不眠恐怖はいつのもの 「今」?「過去」?
不眠に悩まれている方の多くは夜眠れないことにつらさを感じますが、日常生活はというと、そこまで支障(気持ちの問題というよりは身体的な問題)が出ていないことが分かっています。これはつまり、不眠が怖い人の多くは「今」ではなく「過去」と闘っていることが多いということです。
例えば,昨晩の寝つきが悪かったり、夜中に何度も目が覚めたりすると、「どうしよう。また不眠が出てきてしまったかもしれない」という不安が頭をよぎります。このときの不眠には、不眠恐怖が形成されたときの苦しかったエピソードがひもづいているため、頭の中で「過去」にタイムスリップしてしまうようです。しかし、見えている世界は「今」なので、あたかもその恐怖が現実に起こるような錯覚に陥ってしまうのかもしれません。
このようなタイムスリップ現象は夜間だけなく、日中にも起こります。起床時に休養感が感じられない感覚や頭が働かない感覚のように、「過去」の体験と似たような感覚に陥るとタイムスリップしてしまい、「やっぱり駄目だ。あまり活動しない方が良さそうだ」と早合点し、結果として日常生活を制限したり、いつもより早く寝床に入ったりすることがあります。まさに、火に油を注いでいるようなものです。
このように、「今」と「過去」を混同してしまうと、なかなか不眠恐怖を払拭することができません。確かに、「今」の眠れない状態は「過去」と似ているかもしれません。しかし、本当に過去と同じかどうかは、その日をいつも通り生活してみなければ分かりません。「過去」のことはちょっと置いておき、「今」起きていることをしっかりと認識していく必要があります。