分の1を占めるようになった。

抑圧された生活を余儀なくされたパンデミックの中で、ロゼ・シャンパンは祝いの酒というだけでなく、心を晴れやかにする特別な酒として選ばれているようだ。「SNS映えするかわいさがある」(笹本さん)のも、ぐっと女性たちの心を引き付ける理由。生産者により、色合いも淡いピンクから、赤ワインのように色が濃いものまであり、あれこれ試すのも楽しい。英国でも、同じようにロゼ・シャンパンの人気が高まっているという。

桜を愛(め)でる文化のある日本も、ロゼ・シャンパンの人気が高い国だ。大手メゾン(シャンパンの生産者)のヴーヴ・クリコは、04年にノン・ヴィンテージ(通称ノン・ヴィン、NVとラベルに記される。ノン・ヴィンとは、複数年のワインをブレンドしたシャンパンのこと)のロゼ・シャンパン「ローズラベル」を、世界に先行し日本でリリースした。生産地のシャンパーニュ地方は、気候が冷涼でブドウの質が安定しない。そこで、ワインの質を一定に保つため、このような造り方をするのだ。ノン・ヴィンは、ブドウの当たり年に造られるヴィンテージものに比べ手ごろな価格で、ヴーヴ・クリコのこのロゼは大ヒット。商品が足りず、他国でのリリースは2年後になったそうだ。

ロゼ・シャンパンは、大きく分けると2つの手法で造られる。1つはアサンブラージュと呼ばれる赤ワインをブレンドする方法。そしてもう1つが、ブドウをつぶし果皮を果汁と共にタンクに入れ浸漬(しんせき)、醸す方法だ。ヴーヴ・クリコによれば、現在、同地方のロゼ・シャンパンの95パーセントは、アサンブラージュ法で造られているという。そして、この方式のロゼ・シャンパンを1818年に初めて造ったのが、同社なのだ。

考案したのは、マダム・クリコ。早世した夫の跡を継いだスーパー女性経営者で、同社を大きく発展させた。当時、出回っていたロゼ・シャンパンは、紫色のエルダーベリーのジュースを白いシャンパンに混ぜたもので質が悪かった。「そこで、彼女は赤ワインをブレンドし、質の高いロゼを生み出したのです。彼女はロゼのような色合いのシャンパンは、人々を引き付けることを知っていたのでしょう」と、ヴーヴ・クリコのワインメーカーであり、研究開発およびワインコミュニケーション責任者のガエル・グーセンスさんは言う。

抜群のビジネスセンスを持ったマダム・クリコは、アサンブラージュ法のロゼ・シャンパンだけでなく、ヴィンテージ・シャンパンも初めて売り出した。瓶内2次発酵を行うシャンパンから、効率的に澱(おり)を取り除く方法の考案も、彼女の功績だ。

同社には「ローズラベル」より高価格のロゼもあるが、こちらもアサンブラージュ法で造る。グーセンスさんにあえて、なぜ今もアサンブラージュ法を取るのかと聞いてみた。

「スティルワイン(発泡性ではないワイン)のロゼは、だいたい1~3年の間に飲みます。それ以上経つと果実感などが失われてしまうからです。でも、シャンパンは出荷の前に長期間瓶内熟成させなければいけないという規則がある。ヴィンテージ・シャンパンでは最低3年です(ノン・ヴィンでは法定期間は15カ月だが、『ローズラベル』はそれより長く最低3年間瓶内熟成)。私たちのロゼでは、シャンパンにボディーを与えるタンニンを重視していますが、タンニンを醸し法で得るためには7~9日は果皮を浸漬しなければいけない。そんなに時間をかけたら赤ワインができてしまいます」

「ローズラベル」には、白シャンパンにはない、ストロベリーやラズベリーなど赤果実の香りが加わる。「明るい芳醇(ほうじゅん)な味わいを楽しんで」とグーセンスさんは言う。

かつてRMはやぼったいと言われていたが…

一方、大手メゾンのルイ・ロデレールは、セニエ法と呼ばれる醸し法のひとつでロゼを造る。「ロデレールじゃなく"ロゼ"レールと言っていいぐらいこだわりがあるんですよ」とは、あるワインショップのスタッフ。セニエとは"血抜き"の意味で、醸しの頃合いを見てタンクから果汁を抜く。これが血抜きに見えるというわけだ。

ロゼ・シャンパンが同社のラインアップに加わったのは1974年のことだが、1832年の同社のセラーの記録には、既に「山ウズラの目」と呼ばれるロゼ・シャンパンが登場する。長い年月を経て1974年にリリースされたのは、ロシア皇帝アレクサンドル2世のために造られた同社の最高級シャンパン「クリスタル」のロゼ版で、このシャンパンの誕生100周年を記念して造られた。よりフルーティーで質感があり、ワインらしいものをと考え、生まれたシャンパンだという。

「一般的なセニエ法では、ブドウを収穫した後に破砕、ばらばらになった果皮を果汁に浸漬する期間は1~2日です。でも、ルイ・ロデレールではブドウを破砕せずステンレスタンクの中に入れ、低温で10日間ほど漬け込みます。こうすることで果皮から、雑味のない非常に華やかな抽出物を得ることができるのです」と、同社の正規輸入代理店エノテカの商品部副部長・笠原亮さんは説明する。この工程は同社のこだわりで、お茶を煎じるようにゆっくり成分を抽出するという意味を込め、同工程を「アンフュージョン」(煎じるという意味)と呼んでいる。

「クリスタル・ロゼ」の成功により、同社はより手ごろな価格となる「ヴィンテージ・ロゼ」もリリースした。こちらも同じ「アンフュージョン」の工程を経て造られるシャンパンだ。黒ブドウのピノ・ノワールと白ブドウのシャルドネをブレンドしたものだが、実はシャルドネは「アンフュージョン」の工程でも用いられる。「一般的に、(シャンパンの)ロゼ色の液体はピノ・ノワールのみで造られることが多いのですが、ルイ・ロデレールでは、少量のシャルドネの果汁と一緒に浸漬します。こうすることでピノ・ノワールとシャルドネの個性が融合しやすくなるんです」と笠原さん。完成するのは、ほのかにピンクがかった色合いのシャンパンだ。

「このシャンパンは温度帯により色々な表情が出てくるんです。よく冷えたロゼは白ブドウのニュアンスを強く感じますが、温度が上がるにつれ黒ブドウのニュアンスが多く出る。きりっと冷えた状態より少しだけ温度が上がると赤果実のニュアンスが出るので、肉やデザートによく合うんです」(笠原さん)。花の香りも豊かで、低い温度では白い花の香り、温度が上がると、ピンクや赤い花のような香りが立ちのぼる。「花束の代わりに女性への贈り物としても」と笠原さん。まさに女心をくすぐる演出だ。

一方、笹本さんに近年は若手の生産者が意欲的なロゼを造っていると聞き、ワイン輸入会社ラシーヌ社長の合田泰子さんを訪ねた。合田さんは、30年来小規模生産者であるレコルタン・マニピュラン(RM)の紹介に力を入れてきた。シャンパーニュ地方の大手メゾンは、自家所有のブドウ畑で栽培するほか、ブドウや果汁などを購入しシャンパンを造るネゴシアン・マニピュラン(NM)だが、RMはブドウの栽培から醸造まで手掛ける造り手。ここ20年ほどで大きく注目を浴びるようになった生産者だ。

「RMのシャンパンはかつてやぼったいと言われていたのですが、1980年代に(単に発泡性ワインのシャンパンとしてではなく)ワインとしてのおいしさを追求する生産者であるアンセルム・セロスが登場し、大きく変わりました。シャンパンは複数年のブレンドで造ると言われていますが、RMは基本的にヴィンテージものとうたわずとも、単一年でシャンパンを造る。大手メゾンとは異なるところです」と合田さんは説明する。

ロゼ・シャンパンとタレの焼き鳥とのマリアージュ

先に、「ロゼ・シャンパンの造り方は大きく2通り」と紹介したが、RMの中には両方の方式をとる生産者もいる。この2、3年大きく注目されているというラエルト・フレールは、シャンパーニュ地方で用いられる主要なブドウ3品種のひとつ、ムニエ種100パーセントのロゼ「エクストラ・ブリュット ロゼ・ド・ムニエ」を造る生産者。このシャンパン造りには赤ワインのブレンドと醸し法両方の手法を用いている。

合田さんはラエルトのロゼ造りの考え方を紹介してくれた。「同じブドウの品種を異なる方法で醸造することで、非常に異なったフレーバーや感覚が生まれてくる。それをブレンドすることで、その年々のバランスを得ることができる。ロゼ・シャンパンは造り手の腕のみせどころで、すごくエキサイティングな仕事です」

ラエルトの現在の当主は7代目となるオーレリアン・ラエルト。39歳の若手で、「ロゼ・ド・ムニエ」の瓶のラベルには、彼の妻の描いた柔らかなイラストがあしらわれている。クラシックなラベルが多いシャンパンでは珍しく、ワインを飲む前から心が浮き立つ。

造るのに手がかかるロゼ・シャンパンは、白シャンパンに比べ価格が高い。その中で、「(RMの中では)生産量が多く価格が手ごろ」と合田さんが教えてくれたのが、RMのジョゼ・ミシェル・エ・フィスのロゼだ。同社はムニエとピノ・ノワールを用いた「ブリュット・ロゼ」を造る。先代のジョゼ・ミシェルはムニエの名手と言われた造り手で、現在は孫のアントナンがワイン造りを受け継ぐ。

「手ごろ」でありながら、同社のシャンパンも2つの手法を駆使し、驚くほど手が込む。セニエ法で色や香りを引き出したピノ・ノワールとムニエを用いたシャンパンだが、「年によって割合が変わりますが、21年のロゼには赤ワインが8パーセント、ブレンドされています。それも、樽(たる)で3年熟成した18年ものと、樽熟成数カ月の21年ものをそれぞれ50パーセントずつ用いているんです」(合田さん)。

ちなみに昔はブドウが熟さないと言われていたシャンパーニュ地方だが、温暖化の影響で、かつてよりブドウの味わいが深くなっているという。「ジョゼ・ミシェルによれば、味わいがあり、ニュアンスがまろやかなものができるようになってきたそうです」と合田さん。同地方で造られるスティルワインはコトー・シャンプノワと呼ばれるが、「ここ数年で赤ワインを造る生産者が多くなっています」と合田さんは明かす。

シャンパン全体の生産量のうちロゼの生産量はわずか。ルイ・ロデレールでは、全体のわずか5~6パーセントがロゼだという。気候変動により、もしかしたらその構図も少し変わるかもしれない。

さて、赤ワインの骨格を感じるロゼ・シャンパンは、肉やデザートと合わせやすいと先に紹介したが、カモなどの豪華料理とのすばらしい相性の話を聞く中、「これはやってみたい」と思ったのは、タレの焼き鳥とのマリアージュ。「ロゼにもよりますが、甘辛い味の濃い料理はうまくマッチしますよ」と笹本さん。タレがからんだ焼き鳥片手に、晴れやかなロゼ・シャンパンを心置きなく飲む。これぞ、極上のコロナ明け祝いになりそうだ。

注:価格は2022年9月3日現在

(ライター メレンダ千春)

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_