リーダー自身の「個人のパーパス」が問われる時代に

企業のパーパスが重要視されるようになっているということは、企業に所属する皆さんにとって、そして転職を考えている皆さんにとって、写し鏡のように、それぞれの「個人パーパス」も強く問われるようになっているということにお気づきでしょうか。

特にリーダークラスにとって「あなたは、何を、なぜ、やりたいのか」が明確であるか否かは、影響力を発揮して組織を率いるためのOS(基本ソフト)となっています。

組織を預かるリーダーの皆さんは、どのような企業・組織のリーダーとなっても、社内外での様々な困難やトラブルに見舞われ続ける日々となるわけです。メディアでトップクラスのブランド企業、あるいは働きがいある会社だと取り上げられている企業であっても、社内での労務問題や顧客とのトラブル、業務パートナーとのいざこざなどが皆無という企業はありません。これはあまたの企業を内側から見続け、所属しているキーパーソンのキャリア相談を長く受けてきた我々が知る絶対的事実です。

現場のいざこざ、取引先とのあれやこれやに「勘弁してくれよ」と思う瞬間がつどつど襲ってくるのが、上に立つ者の宿命。それでも経営者やリーダーが踏ん張り続けられるのは、「でも、この事業を絶対に成功させたいから」「このような世界を当社を通じて実現したいから」という、企業のパーパスへの共鳴と、「これを成功させた自分でありたい」「これをライフワークとして実現したい」という個人のパーパスがあるからです。

いわゆる「GRIT(グリット、=やり抜く力)」は、明確な個人のパーパスと所属企業のパーパスへの心からの共鳴からわき出る力なのだと思います。何かの困難に直面したときに、すぐにそこから逃げ出してしまうリーダーには、企業と個人のパーパスが残念ながら不足していたのだと言わざるを得ません。

さて、あなたの個人としてのパーパスはどのようなものでしょうか。今、転職を考えているあなたのパーパスと、転職応募先企業のパーパスは重なり合うでしょうか。ここをしっかり見ることが、本質的な転職成功の鍵となることを、ここまでお読みいただいた皆さんには理解してもらえるでしょう。

ミドルやシニア世代で、特に1社経験で歩んできている人には、ここが明確でない人が多くいます。このようなことを、そもそも考える機会もなかったし、考えたこともないという人が少なくありません。

それに対して、生まれたときからデジタルネーティブ環境で育ち、様々な経済危機や自然災害を目の当たりにしながら、「持続可能な社会とは」という問いの中で生きてきたミレニアル世代、Z世代の企業選択や上司評価の軸は、まさに「パーパスがあるか否かが基準」となっています。パーパスの欠如はリーダーシップ・影響力を損なう根本要因となり、パーパスレスなリーダーは上司としての存在すらも問われかねないのです。

個人が企業の存在意義を問い、同時に自身の存在意義を問い、一人ひとりがパーパスを言語化・意識化する社会となりつつあります。リーダーが企業と個人のパーパスをしっかり問い、その上で働く場を選択し、そこでパーパスドリブンに働くことが皆さんのこれからの活躍に直結するのです。

井上和幸
経営者JP社長兼CEO。早大卒、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、リクルート・エックス(現リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。「社長になる人の条件」(日本実業出版社)、「ずるいマネジメント」(SBクリエイティブ)など著書多数。

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