金融業界が敬遠される理由

グローバルに展開する金融機関がほとんど入っていない。トップ50のうち大手と言えるのは、資産運用のキャピタル・グループ(31位)だけ。100位まで広げても、同じく資産運用のフィデリティ(59位)、クレジットカードのビザ(71位)、商業銀行のキャピタル・ワン(73位)ぐらいだ。世界で活躍する米国の証券会社や銀行といえば報酬も社会的地位も高いはずなのに、なぜだろうか。

調査結果を遡って確認すると、リーマン・ショック(08年9月)直後の09年はゴールドマン・サックス(26位)や銀行のウェルズ・ファーゴ(45位)など、上位50社の1割超が金融大手だった。ランキングに入りづらくなったのはこの10年ほどのことのようだ。

業界で働く人に聞くと、リーマン後に「金融=強欲・悪者」のイメージが醸成されていったことや、報酬はよくても労働環境が厳しいことから敬遠されるようになっているのが原因では、という見立てだった。

ニューヨークの金融機関で9年間働いているジェイムズ・プーモさん(34)は「自分は今の職場にとても満足しているし、同じ企業内でも直属の上司によって職場に対する評価は大きく変わると思う」と断ったうえで、2000年代後半に金融業界で働くインターンや若手社員の過労が社会問題として大きく取り上げられた影響を指摘する。「この5~10年、業界は改善に取り組んでいるものの、イメージは完全には回復していない。最近の新卒者は、給料は低くてもより健康的な職場で働きたいと考えるようになっている」と話した。

管理職クラスの40代の男性は、金融機関は10年ぐらいの下積みが求められることが多いと説明する。「ミレニアル(20代後半~30代)は『午後5時からは自分の時間』といった考えの人が多く、若いころに長時間働いて経験を積むのは当たり前と考えた自分たちの世代とはかなり違う」と感じている。働き方が柔軟で、早くから大きなプロジェクトに関われる可能性のあるITやコンサルが若い世代に魅力的に映るのもうなずける。

昨年6月、モルガン・スタンレーのゴーマンCEOが「(社員が9月6日の)レイバーデーまでに(在宅から)オフィス勤務に戻らなければ失望する」と警告して話題になったが、その後、オミクロン株の流行で「私は間違っていた」「どんなやり方がよいのか誰もが模索中だ」と軌道修正を余儀なくされた。ビジネスチャットツールのスラックが立ち上げた「フューチャー・フォーラム」が米国や日本など6か国の1万人以上の知識労働者を対象に21年11月に実施した調査では、働く場所や時間の柔軟性に不満を抱く人の72%が転職を考えていると回答した。コロナが迫った働き方改革は、もはや一時的で終わらせられるものではなくなっている。

古参企業が多い日本のランキング

「柔軟性」や「ワーク・ライフ・バランス」のほか、グラスドアの22年版のコメントで目立ったキーワードに「DEI」がある。日本でも最近、よく目にする「Diversity(多様性), Equity(公平) and Inclusion(包摂)」の頭文字を取った言葉だ。この考え方もミレニアルやさらに若いZ世代(20代前半まで)が重視するとされる。優秀な若い世代を惹きつけるため、今後はこうした価値観にも配慮することが必要になってきそうだ。

日本の状況はどうだろう。同じようなランキングを社員口コミサイト・転職情報のオープンワークがまとめていた。「働きがいのある企業ランキング」の22年版では、1位にグーグル、4位にセールスフォース・ドットコムが入るなど、IT系が多いのは米国同様だ。コンサルの人気も高い。

ただ、IT企業の割合は2割ぐらいと、米国に比べて低い。日本っぽいと感じたのは、歴史のあるメーカーや商社が上位に目立つ点だ。米国のランキングにはスタートアップも入っているのに比べると、新鮮味に欠ける。パンデミックを経て、多くの企業が新たな働き方の可能性に気づいたはず。今後、日本でもこれまでにないユニークな「働きがいのある会社」が台頭してきたらおもしろい。

(ライター 高橋恵里)