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塩をかける頻度が多いほど早期死亡リスクが高まる

50万1379人のうち、料理に塩をかける習慣に関する質問に、(1)塩をかけたことがない/めったにかけないと回答したのは27万7931人で、(2)ときどきかけると回答したのは14万618人、(3)たいていかけると回答したのは5万8399人、(4)常にかけると回答したのは2万4431人でした。塩をかける頻度が高い人は、男性に多く、BMI(体格指数)が高く、健康的な生活習慣(適度な飲酒をし、喫煙はせず、定期的に運動する)を持つ人は少ない傾向が見られました。また、糖尿病と心血管疾患の有病率は高く、赤身肉と加工肉の摂取量が多く、野菜と果物の摂取量は少ないこともわかりました。

また、尿標本の分析によって、料理に塩をかける頻度が高い人ほど、尿中のナトリウム濃度が高いこと、したがって、推定される24時間排せつ塩分量も多いことが明らかになりました。

中央値9.0年の追跡で、1万8474人が早期に死亡していました。内訳は、(1)塩をかけたことがない/めったにかけない人が9345人、(2)ときどきかける人が5188人、(3)たいていかける人が2573人、(4)常にかける人が1368人でした。

性別、年齢、人種、喫煙習慣、飲酒習慣、BMI、運動習慣、生活水準、コレステロール値、慢性腎臓病、糖尿病、心血管疾患、がんといった要因を考慮して推定した、あらゆる原因による早期死亡のリスクは、料理に塩をかける頻度が高い人ほど高くなっていました。(1)塩をかけたことがない/めったにかけないと回答した人々を参照群とすると、(2)ときどきかけると回答した人のリスクは1.02倍、(3)たいていかけると回答した人では1.07倍、(4)常にかけると回答した人は1.28倍で、塩をかける頻度が高まるにつれてリスクが高まるという傾向は統計学的に有意でした。

念のため、病気またはその他の理由によって5年以内に食習慣を変えていた人を除外して分析しても、結果はほぼ同様でした。

死因別の早期死亡との関係も検討してみました。心血管疾患とがんによる早期死亡のリスクは、食卓で塩をかける頻度が高いほど上昇する傾向を示しましたが、認知症による死亡と呼吸器疾患による死亡との間には、有意な関係は見られませんでした。

果物と野菜を多く食べる人は塩分の影響が軽減される

続いて著者らは、食事内容に関する調査を受けた人々を対象として、特定の食品の摂取が、塩をかける頻度と早期死亡の関係に影響を及ぼすかどうかを検討しました。その結果、果物と野菜の摂取量が多い人では、食卓で料理に塩をふる頻度と早期死亡の関係は弱くなることが明らかになりました。野菜の摂取量と果物の摂取量を分けて分析しても、結果は同様でした。野菜と果物はカリウムを豊富に含んでいます。カリウムは、ナトリウムの尿への排せつを促すことで、血圧上昇を抑えることが知られているため、塩分の過剰摂取の悪影響を軽減すると考えられます。

最後に、食卓で料理に塩をかける習慣が死亡リスクに及ぼす影響に基づいて、余命への影響を推定しました。塩をかけたことがない/めったにかけない集団と比較すると、常に塩をかける集団の人の50歳時点の余命は、女性で1.50年(95%信頼区間0.72-2.30)、男性では2.28年(1.66-2.90)短く、60歳時点で推定すると、それぞれ1.37年(0.66-2.09)と2.04年(1.48-2.59)短いことが示唆されました。

今回得られた結果は、料理に塩をかける頻度が高い人、すなわち塩味の濃い料理を好む人は、早期死亡のリスクが高く、余命が短い可能性を示唆しました。この結果を確認するためにさらに研究を行う必要がある、と著者らは述べています。

[日経Gooday2022年10月5日付記事を再構成]

大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

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