子供に嫌われていた原因を克服

オートミールは、「米化」しておにぎりにするなど一層身近な食品に(画像提供:アイランド)

ただし、オートミールには昔から有名な短所がある。米国の子供向けの漫画やアニメ(カートゥーン)、そして映画では、オートミールはしばしば子供が嫌う食べ物として扱われてきた。

私事ながら、筆者も実はこれには覚えがある。上京して東京のスーパーマーケットには珍しいものがいろいろあって面白いと思うなか、あるときオートミールを見つけた。おそるおそる買ってきて、ミルクで煮て粥にして食べてみたところ、「おいしいじゃないか。嫌われるのは不思議」と思った。それでひと月ほど毎朝食べていたのだが、ある日突然、受け付けなくなった。

急に飽きがきてしまったのだが、米国の映像作品で、オートミールが出ると子供の口がへの字になる描写というのはこれかと考えた。これはもちろん、あくまでも個人の経験の話ではあるけれども、小麦粉以外の麦製品の広告やWebでの紹介をいろいろ当たってみると、「飽きにくい」を訴求している商品が多いことに気づく。やはり、「飽き」のきやすさは麦製品の弱点の一つに違いない。

今年8月発売の「旅するSOUP MEAL」はオートミール用の“お茶漬け”の素(画像提供:永谷園)

「飽きにくい」とするそうした製品の多くが訴えているのは、「独特のにおいを抑えた」といった表現だ。飽きがくる原因の大きな部分はにおいだと考えられていることがわかる。紹介した永谷園「旅するSOUP MEAL」もエスニック風で、香りに特徴がある。

ただ、永谷園は、秘密は香りだけではないと説明している。同社の資料では、「オートミールを食べる際に、弊社『お茶づけ海苔』や『松茸の味お吸いもの』を使用してお粥風に召しあがっているとの声を多くいただいています」とあり、まず消費者の工夫に着目している。

その上で、味の分析の結果、「オートミールは米飯に比べて酸味と渋味が弱く、苦味が突出している」ことがわかったという。そこで同社はこれを改善する調味の工夫で同製品を開発したのだ。

また、その工夫のなかで効果的だったものの一つとして「発酵調味料を加えること」を挙げている。だとすると、「米化」によって、オートミールを漬物や味噌汁と一緒に取ることは、理にかなっているのかもしれない。さらに、料理系ユーチューバーや料理研究家が、お粥だけではない、さまざまなオートミールメニューを提案したことで、オートミールの味の欠点が抑えられ、現在のオートミールの流行が長く続いているようにも考えられる。

とすると、オートミールの息はまだまだ長く続くかもしれない。日本能率協会総合研究所はオートミール市場規模を推計し、今春発表しているが、それによると、国内オートミール市場は、ブームに火がついたと思われる20年度の23億円から、26年度には120億円と5倍となるとしている。

これには、かつて子供時代に食卓から逃げ回っていた米国人もびっくりするに違いない。

(香雪社 斎藤訓之)

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