カニカマ誕生の裏にクラゲあり

カニカマは、味に癖や臭みのない白身魚(主にスケソウダラなど)のスリミに、カニエキス、塩、でん粉、卵白などを加えて作られたものだが、そもそもなぜ魚のスリミをカニに見立てようとしたのだろうか。

これはカニカマの誕生元を探るしかない。調べたところ、世界で初めてカニカマを世に生み出したのが、北陸・能登半島の最大都市、石川県七尾市で水産練り製品・加工品製造販売などを手がけるスギヨ。創業1640年と300年以上の長い歴史を持つ同社が1972年に開発したのが、世界初のカニカマ「かにあし」である。

1972年に発売された世界初のかに風味かまぼこ(カニカマ)、「かにあし」(画像はスギヨ提供)

同社広報担当の水越優美さんはこう語る。「『かにあし』誕生の背景には、『人工クラゲ』の開発がありました。これは当時、中国からのクラゲの輸入停止を機に、珍味業界からの要望があり始めたものです。ところが、むしろカニのほぐし身の食感に似ていることを発見し、それがスギヨのかに風味かまぼこ開発のきっかけとなりました」。

発売後の「かにあし」は、新規性・安価・手軽さが消費者に受けて爆発的ヒットとなり、インスタントラーメン、レトルトカレーと並ぶ、「戦後の食品3大発明」に数えられている。

なお、現在の日本のカニカマは、健康志向もあいまって、消費量自体は増加しているという。スケソウダラ、卵白のダブルタンパク質含有で筋肉を作るのに役立つ「フィッシュプロテイン」として、日本かまぼこ協会も推奨している。

ご当地カニカマ「ロイヤルカリブ」は乳酸菌も入ってさらに健康志向(写真はスギヨ提供)

特にスギヨのお膝もとである石川では、ご当地カニカマ・乳酸菌入りの「ロイヤルカリブ」が人気で、「カニカマと言えばカリブ」とまでいわれているのだとか。「上京した大学生が、都内にロイヤルカリブがなく驚いて、母親に送ってもらった」というユニークなエピソードもあるほどだ。

ちなみに、日本と海外のカニカマの違いについてうかがったところ、日本のカニカマはより繊細で味がよく、海外のものよりも魚肉スリミ含有率が高い。EU商品などはでん粉質が多いのだという。フランスで食べているカニカマは日本で食べるのと同じだと思っていたが、やはり日本のほうが繊細でおいしいのか……。ますます望郷の念がつのるではないか。

毎月22日(6月除く)はカニカマの日

スギヨは、カニカマで楽しい時間を過ごすきっかけにしてほしいとの思いから、毎月22日(6月を除く) を「カニカマの日」として2017年に日本記念日協会に申請、登録された。

これにちなみ、2021年の1月22日から2月末にかけて、同社は都内・北陸の飲食店とコラボした「カニカマまつり」を展開した。通常11月上旬から年末にかけて訪れるコウバコガニの解禁期間が終わった後も、旬の味を味わってほしいという思いから企画され、参加店舗ではコウバコガニの脚肉をイメージしたスギヨの最高級カニカマ「香り箱」を使ったメニューを味わえる。来年も、時期は未定だが開催を予定している。

今年のカニカマまつりの様子(写真はスギヨ提供)

1972年の誕生から来年2022年で誕生50周年を迎えるカニカマ。今回、海を超えて愛されるにいたったカニカマの誕生秘話や、本物らしさを追求し続ける老舗のプロフェッショナルな姿勢をうかがい知ることができ、パリのスーパーに並ぶSURIMIを見るたびに日本人としてなんだか誇らしい気持ちを覚えるのであった。

パリ在住ライター ユイじょり

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