答えと解説

正解(体内時計の説明として間違っているもの)は、(3)体内時計の周期が短めの人が、いわゆる宵っ張りな「夜型」になりやすい です。正しくは、体内時計の周期が長めの人のほうが「夜型」になりやすいことが分かっています。

2017年に「体内時計のメカニズム」の研究者たちがノーベル医学・生理学賞を受賞したことで、この分野の研究が大きな注目を集めました。ヒトをはじめ多くの生物は、体の中で1日24時間より少し長い周期のリズム(サーカディアンリズム)を生み出しています。これが、体内時計です。

早稲田大学理工学術院の柴田重信教授は、「体内時計が生み出す規則正しいリズムは、体温の変化やホルモンの分泌などに影響を与え、運動や知的活動などのパフォーマンスを左右します。体のリズムに合わせて必要な栄養を適切なタイミングでとると、肥満を予防したり、体の不調を整えたり、丈夫な骨や筋肉を作ることもできます」と解説します。

柴田教授は、体内時計の研究から生まれた新しい分野、「時間栄養学」の第一人者。「同じ人が同じものを食べても、1日の中でいつ食べたかによって太りやすくなったりやせやすくなったりします。食べるタイミングは、血糖値や血圧の変動にも関わってくるのです」(柴田教授)

そして、朝、太陽の光を浴びたり、食事をとることによって、体内時計を調整することも可能であることが分かってきました。毎朝、朝食をとることが健康に良いと言われているのは、朝食に体内時計をリセットする効果もあるからなのです。

体内時計の研究が進んだのは1960年代に入ってから。そして1972年にはヒトなど哺乳類の体内時計のコントロールセンターが脳の「視交叉上核(しこうさじょうかく)」という場所にあり、目から入った太陽の光によってリズムを調節していることが分かりました。

その後、体内時計は肝臓、肺、腎臓、筋肉など体のさまざまな臓器にもあることが解明され、ヒトでは体内時計を制御している遺伝子(時計遺伝子)が20程度あり、これらの遺伝子の働きを調べることで体内時計のリズムも調べられるようになりました。

体内時計は脳のほかさまざまな臓器にもある

脳内には、視交叉上核にある「主時計」のほかに、大脳皮質や海馬などにも体内時計があり、「脳時計」と呼ばれている。また、肝臓、肺、腎臓、筋肉などさまざまな臓器には「末梢時計」がある。

「時計遺伝子の情報(塩基配列)が1つだけ異なるSNP(一塩基多型)が、『朝型』と『夜型』を決めているのではないかと考えられています」(柴田教授)

最新の研究では、標準的な朝型の人の体内時計は1日の長さが24時間15分ほどになっている一方で、体内時計の1日が24時間40分ほどの人だと、体のリズムが遅れがちになり、いわゆる宵っ張りな「夜型」になりやすくなることが分かっています。

時計遺伝子により「朝型」と「夜型」が決まる

朝型と夜型で、体内時計の差は1日にたった25分ほどしかないのか、と思うかもしれません。しかし、その差は意外と大きな影響をもたらします。

「体内時計が1日に24時間40分ほどになる夜型の人は、それだけ体内時計をリセットするハードルが高くなります。朝、体内時計をうまくリセットできないと、つい寝坊してしまう。そんな日が続くと、朝起きる時間がどんどん遅くなり、夜眠りにつく時間も遅くなっていき、活動の中心が夜の時間になっていく、ということが起こるのです」(柴田教授)

(図版作成=増田真一)

この記事は、「『いつ食べるか』でこんなに変わる! 肥満・老化を防ぐ時間栄養学」(荒川直樹=科学ライター)を基に作成しました。

[日経Gooday2022年11月14日付記事を再構成]

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