即完売を記録した人気モデル ワーク×ドレスが融合

大阪市北区にある「VELISTA(ヴェリスタ)」ディレクターの鵜飼英隆氏にも話を聞いた。近年人気が定着したビッグシルエットのトップスには、同じくリラックスしたシルエットのパンツを合わせるのがおすすめだと話す。選んでくれたのは、こだわり抜いたシルエットで人気を集める国内ブランド「MAATEE&SONS(マーティーアンドサンズ)」の一本だ。

デザイナーの松村大基氏により2019年にスタート。ワークパンツをベースにしたデニムは、巧みな立体的パターンとセンタークリースがドレッシーな印象だ。緯糸に茶綿を使用しており、深みのあるヴィンテージのような風合い。MAATEE&SONS / WORK TROUSER 3万6300円

「リーバイスの501に代表されるデニムジーンズはもちろん定番なのですが、当店ではよりキレイな印象に見えるワイドストレートのデニムパンツの需要が高まっていますね。カジュアルながらドレスの雰囲気もあるマーティーアンドサンズの一本は、まさにそんなニーズにピッタリです」

古いワークパンツをベースにしているが、トラウザーズ(フォーマル向けのかっちりしたズボン)に見られる立体的なパターンワークを採用した一本だ。具体的にはどんな特徴があるシルエットなのだろうか。

「ヒップ位置が高く、包み込むような奥行きがありながら、正面から見ると横に張り出すことなくストンと生地が落ちる形が絶妙ですね。腰回りが非常にスッキリしているので、全体のシルエットもキレイに見えます」

センタークリースも相まって、上品な印象
なだらかなヒップラインで、はき心地は快適だ

昨シーズンは、すぐに完売してしまうほど人気があったモデルだという。店頭では同素材のジャケットをセットアップで購入する客も多いというが、おすすめのコーディネートはあるのだろうか。

「ジャケットやシャツなど、かっちりしたテイストのアイテムとの相性は抜群です。足元は幅広で甲高な革靴よりも、あえてポインテッドトゥのようなドレッシーな革靴を合わせるほうが、しゃれていると思いますよ」

ゆったりしたシルエットのバンドカラーシャツを合わせた鵜飼氏。裾でワンクッションする丈ではくと大人のリラックス感が際立つ

ディテールが光る5ポケットデニム 体形を問わない一本

「自分も若い頃は5ポケット型のジーンズを愛用していましたが、最近はあまりはいていません。スタイルのいい欧米人と違い、中肉中背の自分の体形でジーンズをはきこなすのは少し難しい部分があるのは事実ですね」

そう話すのは、東京・渋谷にある「SUN HOUSE(サンハウス)」神南店のマネージャー、遠川保則氏だ。「Engineered Garments (エンジニアドガーメンツ)」の一本を紹介してくれた。形としてはオーセンティックな5ポケット型だが、今回薦めてくれた理由はなぜなのだろうか。

1999年にスタートしたエンジニアドガーメンツ。アメリカントラッドをベースにワークやミリタリーをミックスしたスタイルを得意とするブランドだ。オーセンティックな5ポケットジーンズながら、股上が深くゆったりしたテーパードシルエットが特徴。コーンミルズ製のデニムはライトな10オンスで、シーズンを選ばない。Engineered Garments / Wide Peg Jean - Indigo 10oz Cone Denim 3万5200円

「見た目は教科書通りのジーンズのようですが、はくと全く違います。たとえば股上はワークパンツのように深く、シルエットはファティーグパンツのようなワイドストレートなので、はき心地はゆったりです。また、ステッチが同色なので、スラックスやチノパンと同じようなムードで使えます。キレイ目なジャケットとの相性もいいですよ」

普通はあまり注意を払わない裏地にも工夫が凝らされているという。

「緯糸(よこいと)に杢(もく)糸を採用することで、裏地の色が少し黒っぽく仕上がっています。するとロールアップした時に、表裏の境界が目立たなくなり、脚が短く見えにくくなります。これまで体形に合わずにジーンズを断念されていた方にもおすすめですね」

緯糸に杢糸を用いた生地は1950年以前のヴィンテージデニムに見られる。ちらりと見えるセルビッジ(生地端部の白い部分)もデニム好きにとってはうれしいディテール
ベルトループが付いているが、腰裏に忍ばせたドローコードでもウエストを調整できる

従来のデニムのジーンズとは違う着こなしを楽しめそうな一本だ。この秋おすすめのコーディネートも聞いた。

「アメカジ色が強調されるスエットより、コットンニットやシンプルなカットソーのほうが秋っぽいイメージで着こなせると思います。足元は甲が高くないシューズを合わせると、パンツのシルエットがキレイに見えますよ」

ネイビーのトーンオントーンですっきりコーディネート

文:FACY編集部 平野美紀子(https://facy.jp/)


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