日経Gooday

答えと解説

正解は、(2)不飽和脂肪酸です。

リンゴの切り口が茶色く変色したり、くぎがサビたりするように、私たちの体の中でも日々、細胞の劣化が進んでいます。その犯人は「活性酸素」。活性酸素が増加し、体内の抗酸化力がそれに追いつかなくなった状態が「酸化ストレス」であり、酸化ストレスは血管などの組織を弱らせるだけでなく、がんや生活習慣病など、さまざまな病気のリスクを上げると考えられています。酸素消費量の多い脳では、酸化ストレスから炎症が起きてアミロイドβというたんぱく質が蓄積し、アルツハイマー病が進む可能性が最新研究から明らかになってきています。

では、酸化ストレスを抑え、認知症を防ぐためにできることは何でしょうか。認知症などの脳神経疾患について研究する神経内科医で、国立精神・神経医療研究センター病院長を務める阿部康二さんは、「特別なことをしても、続かなければあまり効果はありません。その意味で、まずは手軽に取り組める『食事』から、認知症対策を始めてはどうでしょうか」と勧めます。

阿部さんが勧める食事法は、「抗酸化力」の高い食材をとることです。本来、私たちの体には活性酸素を排除する「抗酸化力」が備わっていますが、抗酸化力は加齢や病気などが原因で低下していきます。そのため、食事から抗酸化力のある物質を取り入れることで、酸化ストレスに対抗しようというわけです。食事なら1日3回、誰でも必ずとる機会があり、わざわざ重い腰を上げて新しいことを始める必要もないのが良いところです。では、具体的にどんな食品(成分)をとるとよいのでしょう。

抗酸化力が高い油はどんな油だろう(写真はイメージ=123RF)

青魚に豊富に含まれる不飽和脂肪酸「DHA」「EPA」がオススメ

抗酸化作用がある食品(成分)はたくさんありますが、阿部さんが意識して摂取してほしいと真っ先に挙げるのが、油の一種、不飽和脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)です。いずれも青魚に豊富に含まれる成分で、オメガ3脂肪酸の一種といえば分かる方も多いでしょう。

DHAは抗酸化作用を持つことで知られ、脳の酸化ストレスを防ぐ可能性があるという報告もあります[注1]。「脳には記憶を司る『海馬』という場所がありますが、アルツハイマー患者の海馬にはDHAが低下しているという報告があり[注2]、DHAを補うことで認知症を抑える効果があるのではないかと考えられています」(阿部さん)。また、EPAには高い抗炎症作用があり、酸化ストレスから起こる炎症を減らし、アミロイドβの蓄積を抑える効果が期待できます。

同様に、DHA・EPAが体内で代謝されたときに産生される物質(レゾルビンE1、ニューロプロテクチンD1など)にも、酸化ストレスを抑える効果があるそうです。「これらの物質にも炎症を鎮める作用があり、脳でアミロイドβの毒性を軽減する効果があるとされています」と阿部さん。DHA・EPAはそれ自体も脳にいいですが、DHA・EPAから代謝された産物もまた脳にいいという、複合的なメリットがあるのです。

[注1]Kondo T, et al. Cell Stem Cell. 2013 Apr 4;12(4):487-496.

[注2]Walter J, et al. J Clin Invest. 2005 Oct;115(10):2774-2783.