かつてRMはやぼったいと言われていたが…

ルイ・ロデレール「ブリュット・ヴィンテージ・ロゼ」(2015年、1万2100円)

一方、大手メゾンのルイ・ロデレールは、セニエ法と呼ばれる醸し法のひとつでロゼを造る。「ロデレールじゃなく“ロゼ”レールと言っていいぐらいこだわりがあるんですよ」とは、あるワインショップのスタッフ。セニエとは“血抜き”の意味で、醸しの頃合いを見てタンクから果汁を抜く。これが血抜きに見えるというわけだ。

ロゼ・シャンパンが同社のラインアップに加わったのは1974年のことだが、1832年の同社のセラーの記録には、既に「山ウズラの目」と呼ばれるロゼ・シャンパンが登場する。長い年月を経て1974年にリリースされたのは、ロシア皇帝アレクサンドル2世のために造られた同社の最高級シャンパン「クリスタル」のロゼ版で、このシャンパンの誕生100周年を記念して造られた。よりフルーティーで質感があり、ワインらしいものをと考え、生まれたシャンパンだという。

「一般的なセニエ法では、ブドウを収穫した後に破砕、ばらばらになった果皮を果汁に浸漬する期間は1~2日です。でも、ルイ・ロデレールではブドウを破砕せずステンレスタンクの中に入れ、低温で10日間ほど漬け込みます。こうすることで果皮から、雑味のない非常に華やかな抽出物を得ることができるのです」と、同社の正規輸入代理店エノテカの商品部副部長・笠原亮さんは説明する。この工程は同社のこだわりで、お茶を煎じるようにゆっくり成分を抽出するという意味を込め、同工程を「アンフュージョン」(煎じるという意味)と呼んでいる。

淡い色合いの「ヴィンテージ・ロゼ」は、優しくやわらかい味わい

「クリスタル・ロゼ」の成功により、同社はより手ごろな価格となる「ヴィンテージ・ロゼ」もリリースした。こちらも同じ「アンフュージョン」の工程を経て造られるシャンパンだ。黒ブドウのピノ・ノワールと白ブドウのシャルドネをブレンドしたものだが、実はシャルドネは「アンフュージョン」の工程でも用いられる。「一般的に、(シャンパンの)ロゼ色の液体はピノ・ノワールのみで造られることが多いのですが、ルイ・ロデレールでは、少量のシャルドネの果汁と一緒に浸漬します。こうすることでピノ・ノワールとシャルドネの個性が融合しやすくなるんです」と笠原さん。完成するのは、ほのかにピンクがかった色合いのシャンパンだ。

「このシャンパンは温度帯により色々な表情が出てくるんです。よく冷えたロゼは白ブドウのニュアンスを強く感じますが、温度が上がるにつれ黒ブドウのニュアンスが多く出る。きりっと冷えた状態より少しだけ温度が上がると赤果実のニュアンスが出るので、肉やデザートによく合うんです」(笠原さん)。花の香りも豊かで、低い温度では白い花の香り、温度が上がると、ピンクや赤い花のような香りが立ちのぼる。「花束の代わりに女性への贈り物としても」と笠原さん。まさに女心をくすぐる演出だ。

ラエルト「エクストラ・ブリュット  ロゼ・ド・ムニエ」(7920円、※現在は完売、入荷待ち)

一方、笹本さんに近年は若手の生産者が意欲的なロゼを造っていると聞き、ワイン輸入会社ラシーヌ社長の合田泰子さんを訪ねた。合田さんは、30年来小規模生産者であるレコルタン・マニピュラン(RM)の紹介に力を入れてきた。シャンパーニュ地方の大手メゾンは、自家所有のブドウ畑で栽培するほか、ブドウや果汁などを購入しシャンパンを造るネゴシアン・マニピュラン(NM)だが、RMはブドウの栽培から醸造まで手掛ける造り手。ここ20年ほどで大きく注目を浴びるようになった生産者だ。

「RMのシャンパンはかつてやぼったいと言われていたのですが、1980年代に(単に発泡性ワインのシャンパンとしてではなく)ワインとしてのおいしさを追求する生産者であるアンセルム・セロスが登場し、大きく変わりました。シャンパンは複数年のブレンドで造ると言われていますが、RMは基本的にヴィンテージものとうたわずとも、単一年でシャンパンを造る。大手メゾンとは異なるところです」と合田さんは説明する。

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ロゼ・シャンパンとタレの焼き鳥とのマリアージュ