変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

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日本最大級の不動産ポータルサイト「LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)」を運営するLIFULL(ライフル)。最近でこそ多くの企業がパーパス経営やSDGs(持続可能な開発目標)経営を掲げるようになったが、ライフルは1997年に社長の井上高志氏(53)が前身のネクストを設立した時から、「利他主義」を経営のど真ん中に据えてきた。同社は「働きがいのある会社」や「ベストモチベーションカンパニーアワード」など各種ランキングでも常に上位に選出されている。井上氏はどんなリーダーで、どんな組織づくりをしてきたのか。

本来は「利他」の方が当たり前

「本当に世の中、様変わりしましたね」

今年、創立25周年を迎えたライフルの社長、井上高志氏は感慨深げに言う。

「『利他主義』と聞いてすぐにその意味がわかる人は、25年前はほとんどいませんでした。わかっても、『そんな偽善者のようなことを言っていたら、ビジネスでは勝てない』と鼻で笑われたものです。それが今では『ほんとに大事ですよね』と共感してくれる人が増えました。特に若い人たちはそうですね。そもそも商売というのは、何らかの社会課題を解決することで『助かったよ』とか『便利になった』と喜ばれて、その対価をもらうのが基本です。近江商人の『三方よし』も、渋沢栄一が『論語と算盤(そろばん)』で言っているのもそういうことでしょう。利益ばかりを追求するようになったのは実はここ数十年のことであって、本来は『利他』の方が当たり前。そのことに多くの人が気づき始めたのだと思います」

井上氏が経営の軸に据える「利他主義」の原点は、新卒で入社したリクルートコスモス(現コスモスイニシア)での経験だ。ローン審査が通らなかった若い夫婦の落胆ぶりを見ていたたまれなくなり、懸命に彼らにぴったりだと思える物件を探した。最終的に紹介したのは他社の物件。当然上司には怒られたが、本人たちにはものすごく喜ばれ感謝された。

LIFULL社長 井上高志氏

LIFULL社長 井上高志氏

利他の精神と利益の追求は一見、二律背反にも見えるが、両立は可能なのだということを東証マザーズ(当時)上場(2006年)、東証1部(現在はプライム)への市場変更(10年)、売上収益300億円突破(18年)といった自社の成長で証明してきた。国内外の企業のM&A(合併・買収)も積極的に進め、今ではグループとして世界63カ国で幅広いサービスを提供する。

ブランディング面では17年に社名をそれまでのネクストからLIFULLに変更。住まいに限らず、あらゆるLIFEをFULLにしたいとの思いを込めた。ブランディングの取り組みの1つがオウンドメディア「LIFULL STORIES」だ。「さまざまな社会課題の背景には、私たちを知らず知らずに縛る『しなきゃ』がある」として「しなきゃ、なんてない。」というコンセプトを伝える動画や記事を公開。自社のサービス紹介にとどまらず、自分達が目指す社会の姿を具体的に伝えようとする姿勢は、「Japan Branding Awards2021」の最高賞受賞の一助にもなった。

「LIFULLが取り組む事業はどれも、社員の『こういう社会を作りたい』という思いから生まれます。ですから会社の掲げる利他主義と社員個人の自己実現を一致させるということをすごく大切にしています。採用においても、一番重視するのはビジョンフィット。中途採用の場合、何ができるかというスキルを重視する会社さんは多いと思いますが、当社は中途でもスキルよりもビジョン重視なんです」

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