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稲盛和夫、永守重信の両氏は強烈な個性とリーダーシップで会社を引っ張る

稲盛和夫、永守重信の両氏は強烈な個性とリーダーシップで会社を引っ張る

京セラの稲盛和夫名誉会長と日本電産の永守重信会長。いずれも京都で創業し、世界有数の部品メーカーを一代で育て上げたカリスマ経営者として知られる。本書『稲盛と永守』はこの両氏にスポットを当て、人間像や経営哲学を比較したユニークな経営者論だ。「失われた30年」と呼ばれる日本経済の停滞期でも成長の階段を駆け上がってきた両社の強みの源泉に迫る。欧米流の経営手法や戦略論に追随する日本企業の経営者が多い風潮に対し著者の見方は厳しい。本書では、稲盛、永守両氏の経営哲学を通して「志」の重要性や人を基軸とした経営といった日本独自の経営思想が流れていることを指摘し、日本企業の復権のヒントを提示している。不況でも成長を続ける企業とはどんな企業か。あるべきトップのリーダーシップとは。日本の将来を担う若手リーダーにもぜひ手にとってほしい一冊だ。

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著者の名和高司氏

著者の名和高司氏

著者の名和高司氏は、一橋大学ビジネススクール国際企業戦略専攻客員教授。東京大学法学部を卒業し、 米ハーバード・ビジネス・スクールで修士。三菱商事に入社し、ニューヨーク勤務などを経て、マッキンゼー・アンド・カンパニーのディレクターとして約20年間コンサルティングに従事しました。2010年から現職。21年4月からは永守氏が私財を投じて運営する京都先端科学大学の客員教授も務めるほか、ファーストリテイリングや味の素、NECキャピタルソリューション、SOMPOホールディングスの社外取締役も兼任しています。近著に『経営改革大全』(日本経済新聞出版)、『パーパス経営』(東洋経済新報社)があります。

「日本流」経営の強み取り戻す

2021年3月期の連結売上高は京セラが1兆5268億円、日本電産が1兆6180億円。ともに京都のベンチャー企業として出発し、世界有数の部品メーカーとして飛躍する一方、稲盛氏は経営破綻した日本航空(JAL)の再建に成功、永守氏も私財を投じて大学の運営に乗り出し教育者としての顔をもつなど、本業以外の活動にも積極的です。

本書は大別すると、稲盛、永守両氏の経営者としての人間像と、それぞれの経営哲学の2部で構成、全10章からなります。第Ⅰ部「二人のリーダー」では経営者として強烈な個性をもつ2人の共通点を人生哲学や経営観だけでなく、幼少期から青年への成長過程にまで踏み込んで独特の人生観がいかにして形成されたのか、その環境から浮き彫りにします。第Ⅱ部「『盛守』経営の解明」は、2人に共通する経営モデルを名前の1字をとって著者は「盛守経営」と命名。京セラの「アメーバ経営」や、日本電産のM&A(合併・買収)戦略など、両社の経営モデルについて分析を試みています。同時に、稲盛、永守両氏の著作を中心に雑誌やインターネットでの語録、発言録などを豊富に取り上げ、個性が際立った2人の経営者像を浮かび上がらせています。

「稲盛と永守には、多くの共通点がある。その1つが、それぞれ、確固たる哲学を貫き通している点である。しかもそれは経営論を超え、人生論にまで根をおろしている。(中略)二人のすごさは、その独自の哲学を、社員のみならず、社会に対して広く発信している点である。人々の心をわしづかみにする伝播力は、哲学を超えて、宗教とも呼ぶべきパワーを放っている」(18ページ)と著者は述べています。「一番以外はビリ」の発言や「超ハードワーク」の働き方で知られる永守氏に対し、国内外で経営の手本のように信奉する経営者を多く抱える稲盛氏と、経営者像は対照的にも思えます。しかし、ともに高い志を掲げ長期ビジョンをもちながら、数字に基づく緻密な手法を駆使する点は両者の共通項です。著者はこれを「盛守経営」と呼んで日本流の優れた経営モデルだと位置づけています。こうした位置づけには欧米流の経営モデルに傾きがちな昨今の日本企業の経営手法に対する著者の強い反発が感じられます。

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