「眠れなかったらどうしよう」は悪い「くせ」

②「くせ」とは何か

ここでの「くせ」とは振る舞い方(例えば眠れなくても横になっている)だけではありません。考え方(例えば夜になると「眠れなかったらどうしよう」と考える)や気持ち(例えば午前0時を過ぎると不安になる)、体の反応(例えば寝床に入ると目がさえる)といったことも含めて「くせ」と捉えます。不眠で悩む人たちは睡眠を取るために実に多くの「くせ」を持っていることが分かっています。中でも不眠と関係が深いのは次の5つで、認知行動療法のターゲットになります。

(1)身体の睡眠・覚醒リズムと就床・起床時刻のズレ

自分の身体の睡眠・覚醒リズム(「コロナで睡眠時間延びたのに 不眠の悩みが増える理由」参照)を把握し、就床時刻を設定している人はとても少ないです。例えば寝つきの悪い人の中には身体の就寝時刻(例えば午前0時半)より早く就床している(例えば午後10時)場合があります。

(2)寝る前にストレスがかかる出来事

例えば、夕食後に配偶者とけんかするといったようなことがこれに当たります。これは「睡眠反応性」と呼ばれ、不眠症のなりやすさと関係していると言われています。ささいなことで睡眠が左右されてしまう人は要注意です。

(3)寝床に入って心配ごとを考えてしまう

明日のスケジュールを考えたり、眠れなかった場合の日中の代償について心配したりすると脳が興奮してしまい、寝つきが悪くなります。

(4)眠れない時に時計を見て時間を確認する

何気ない行動ですが、「あと何時間で起きなければ」といった考えの引き金になってしまい、脳が興奮してしまう可能性があります。

(5)寝床に入ると緊張する

ソファでうとうとしていても、寝床に入ると目がさえるという不思議な現象です。これは「寝床で覚醒し続ける」ことが繰り返されたことで生じる身体の反応であると言われています。

ここでは取り上げませんでしたが、飲酒は睡眠を浅くしたり、中途覚醒を引き起こしやすくしたりします。日本人は睡眠薬よりも寝酒に頼る人が多いという報告もあり、注意が必要です。

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睡眠薬の減薬・中止の促進効果も