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人を刺さないハチが作る蜂蜜 薬効に注目が高まる

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ナショナルジオグラフィック日本版

ハリナシミツバチと呼ばれるハチのグループがいる(ハリナシバチとも呼ばれる)。ミツバチ科に属するグループで、主に熱帯地方に約600種が生息、色も大きさもさまざまだ。何より驚くべきはこのハチが作る蜂蜜で、食品として、あるいは薬品として人気が高まっている。

約175種のハリナシミツバチが生息するペルーのアマゾン川流域では、最近、現地の人々がそのうち数種の飼育に乗り出した。過去には野生のハリナシミツバチを捕獲していたが、この方法ではハチの巣と集団を破壊してしまう。そこで、数年前からセザール・デルガド氏など、ペルー・アマゾン研究所(IIAP)の研究者たちが、ハリナシミツバチの持続可能な飼育方法を地元の人々に指導するようになった。

ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーで生化学者のローザ・バスケス・エスピノーザ氏も、デルガド氏らと協力して、ハリナシミツバチや、このハチが授粉する植物、そして薬効のある蜂蜜の生化学的成分に対する理解を深めようと取り組んでいる。

同時に彼女は、ハリナシミツバチの養蜂を支援したいとも考えている。苦境にある地域に、薬効のある蜂蜜とそれによる収入、さらには作物の授粉ももたらしてくれるハリナシミツバチは「アマゾン流域を再び活性化させてくれます」とエスピノーザ氏は語る。

「奇跡の液体」

蜂蜜は、古代から薬として広く利用されてきた。複数の記録から、蜂蜜が、鎮静薬や酒、精神活性薬として、時には毒物として使用されたことが明らかになっている。今日でも、ミツバチやハリナシミツバチの蜂蜜の抗菌効果、抗炎症効果、外傷治癒効果などが、複数の研究で示されている。

ハリナシミツバチの蜂蜜は微生物や菌の成長を妨げる化学物質を含んでいるが、これは、熱帯地方で蜂蜜の腐敗を防ぐように適応した結果とみられる。アマゾンに育つ植物は多様で、ハリナシミツバチが蜂蜜と蜜ろうに混ぜる植物由来の化学物質も驚くほど多様だ。そう考えれば、蜂蜜に薬用効果があるのも理解できる。ハリナシミツバチの蜂蜜を「奇跡の液体」と呼ぶ人もいるほどだ。

以前から、熱帯地方の人々は、ハリナシミツバチの巣から蜂蜜と蜜ろうを集め、風邪や皮膚疾患、胃腸障害、さらには糖尿病やがんの治療に利用してきた。こうした薬効の一部を裏づける研究成果が少しずつ発表されているが、その多くはまだ予備段階にとどまっている。パナマにあるスミソニアン熱帯研究所のハリナシミツバチ専門家、デビッド・ルービック氏は、蜂蜜の薬用効果については、さらなる調査が早急に必要だと話している。

「私たちは、食用にも薬用にも蜂蜜を利用しています」と、養蜂家のエリベルト・ベラ・コルドバ氏は言う。ペルーのサンフランシスコ村に住むコルドバ氏は、クカマ・クカミリア先住民コミュニティーの一員だ。「食用としては、コーヒーに入れたり、パンに塗ったりします。薬としては、気管支炎、肺炎、やけど、切り傷、風邪、関節炎の治療に使います」

森の魔法使いたち

南北米大陸の熱帯地方で暮らす先住民は、数千年前から、数十種ものハリナシミツバチの蜂蜜を採集してきた。社会性昆虫であるハリナシミツバチは、1匹の女王バチと多くの働きバチからなるコロニーを形成する。その名前からもわかるように、ハリナシミツバチは防御に使えるような針を持たない。そのためセイヨウミツバチなどと比べて飼育時の危険は少ないが、大あごで敵にかみついて痛手を負わせることはある。

世界の熱帯、亜熱帯にはさまざまなハリナシミツバチが生息し、その養蜂業もさまざまだ。ユカタン半島のマヤ文明の人々が洗練させたハリナシミツバチの養蜂技術は、現代にも受け継がれている。マヤ人以外の多くの先住民も、伝統的に野生の巣から蜂蜜を採集してきた。

ブラジル、セアラ連邦大学の研究者ブレノ・フレイタス氏によると、ブラジルではハリナシミツバチの養蜂が広く普及し、近代化が進み、人気も高まっている一方で、ペルーではまだその発展と拡大は始まったばかりだという。

現在、ペルーでは、アマゾン川流域の半数の州の少なくとも100世帯が、ハリナシミツバチの養蜂に取り組んでおり、その多くは、デルガド氏の指導を受けてきた。ハリナシミツバチは、一般のミツバチのような巣ではなく、ハニーポット(蜜つぼ)と呼ばれる球形をした小部屋に蜂蜜をためる。そこで、デルガド氏は、蜂蜜を採集しやすいように、長方形の箱を使った飼育方法を教えている。

ルービック氏によれば、森で蜂蜜(とハチ)を採集すると、重要な送粉者であるハチに被害をもたらす。だが、養蜂業であれば、ハチの群れを分割して新しい巣を作らせ、安定した収入源を確保することができるという。

ハリナシミツバチは、ミツバチよりも授粉する植物の好みがはっきりしている。在来種として長く生息する地域では、在来植物の授粉が得意で、健全な生態系を維持する重要な働きをしている。フレイタス氏は、このハチを飼育する場合も、こうした土地で行うべきだと話している。また、ハリナシミツバチは、農業にも恩恵をもたらす。デルガド氏が共同執筆した2020年の論文によれば、畑の近くで飼育すると、カムカムという在来果樹の収穫量が50%近く増加した。

命と健康の維持に役立つハチ

2021年12月、デルガド氏、エスピノーザ氏、写真家のアナ・エリサ・ソテロ氏の3人は、コルドバ氏の自宅を訪ね、蜂蜜を作る在来種6種を含む40個の巣の養蜂について、詳細に学んだ。

コルドバ氏は、ミツバチよりもハリナシミツバチの養蜂に力を入れる理由を話してくれた。

「在来種のハリナシミツバチは刺さないので、おとなしく扱いやすく、養蜂に向いています。ミツバチよりも蜂蜜の質が高く、もちろん、薬用効果も高いです。ミツバチと違って、在来種のハチは、体から分泌する蜜ろうと樹木から抽出した樹脂で、ハニーポットを作ります。サングレ・デ・グラード(ペルーで『龍の血』」を意味する植物)の樹液のように薬効がある樹脂も使います」。サングレ・デ・グラードの樹液は、傷口に塗って回復を促す薬として使用されている。

エスピノーザ氏は、この訪問でコルドバ氏から複数の蜂蜜のサンプルを入手したが、ペルーを再訪して、さらに多くのサンプルを集めるつもりだ。今後、多様な蜂蜜の化学成分と微生物構成を調査する計画で、「ハチ自体の微生物叢(びせいぶつそう、マイクロバイオーム)の調査にも関心があります」と語る。また、ハチが餌を集めるすべての植物を把握したいと考えている。

「ハリナシミツバチは、自然界の薬効成分を見極め、持ち帰って巣で処理し、微生物との関わりを選び、薬効のある蜂蜜や花粉団子(ビーポーレン)、プロポリス(ハチが作る樹脂状物質)を作ります。600種に及ぶハリナシミツバチの研究は、こうした習性を解明する無限のチャンスをもたらすでしょう」。ベネズエラにあるアンデス大学のハリナシミツバチ研究者、パトリシア・ビット氏は、このように話している。

コルドバ氏や多くの養蜂家は、蜂蜜の一部を家庭で消費し、残りを商品として販売している。通常は、毎年20本の瓶詰め蜂蜜を自家用とし、30本を地元の市場に出す。

これは、森や森で暮らす人々の命と健康の維持にハチが役立っていることを示すほんの一例だと写真家のソテロ氏は言う。ビット氏も「私たちにわかっているのは、ハリナシミツバチがもたらす恩恵のごく一部だけです」と指摘している。

ルービック氏は、このハチの生化学上および薬理上の効果の研究が最重要課題と考えている。「ハリナシミツバチの蜂蜜が持つ薬効の仕組みについては、私たちが知らないことがまだとても多いのです」

(文 DOUGLAS MAIN、写真 ANA ELISA SOTELO、訳 稲永浩子、日経ナショナル ジオグラフィック)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2022年4月13日付]

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