
米国はプラスチックごみの排出量が世界で最も多い。またプラごみのうち、海岸に不法投棄あるいは不適切な処理で廃棄された量は沿岸国で3位だ。2016年は推計約4200万トンのプラごみが排出された。にもかかわらず、米国が毎年リサイクルしているプラごみの割合は9%未満だ。
だからこそ2022年6月30日にカリフォルニア州のニューサム知事が署名した、広範囲にわたるプラごみ抑制策を定めた法律は、増え続けるプラごみへの取り組みを国家レベルで大転換させ得るものとして歓迎された。
「この法律の意義は非常に大きいものです」と米環境保護団体オーシャン・コンサーバンシーでプラスチック政策のアナリストを務めるアーニャ・ブランドン氏は言う。同団体は今回の法案を作る段階からずっと交渉に参加していた。「これはプラスチックの量を純粋に減らすことを求めた世界初の法律です」
新法はいくつかの大きな目標を同時に達成しようとしている。最大の目標は、2032年までにカリフォルニア州での使い捨てプラスチック包装材を25%減らすことだ。21世紀半ばには世界で生産されるプラスチックの量が現在の3倍の年3200万トンずつ増加すると予測される中、今回の新法はプラスチックの生産量を抑制する米国初の法律だ。
包装そのものを小さくしたり、詰め替え可能な容器に切り替えたり、リサイクル可能な紙やアルミニウムといった別の素材を使ったりすることで削減は可能になる。オーシャン・コンサーバンシーは、こうした取り組みによって使い捨てプラスチックを今後10年間で2300万トン近く減らせると予測する。カリフォルニア州資源循環回収局(CalRecycle)によると、同州は毎年450万トンのプラごみを排出している。
新法は2028年までにプラスチック包装材の30%、2032年までに65%をリサイクルすることも義務付けている。さらに業界に対し、今後10年で50億ドル(約6800億円)の基金を立ち上げ、プラスチック汚染の影響を受けている低所得地域への助成を求めている。
そして最後に、新法はリサイクルのコストの負担者を自治体や納税者から生産者へ移している。これは拡大生産者責任(EPR)と呼ばれる考え方だ。欧州連合(EU)ではEPRが1990年代から導入され、西ヨーロッパ諸国では40%前後という高いリサイクル率を達成している。
カナダは2021年にEPR制度を導入した。インドなどEPR法を立案中の国も多い。米国議会でも提出されたものの、可決には至っていない。州レベルでEPR制度を導入したのは、オレゴン州、メーン州、コロラド州で、カリフォルニア州は4番目だ。内容はそれぞれ微妙に異なっている。
「米国で堰(せき)を切ったように制度が導入されるまで時間がかかりました」と言うのは、米国バーモント州の環境コンサルティング会社DMSエンバイロンメンタル・サービシズのパートナーで廃棄物専門家のテッド・シーグラー氏だ。世界中の国々で廃棄物管理システムを開発してきたシーグラー氏は、ごみとなった商品の処分費用を生産者に負担させる制度を長年支持してきた。「米国でEPR法が機能するかどうかが判明するまでには、まだ数年かかるでしょう」