ビルボードが新ランキング ネットで拡散している曲は

日経エンタテインメント!

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CDの売り上げを集計したもの、というイメージが強い「ヒットチャート」だが、ストリーミングや動画配信などから生まれるヒットが増えた今はその形を変えている。たとえば近年、日本でもヒット曲の指標として認知されるようになったBillboard JAPAN HOT100はCD、ダウンロード、ストリーミングのセールスからパソコンへの取り込みやカラオケの回数まで8項目から計算したランキングだ。そして、さらに新しい動きを捉えようと、新たなヒットチャートも登場している。そこで今回は新たな視点でヒットを捉えようとする新しいランキング3つを紹介する。

ネット上で人気の曲は?

Billboard JAPAN HOT100を公開するBillboard JAPANは、2020年12月2日より新たに5つのヒットチャートを発表するようになった。「Artist100」「Top User Generated Songs」「Heatseekers Songs」「Hot 100 Lyricists(作詞家)」「Hot 100 Composers(作曲家)」という5つのチャートだ。ここでは作詞家と作曲家以外のランキング3つについて解説しよう。

「Top User Generated Songs」(通称「UGCチャート」)は、YouTubeでのUGC(User Generated Contents:利用者が作った動画のこと)の再生回数を表したもので、ネット上でどんな楽曲が拡散しているかを示している。

「20年9月から、アメリカのビルボードは、UGCの影響力が大きくて総合的なヒットが見えにくくなるため、ミュージックビデオの再生回数からUser Generated Contentsを切り離すようになり、それがグローバルなルールとなったので、Billboard JAPANでも年間チャートの区切りとなる21年度(20年12月2日)から外しました。

そこで、あらためてそのUGC部分が市場に与える影響は無視できないと考え、これはこれとして発表することにしました」(Billboard JAPANの高嶋直子氏)

ちなみに、17年末に突如ヒットした荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)」や、20年にこぞって皆が動画でカバーした瑛人「香水」もUGC発のヒットと言える(なお、TikTokの再生回数や影響力については、これとは別に「TikTok HOT SONG Weekly Ranking」として発表されている)。

「Top User Generated Songs」は、YouTubeでのUGC(User Generated Contents:利用者が作った動画のこと)の再生回数を表し、ネット上でどんな楽曲が拡散しているかを示す。登場回数は、2020年12月からのTOP100累計登場回数。「40」はチャート開始以来毎週登場。集計期間:2021年8月23日~8月29日

8月第4週のUGCチャートを見てみると、1位は動画系アーティストのKanariaが歌う「KING」。そのダーク・ファンタジーのような雰囲気が人気を呼び、昨年末以来上位をキープしている。「歌ってみた」動画をアップするユーザーが多いからか、カラオケでは週間トップ20まで上昇している。

2位は、「うっせぇわ」で大ブレイクを果たしたAdoの「踊」。彼女の場合は、メジャーデビューして情報番組で注目アーティストとして紹介されたり、バラエティー番組でカバーされたりすることから、ダウンロードやストリーミングも伸びて、こちらはBillboard JAPAN HOT 100でもトップ10入りを果たしている。3位のDECO*27や、4位のChinozo、5位のOrangestarなど、いわゆる動画系アーティストの強さも見えてくる。

高嶋氏によれば「UGCチャートだけで人気のパターンや、AdoのようにUGCの人気が、JAPAN HOT 100に飛び火するパターン、さらにBTSのようにHOT 100の人気が、UGCチャートにも影響するパターンの3通りがある」という。

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