
化学大手や日用品メーカーが、相次いでプラスチックのリサイクルに向けた実証実験を始めました。2022年春施行の「プラスチック資源循環促進法」は、環境に配慮した商品設計や材料使用を促しています。原料である石油の利用を減らし、脱炭素に役立つ仕組みづくりを目指します。環境分野でライバルや異業種の協働が増えそうです。
海洋での「プラごみ問題」が深刻になるにつれ、日本でも容器などのプラスチック使用量を減らす動きが加速しています。ただリサイクルはあまり進んでいません。用途別に樹脂を混ぜて使うため、製品ごとに仕様が異なるためです。
リサイクルを進めるには、樹脂の仕様をある程度集約し全国で分別回収するとともに、使用済み樹脂の再利用を可能にする技術開発が必要です。国内でこの仕組みが整っているのは、ペットボトルに使われるポリエチレンテレフタレート(PET)だけです。
飲料や日用品の容器、衣料品など向けに再生PETの需要は増大し、価格も上昇しています。ただ、汚れや異物混入の影響で、リサイクルに向く状態の再生PETの確保が課題になっています。そこでPET以外の樹脂を再利用するインフラ作りが始まりました。
旭化成は日本IBMやライオン、容器成型のメビウスパッケージング(東京・品川)、リサイクルを手掛ける富山環境整備(富山市)と共同で、ポリエチレンを再生する技術などの開発を進めています。ポリエチレンは生産量が多く、シャンプーなど日用品の容器に広く使われています。
リサイクルの過程はブロックチェーン(分散型台帳)で管理します。データ改ざんを防ぐ技術を活用し、消費者や企業が樹脂の来歴を確認できるようにするためです。消費者の意見を聞き、分別回収に参加したくなる方法を探ります。
実験に参加していない企業にも進捗を説明し、定期的に意見交換しています。民間企業が幅広く参加できる仕組みを目指します。
英日用品大手のユニリーバの日本法人と花王は、6月から東京都東大和市で、シャンプーなどの使用済みボトルや詰め替えパウチの回収を始めました。メーカーは問いません。集めた容器はリサイクル大手、ヴェオリア・ジャパングループの工場に運び、再利用に向けた技術を検証します。
実験で得た知見はプラスチックの循環利用を目指す団体、CLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)に提供する計画です。
容器などに使うプラスチックの成分は企業秘密で、各社は機能や価格を競ってきましたが、リサイクルでは手を組みました。顧客を引き付ける競争は続けつつ、「(環境対策など)社会的価値があるところは合理的に協力すればよい」(ライオンの岡野知道執行役員)との声も聞かれます。