
南アフリカワイン(南アワイン)が静かな人気だ。欧州やチリ産のワインなどと比べると知名度は低いが、品質の高さと値段の手ごろさが愛好家にうけている。環境に配慮した生産者が多いことから、最近では「SDGs(持続可能な開発目標)ワイン」としても脚光を浴びつつある。
今年2月下旬、東京都内の南アワイン専門店「アフリカー」(東京・中央)で、愛好家向けの試飲販売会が開かれた。新型コロナウイルス感染予防対策の一環で、参加人数を1回4人に絞り、6回行われたが、予約受け付け開始と同時にどの回も埋まった。筆者が参加した回で、隣にいた男性は「本当はもう少し早い時間がよかったが、申し込もうとしたらすでに満員だった」と苦笑い。店長の小泉俊幸さんがカウンター越しに参加者のグラスにワインを注ぎながら、全部で12種類のワインを順番に説明した。
小泉さんはもともとシステムエンジニアだった。10年ほど前、夫婦で南アフリカを旅行し、現地で飲んだシャルドネに衝撃を受け、脱サラして南アフリカ専門のワインショップを開いた経歴の持ち主だ。扱うワインは全部で約400種類。これほど多種多様な南アワインを実店舗、インターネット両方で販売する小売店は、日本ではおそらくここだけだろう。
南アは、ワインの世界では「ニューワールド」(新興国)に属し、ワイン造りの歴史は17世紀にまで遡る。大航海時代にインド航路の中継地として栄えた南アは、当時から入植したヨーロッパ人によるワイン造りが盛んだった。
しかし、20世紀後半に訪れた世界的ワインブームに南アは大きく乗り遅れる。アパルトヘイト(人種隔離政策)により国際社会から締め出されていたためだ。1994年にアパルトヘイトを廃止し国際社会に復帰すると、その質の高さと値段の安さが注目を浴び、輸出が急増。世界7位のワイン生産国にのし上がった。