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オートミール、ブーム続くワケ 洋食からご飯への変身

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NIKKEI STYLE

オートミールのブームが止まらない。2020年ごろから、流通業で「動きがある」とちらほらと話題になりはじめたが、21年には話題の食品として市場ではっきりと意識された。

ユーチューバーが火を付けたオートミールの流行

リクルートが全国の20代・30代の男女2075人を対象に行った「2021年の流行グルメ」では、「2021年に流行ったと思うグルメ」として「オートミール」が481票を集めて2位となった。1位は「マリトッツォ」で1051票とダントツの得票数だが、こちらがテレビなどでも盛んに紹介されたのに対して、「オートミール」はYouTubeやSNS(交流サイト)で情報が行き交っていた。

新型コロナウイルス禍が始まった20年、人気の料理系ユーチューバーたちがオートミールを使ったレシピを紹介し、それをきっかけにみるみるうちに家庭の台所に浸透していったようだ。

しかも、21年には早くも流行から"新展開"の段階に入っていた。レシピ投稿サイトの「クックパッド」は検索キーワードやアクセス数などのデータから例年「食トレンド大賞」を選んでいるが、21年に大賞としたのが「オートミール」ならぬ「オートミールごはん」だった。発表では、「昨年より注目を集めていた『オートミール』への関心がさらに高まり、米や小麦の代替食材として活用されるようになりました」と説明がある。

もともとは洋食系の食材だが、これを「ごはん」として扱うのが「オートミールごはん」。オートミールをそのように調理したり食べたりすることを「米化」とも呼ぶようになっている。

これを受けて、食品メーカー各社も、「米化」「オートミールごはん」に合わせた商品を発売する例が続いている。たとえば、永谷園が今年8月に発売した「旅するSOUP MEAL」シリーズは、オートミールでの使用を想定したもので、いわばオートミール用の"お茶漬け"の素とも言える商品だ。

また、シリアル食品メーカーの日本ケロッグ(東京・千代田)は、もともとオートミールを扱っていたが、今年9月に「粒感しっかり オートミールごはん」とはっきりと「米化」での利用を訴える商品を発売した。これは「米化」をさらにリアルにするように、米飯を思わせる食感に近づけようと複数の種類のオートミールを配合したもの。「ごはんとおかず」のような食事に向く「オートミールごはん」が、水を加えてレンジ加熱するだけで簡単に用意できることを訴求している。

飼料作物から食用へ、さらに健康食品へ

さて、そもそもこのオートミールとは何なのだろうか。

オートはoatで、日本ではオーツ麦とも呼ばれるが、エンバク(漢字では燕麦)のことだ。それを食品として加工したものがmealの付くオートミールとなる。

エンバクが作物として栽培されるようになったのは紀元前ではあるものの、小麦よりもずっと後だったとされている。もともとは麦畑の雑草のようなものだったが、栽培のしやすさが注目されたようだ。というのは、麦を含むイネ科の植物では、せっかく実った実が収穫前に落ちてしまう性質(脱粒性や脱落性などという)がしばしば問題になるところ、エンバクはそうなりづらい。

それで栽培が始まったが、それは食用よりも、主に家畜の餌や敷きわらとして利用するためだった。

食用としなかった理由は味や粒の性質などいろいろと考えられるが、おそらく最も決定的だったのは、エンバクだけではパンを焼くことができないという点だ。実はエンバクはグルテンを含まず、イーストを使って気泡を作ってふっくらと膨らませるパンにすることは難しいのだ。

しかし、食べられないわけではないから、食べるための工夫もされるようになった。そこで、まずひき割りにして吸水しやすくした。これを30分ほど煮ると粥(かゆ)になる。さらに工業的に成功したのが、ロールド・オーツというものに加工することだ。これは蒸気で加熱した後で平らにつぶす、圧ぺんという工程を経たものだが、この方法は麦ご飯に使う押し麦(原料は大麦)でも行われる方法だ。これは煮込む時間が5分程度とだいぶ短縮される。今話題のオートミールのほとんどは、このタイプとなる。

さらに、より薄く圧ぺんし、しかもカットすることで、お湯を注ぐだけで食べられるようにしたインスタントタイプもある。ただ、これの場合は湿気やすいという点が欠点となり得るので、湿度が高くなりがちな日本ではあまり扱われていなかったようだ。

しかし、包材がこの欠点をクリアした。ペプシコジャパン(東京・渋谷)が米国では有名なオートミールブランド「クエーカー」のインスタントタイプを18年に日本で発売したが、この製品は日本向けに湿気を防ぎやすいスタンドアップパウチ(チャックの付いた袋で底にマチがあって自立するもの)を採用したものだった。

そして、最近スーパーマーケットなどにも並ぶ各社のオートミール製品は調理時間の短いもの、つまり湿気やすいはずのものが多いが、それらの多くもやはりスタンドアップパウチを採用している。包材の工夫によって、今まで身近でなかった食品が扱いやすくなり、より多くの食べ物を楽しめることにつながる。オートミールのブームは、そうした例の一つとも言えそうだ。

また、前述のようにグルテンフリーであることで、グルテンを食べることができない人も選択できる食品として欧米で見直され、そこから、話題の食品と見られるようになり、日本の消費者の興味を引きつけたという経緯も考えられる。

さらに、健康面での長所は、何と言っても食物繊維の多さだろう。コメはつくことによって、完全に白い粒を得ることができる(搗精:とうせい、という)。しかし、麦類は実の内側に溝(縦溝部という)があって、そこに消化できない部分が残る。小麦の場合はしかももろいため、食べるには粉にひいてしまったほうが手っ取り早いということになる。

しかし、大麦やエンバクは割れにくさもあるため、押し麦やロールド・オーツに加工して利用される。すると、縦溝部はそのまま食物繊維となって残るということだ。コロナ禍のなか、抵抗力には腸内フローラも影響があり、それには食物繊維が大切と聞く機会が増えた状況で、オートミールはその点でも注目されたと言えるだろう。

子供に嫌われていた原因を克服

ただし、オートミールには昔から有名な短所がある。米国の子供向けの漫画やアニメ(カートゥーン)、そして映画では、オートミールはしばしば子供が嫌う食べ物として扱われてきた。

私事ながら、筆者も実はこれには覚えがある。上京して東京のスーパーマーケットには珍しいものがいろいろあって面白いと思うなか、あるときオートミールを見つけた。おそるおそる買ってきて、ミルクで煮て粥にして食べてみたところ、「おいしいじゃないか。嫌われるのは不思議」と思った。それでひと月ほど毎朝食べていたのだが、ある日突然、受け付けなくなった。

急に飽きがきてしまったのだが、米国の映像作品で、オートミールが出ると子供の口がへの字になる描写というのはこれかと考えた。これはもちろん、あくまでも個人の経験の話ではあるけれども、小麦粉以外の麦製品の広告やWebでの紹介をいろいろ当たってみると、「飽きにくい」を訴求している商品が多いことに気づく。やはり、「飽き」のきやすさは麦製品の弱点の一つに違いない。

「飽きにくい」とするそうした製品の多くが訴えているのは、「独特のにおいを抑えた」といった表現だ。飽きがくる原因の大きな部分はにおいだと考えられていることがわかる。紹介した永谷園「旅するSOUP MEAL」もエスニック風で、香りに特徴がある。

ただ、永谷園は、秘密は香りだけではないと説明している。同社の資料では、「オートミールを食べる際に、弊社『お茶づけ海苔』や『松茸の味お吸いもの』を使用してお粥風に召しあがっているとの声を多くいただいています」とあり、まず消費者の工夫に着目している。

その上で、味の分析の結果、「オートミールは米飯に比べて酸味と渋味が弱く、苦味が突出している」ことがわかったという。そこで同社はこれを改善する調味の工夫で同製品を開発したのだ。

また、その工夫のなかで効果的だったものの一つとして「発酵調味料を加えること」を挙げている。だとすると、「米化」によって、オートミールを漬物や味噌汁と一緒に取ることは、理にかなっているのかもしれない。さらに、料理系ユーチューバーや料理研究家が、お粥だけではない、さまざまなオートミールメニューを提案したことで、オートミールの味の欠点が抑えられ、現在のオートミールの流行が長く続いているようにも考えられる。

とすると、オートミールの息はまだまだ長く続くかもしれない。日本能率協会総合研究所はオートミール市場規模を推計し、今春発表しているが、それによると、国内オートミール市場は、ブームに火がついたと思われる20年度の23億円から、26年度には120億円と5倍となるとしている。

これには、かつて子供時代に食卓から逃げ回っていた米国人もびっくりするに違いない。

(香雪社 斎藤訓之)

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