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高級珍味ウミヘビに驚くも、堪能 琉球王朝の宮廷料理

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NIKKEI STYLE

政府の全国旅行支援がスタートして1カ月あまり。新型コロナの感染者数増の第8波到来も気になるが、同じ時期に外国人観光客の受け入れ基準も緩和し、人々の往来は少しずつコロナ前の世界を取り戻しつつある。

そんな中、「沖縄県内の離島、しかも『那覇空港から車60分で行ける小島』で、『琉球料理伝承人』の資格を持つ総括料理長が、琉球王朝時代の宮廷料理を再現した希少なメニューを体験しませんか」とお誘いいただいた。目指すは沖縄本島の中部にある恩納村(おんなそん)。美しいサンゴ礁や自然環境が残り、ダイバーにも人気があるエリアだが、目的は「食」一択。1泊2日の食の旅だ。

早朝の便で羽田空港を出発する。飛行機を使った国内での大きな移動はまさにコロナ前以来3年ぶり。久しぶりの感じにワクワクする。約3時間で那覇空港に降り立つと、湿った暖かい風がふわりと体の横を吹き抜けた。「ああ、南国に来たのだ」と再び胸が高鳴る。

今回の宿泊先は、離島の瀬良垣島(せらかきじま)に建つ「ハイアット リージェーンシー 瀬良垣アイランド 沖縄」だ。離島と言っても300メートルほどの短い橋で本島と結ばれており、徒歩でも5分ほどで行ける。

ホテルが手配してくれた送迎バスに乗り込み、那覇空港から一路、北へ。高速道路を経由し、1時間もかからずホテルのある恩納村に到着。しかしその前に、村内で最も古くから酒造りを行っている琉球泡盛の醸造所があり、立ち寄った。1949年創業の「恩納酒造所」である。

代表の5代目・佐渡山誠(さどやま・まこと)さんが迎えてくれた。沖縄の銘酒と言える泡盛だが、「沖縄の強い酒」というぼんやりした知識しかない人がほとんどではないか。筆者もワインエキスパート資格受験の際「琉球泡盛は『日本の焼酎の元祖』で、醸造が始まったのは15世紀半ば」と習った程度だ。

独特な熟成手法で泡盛に芳醇な香りや風味生まれる

佐渡山さんによれば、泡盛の醸造時期やルーツは諸説あるとのこと。「タイから中国を経由した」説と、「朝鮮半島から伝わった」説といろいろだが、いずれにしても「琉球時代にアジアから日本に持ち込まれた酒」だ。原料に「タイ米(細長いインディカ米)」を使うことからもそれがうかがえる。日本のコメ(ジャポニカ米)で造ると、泡盛独特のコクや風味が出ないそうだ。

泡盛は、タイ米を蒸して沖縄県産の黒麹(こうじ)菌を混ぜ込み、水と酵母菌も加えて2~3週間発酵させたものを蒸留(専用の機械で加熱し、アルコール分を抽出)して造る。それをタンクで熟成させてから水で割って所定のアルコール濃度(20~45度、商品による)に調整し、瓶詰めして完成だ。3年以上熟成した泡盛を「古酒(くーすー)」と呼ぶ。

黒麹菌を使うため、発酵中の液体は炭のように真っ黒で驚く(泡盛以外の焼酎には「白麹菌」が使われる)。黒麹菌は雑菌に強く、適切な温度管理は必要だが、暖かい沖縄でも1年中造ることができる。

アルコール度数25度の古酒「萬座(まんざ)」を試飲した。南国のフルーツのようなふわっと軽い甘味の中にコクを感じて美味。暖かい気候もあり、強い酒であることを忘れてスルスル飲んでしまいそうだ。

しかし沖縄では泡盛はすぐに飲み切らず、「仕次(しつ)ぎ」という独特の方法で数十年かけて熟成させながら、少しずつ楽しむものなのだそうだ。泡盛は甕(かーみ/専用のカメ)で保存し1年に1回、全体の1割に相当する量だけを取り出して飲む。

そして、より熟成年数の若い泡盛をもう1種用意し、同量を取り出し古い甕に注ぎ足して保存する。これが「仕次ぎ」だ。繰り返すと泡盛の味が向上し、バニラやメープルシロップのような芳醇な香りや風味が生まれるとのこと。

「うちの泡盛も出荷したてのものより、仕次ぎでじっくり育てて『その家ならではの泡盛』をお祝い事などで楽しんでいただけたら」(佐渡山さん)

酒造所を後にし、ホテルへ移動。夕方には海とプールを臨む、「水盤前」という館内のテラスのような場所に案内された。沖縄ウイスキーにさんぴん茶の葉を3日間漬け込んで作ったというスペシャルカクテルを楽しみながら、琉球舞踊を鑑賞。古来、琉球王朝を訪れた外国からの賓客をもてなすための芸術だったそうだ。三線(さんしん)の演奏にのせて唄うシンプルだが抑揚のある旋律、踊りは初めて見聞きするのにどこか懐かしい、不思議な気持ちになる。

琉球王朝時代の「うとぃむち(おもてなし)」生きる食文化

そして夕食だ。ホテル内の「スペシャリティレストラン シラカチ 日本料理」へ。シラカチとはホテルがある地名「瀬良垣(せらかき)」の琉球語の呼び方だ。目玉は総括料理長の嘉数順(かかず・じゅん)さんが手がける「琉球和会席」だ。

嘉数さんは那覇市出身、県内の別のホテルでシェフも務めたベテラン料理人で、沖縄県が認証する「琉球料理伝承人」資格を持つ。最新の食材と調理法で、沖縄の伝統食と琉球王朝時代の宮廷料理の一つ、東道盆(とぅんだーぶん)を現代風にアレンジし、再現したのだそうだ。日本料理のコース仕立てで、前菜からお椀(わん)、沖縄産の白身魚「赤仁ミーバイ(ハタハタの仲間)」のお造り、シメの食事(沖縄そばやすっぽん雑炊)、甘味の8品で構成されている。

まずは前菜から。鮮やかな琉球漆器に盛り付けられた豪華な品々に目を奪われる(記事冒頭の画像)。キャビアを添えた沖縄産クルマエビに、「ミヌダル」(豚肩ロース肉に煎った練り黒ゴマを乗せて蒸す宮廷料理の一種)や「クーブマチ」(沖縄産マグロの昆布巻き)、「シシかまぼこ」(魚のすり身と豚の背ロース肉を巻き上げた料理)など、沖縄の伝統高級料理が並ぶ。どれも初めてで珍しい一方、なぜか味わったことがあるような懐かしさも感じる。

その後、中身汁(なかみじる・豚の内臓の吸い物)をアレンジした白子の椀や、沖縄県産の黒毛和牛に舌鼓を打った後、「てびちとイラブの玉地蒸し イラブシンジ餡(あん)がけ」が登場。とろりとゆるく固めた卵の地に生ウニや芽ネギ、テビチ(豚足)が入る。透明なあんがかかった上品な茶わん蒸しだが……スプーンですくうと現れる真っ黒な具材にキャー(笑)、最高級珍味のイラブ(ウミヘビ)だ。

食感は「少し歯応えのあるウナギのかば焼き」、味はあっさりした白身魚のよう。滋養強壮や免疫効果に優れた希少食材として琉球王朝時代から保護されてきた。煮込んで最初に出るだし(イラブシンジ)に特に栄養がある。

「県内にはイラブ汁の専門店もありますが、ごく一部の観光向けです。イラブには毒抜きや下処理に膨大な手間ひまがかかり、沖縄の家庭で今食べている人はいないでしょう。こうした地元の食材や伝統料理は消えつつあります。琉球王朝時代からの『うとぃむち(おもてなし)』の食文化を守り、沖縄を訪れた方に少しでも知っていただけたら、という思いでこのコースを考えました」(嘉数さん)

イラブ効果(?)で英気を養えたのか、その晩はぐっすり眠れた。翌朝はまた「人参しりしり」「フーチャンプルー」「クーブイリチー(昆布炒め)」などの沖縄料理をモーニングで堪能し、帰京した。

あっという間の旅だったが、やはり現地で味わい、得るものの感動は大きい。マスクを着け、移動が怖くなってしまった半面、この3年間に体験できたかもしれない、さまざまな機会をどれだけ失ってきたのか。また貴重な食文化も、多くの人が知ることなしには未来に伝えることができない。早く元通り行き来できる日が来るのを切に願う。

(フードライター 浅野陽子)

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