スーツは絶滅危惧? それでも「着続ける」

――ボウタイをするときには「かぶらない」のが流儀なんですか?

「きょう、あの人はボウタイをしてくるだろう。あの人を差し置いて、自分がボウタイをするのはやめよう、と考えます。国際会議とか、外交や安全保障の会議では、日本側の『ボウタイポジション』は伊奈さんが持っていたんですよ」

「普段はこういうごくシンプルなカフリンクスをしています。面白いカフリンクスは遊びのときだけ」

――その人の領分を侵してはいけないと。確かにボウタイはかなりインパクトがありますね。慶応大学では服がお好きでモードに通じた宮田裕章先生(医学部教授)がいらっしゃいます。

「宮田先生と私とは真反対ですよね。同志社大学には村田晃嗣先生(法学部教授)がいらして、いつも目立つ服装をしている学会でナンバーワンのおしゃれ。華やかな色のスーツを着て国会答弁に出ていてもやり過ぎにならないのがすごい」

――かたやファッションで自己主張をする、という若者は少なくなっているのではないでしょうか。学生さんはどうですか。

「バブル景気の時に大学生だった私たちの時代、青山学院大学の女子大生は毛皮で学校に来るのが普通でしたもんね。もう、ファッションの考え方は、今の子たちとは全然違いましたよ。今の学生はどちらかというとジェンダーレスというか、性を隠そうとしているようです。オーバーサイズの服を着て、体の個性を出さない。息子は中2なんですけど、街を歩いていて同じくらいの子供を見ると、全員が息子に見えちゃいます」

いろいろなカフリンクス。手前右のイノシシモチーフが一番好き。チャーチルの顔(手前中央)も

――世代が変わるとさらに仕事の装いは激変しそうです。

「スーツというスタイルはまだ歴史が新しい。消えてもおかしくない、という発想もありますよね。クールビズの影響でビジネスの場でもノータイが当たり前になった。この2~3年でこれだけ変わったのですから、長期的に見てスーツってどうなるのか、と思いますね。でも私はたぶん、ずっとスーツを着続けます」

(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)


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