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本谷有希子 コンテンツ化する世界で生きる人間を描く

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日経エンタテインメント!

「すべてがコンテンツ化していく世の中を、『面白い』と思って見ていた」と、本谷有希子は言う。情報に翻弄され、AIに支配されていく社会に「警鐘は鳴らしたくないし、説教もしたくない。ただただ、更新されていく人間の姿を捉えることができたら」

3年ぶりの新刊となる『あなたにオススメの』におさめた2編の中編で描くのは、子育てや災害すらもコンテンツとして貪欲に消費しようとする人間たちの、テンション高めの日常。『推子(おしこ)のデフォルト』の舞台は、ほとんどの人が右手の甲にICチップを、耳たぶにはイヤホンを埋め込み、網膜にディスプレーをかぶせ、新しい通信機器〈須磨後奔(すまあとふぉん)〉で複数のアプリケーションを同時に視聴する近未来。そこで、子どもたちは早期からネット漬けにされることが推奨されている。推子はその新しい価値観にあっさり順応したが、同世代のママ友は、子どもにデジタル機器を与えず、公園で遊ばせるオフライン志向。あらゆるエンターテインメントを貪ってきた推子にとって、前時代的なこのママ友親子は、生の、ナチュラルな、たまらなく愉快なコンテンツなのだった。

「人と話している時やテレビを見ている時など、ふとした瞬間に、『なんか気持ち悪いセンサー』が働くことがよくあって。『推子~』は、ある知人がつぶやいた『これからは全部コンテンツにしていかないと』という言葉が気になり、もう1編の『マイイベント』は、『シェア』という言い方がセンサーに引っかかって。ここに小説が在るな、という予感がするんですよね。ただどう書いたらいいかがなかなか見えないので、時間はかかるのですが。私はいつも、その『なんか』という3文字を、小説にしているんだと思います」

極度にポジティブな人々を書く

価値観がものすごいスピードで激変し、5年後、何がよしとされているかも読めない今。本谷自身も5歳と0歳の子を持つ母親として、「すごく難しいミッションを突き付けられている」と言う。

「でも、結局人間は、テクノロジーによって変わったり、変えられたりしていく。デジタル機器という道具に、自らを寄せていってしまえる生命体なんです。そんな節操のない生物、ほかにいますか? それなら、そもそも"人間らしさ""私らしさ"にこだわることに意味があるのかな、と。『○○ちゃんママと呼ばないで! 私にも名前がある!』なんて段階を突き抜けて、ママという"性能"を節操なく満喫している、そういう人間を想像して書きました。自分が何に違和感を持っていたかすら分からなくなった母親、子ども、社会――人間をシステマティックに更新させていったらどうなるのか、それを想像していく作業は、スリリングでした」

かつての本谷作品では、語り手は生きづらさを抱え、孤独の中で鬱々悶々(もんもん)ともがいていた。しかし、「人が悩む姿を書くだけでは共感で終わってしまう」と思い、「極度にポジティブな人々」を書くようになった。すると、自分自身も「節操がなくなってきた」。

「自意識が抜けた、というか。芝居の演出をしていた私が、小説を書き、テレビに出て、と、新しいことをするたびに、演劇を捨てたとかイメージを裏切ったとか、言われたこともありました。作家としても、以前の自分なら『文学とは?』なんて考えていたけれど、今はどんどん素直になって、『何を書いてもきっと小説は許容してくれる』というスタンス。生きづらさの先、『この時代で誰よりも生きやすい人々』について、もっと書きたいですね。マイノリティーよりマジョリティーという存在に興味があるんです」

教訓も救いもなく、ポンと投げ出されるようなラストは、人間への愛があればこそ。本谷有希子。中毒性の高いコンテンツである。

もとや・ゆきこ 1979年、石川県生まれ。2000年「劇団、本谷有希子」を旗揚げ。戯曲に『幸せ最高ありがとうマジで!』(第53回岸田國士戯曲賞)など、小説に『嵐のピクニック』(第7回大江健三郎賞)、『自分を好きになる方法』(第27回三島由紀夫賞)、『異類婚姻譚』(第154回芥川龍之介賞)、『静かに、ねぇ、静かに』などがある。
「あなたにオススメの」
 子どもを"等質"になるよう教育する人気保育園に娘を通わせる推子が、陰でGJ(原人)と呼ばれているこぴくんママが育児に悩む姿を楽しむが――(『推子のデフォルト』)。50年に一度という大規模な台風が接近するなか、いそいそと準備を整え、安全なマンションの最上階で悦に入りながら下界を見下ろす渇幸。しかし、1階に住む家族が避難してくることになり――(『マイイベント』)。グロテスクな装丁も楽しい。講談社/1870円

(ライター 剣持亜弥)

[日経エンタテインメント! 2021年9月号の記事を再構成]

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