
ラロトンガ島は、南太平洋のクック諸島を構成する島のひとつで、15の主要な島の中で最も大きい。クック諸島の人々ははるか昔から海に出て、ほかの文化圏より数世紀早い時代に危険を伴う外洋への航海を実現させていた。
ある誇り高き住民は語る。「(北欧の海で活動した)バイキングのことは、本来は『北のポリネシア人』と呼ぶべきでしょう。われわれの祖先はそれほど優れていたのです」
5世紀、20隻の巨大なヴァカ(遠洋航海用カヌー)に乗った島民たちが、新たな土地と生活を求めて、ラロトンガの東側を囲むサンゴ礁の隙間を抜けて外洋へと乗り出した。10隻はそのまま行方知れずとなった。1隻はイースター島に、1隻はソシエテ諸島にたどり着き、1隻はラロトンガに戻ってきた。そして残りの7隻はニュージーランドに到達し、そこでマオリ文化の基礎を築いたと信じられている。

今日、ラロトンガを訪れる人々を迎えてくれるのは、世界有数の透明度を誇る海だ。一方でこの島は、海洋保護区内での海底掘削などの課題も抱えている。
陸上の交通はシンプルで、島の周囲に沿って長さ約32キロメートルの環状道路が走っている(バスの行き先表示は「時計回り」と「反時計回り」のみ)。活気あふれるこの島で出合えるおすすめの体験を紹介しよう。
童話の世界のような海
ラロトンガ島でのダイビングでは、まるでグリム童話の世界から抜け出てきたような景色に出合える。海中に広がる巨大なキノコのような造礁サンゴの森は、不気味さと同時に人をうっとりとさせる魅力にあふれている。
ンガ・ティパはそうした海中の森のひとつであり、ハマサンゴ(ムクムクと膨らんだキノコのようなイシサンゴの一種)の間に迷路のように曲がりくねったルートが続いている。ここは水深15メートルほどの気楽なダイビングスポットで、サンゴの影に身を隠そうとするたくさんの海の生き物たちに出合える。
コーラル・ガーデンもンガ・ティパによく似ているが、こちらには砂地の溝に沿ってサンゴの塊が並んでいる場所があり、溝を根城にしているネムリブカやウツボに出合える。

ラロトンガ周辺には30カ所以上のダイビングスポットが点在し、サンゴ礁に覆われた場所から浅い礁、急な断崖まで、どの場所も個性的だ。サンゴ礁の坂が30メートルほど続いた後、ふいに絶壁となって外洋に出る場所では、珍しいエンゼルフィッシュの仲間を見られるかもしれない。
トゥパパ・サンドリバーやアバナ・パッセージなど、海底が砂とサンゴ礁に覆われているスポットには、ウミガメやサメ、チョウチョウウオやトビエイの集団が姿を見せる。
コンディションが良い(水が透明で温かい)日であれば、ラロトンガの海はダイビング初心者でも安心して潜れる。また、透明度が非常に高く自然光がふんだんに入るため、水中写真の撮影にももってこいだ。大半のダイビングショップでは講習を実施しているので、前もって予約を入れておきたい。