社長直轄で採用部隊を強化

人的資本経営の実現に向けて、特に注力されているのが「採用」。経営者が自身の役割と捉えて行動を起こす動きもみられます。例えば、人事部門から「採用」を切り出して、社長直轄の部隊を編成するケースも増えています。

ある経営者は採用責任者を「営業部長と同程度の価値」と言いました。売り上げに直結する営業部門と同様に、採用力が経営を左右すると捉えているということです。

なお、採用責任者の採用にあたり、「採用経験」を必須としない企業も多数あります。求人ターゲットとして「実績を上げてきた営業経験者」を挙げるケースもみられます。

採用においての、マーケティング→候補者獲得→候補者へのプレゼンテーション→入社後フォローといったプロセスは、実は営業のプロセスに類似しています。そのため、営業としての経験を積んできて、かつ人に興味がある人は「採用」ミッションを担うところから人事領域へのキャリアチェンジを図るチャンスがあります。

職種に関わらず、「リクルーター」を務めた経験がある人、人材ビジネスに従事した人なども、採用担当ポジションに転職できる可能性があります。

「採用×広報」に強い人も、ニーズが高まっています。人材採用においては、顧客層に向けたコーポレートブランディングやプロダクトブランディングとは別に、求職者向け「採用ブランディング」が必要です。「応募したい」と思わせるような広報戦略を展開し、結果として自社のファンを増やせる人材が求められています。つまり、広報の経験を持つ人は採用領域での広報経験を積むことによって、キャリアの可能性を広げることができると言えるでしょう。

世界の潮流を踏まえても、今後、人的資本の開示義務付けが進んでいくと予測できます。その点では「投資家向け広報(IR)」の専門家も、財務面だけでなく、人的資本の知識・経験を積んでいくことによって、キャリアの幅が広がると思います。

人材育成・文化醸成を担う人材のニーズも

人事部門の機能の一つである「教育」においても、傾向の変化が見られます。従来のような集合研修だけでなく、日常の業務やコミュニケーションから学びを深める。それを習慣化させ、自社の文化として浸透させたいと考える企業が増えています。

人の成長に影響する学びの法則で、「7・2・1の法則」があります。7割が「仕事上の経験」、2割が「上司や先輩からの助言やフィードバック」、残りの1割が「研修などのトレーニング」から学ぶといわれています。

情報やナレッジが個々の中に滞留することなく、常に共有される組織文化を醸成していきたい。そのため、単に研修のプランニングをするだけでなく、学びのプラットフォームを組織内に導入し、共有の仕組みをつくれる人材が求められています。

ピーター・ドラッカーの「企業文化は戦略に勝る」の言葉にもあるように、人的資本経営の実現には「文化の醸成」が欠かせません。人に興味を持ち、「企業文化をつくっていく役割を担いたい」と考える人たちにとって、転職によってそれを実現するチャンスが訪れているといえるでしょう。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

森本千賀子
 morich代表取締役兼All Rounder Agent。リクルートグループで25年近くにわたりエグゼクティブ層中心の転職エージェントとして活躍。2012年、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。最新刊「マンガでわかる 成功する転職」(池田書店)、「トップコンサルタントが教える 無敵の転職」(新星出版社)ほか、著書多数。

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