オンラインで取るなら「あり」なビジネスパーソン
ここまでざっとランキングを見てきたが、MBAをめぐる状況の変化についても触れておこう。まず言えるのは、ビジネスパーソンにとってMBAが近年ぐっと身近になったことだ。2000年代初頭までは企業派遣で海外のビジネススクールに留学するケースがほとんどだったが、それ以降は国内で働きながら自腹でMBAを取得する人が増加。授業動画を視聴するだけでなく、オンライン上でリアルタイムでディスカッションできるプログラムが増えた。ここ5年ほどは、修士号取得を目的とせず興味のある科目を単科で履修できるコースを設けたり、アカデミックな研究よりも実践志向のプログラムを強化したりするビジネススクールが相次いでいる。
「日本のいまある会社、場合によっては受講生が働いている会社がフィールドワークやケーススタディで取り上げられたりすることも多い。加えて、コロナ禍でリモートワークが広がり在宅時間が増えたことで、オンラインだったらMBAを取るのもありだなと考えるビジネスパーソンが増えている印象です」(同)
転職事情についても、変化の兆しがある。従来は、「MBAホルダーを是非」と望む企業はまれだったが、ここ2、3年で転職希望者に企業が直接アプローチできる「ダイレクトリクルーティング」が広まったことで、「MBAホルダーというフラグが、企業側の目に止まりやすくなった」(同)。
実際、今年3月に早稲田大学のビジネススクールでMBAを取得した男性(37)は、「2年前に転職活動をした時よりも、格段にスカウトの数が増えて驚いた」と話す。企業との面接でも必ず「なぜMBAを取ろうと思い、何を得たのか」を詳しく聞かれたという。
MBA取得者が増える中で、企業側がそのネットワークに目を向け始めているのも新たな兆候だ。「人いい人が採れれば、周辺にも優秀なMBA人材がいるはず。いい意味で芋づる式の採用ができるのではという期待が、企業側にはある」(同)。
もちろん、MBAを取得すれば誰でも昇進や転職ができて年収が上がるわけではない。今回、MBAホルダーの複数のビジネスパーソンに話を聞いたが、全員が口をそろえて言ったのは、年収うんぬんより「視野や価値観が変わった」という点だった。
「以前は自分にどんなスキルをつけられるかという自分中心の考えだった、MBAで学んでからはどうやって社会に貢献できるのかを考えるようになった」(製薬企業在職中に国内MBAを取得した35歳男性)
「仕事で新しい業務につく際も、MBAの時と同じく、より深く学ぶことを意識するようになり、周囲からもそうした姿勢を評価してもらえていると思う」(金融機関在職中に海外のMBAを取得した50代女性)
大浦さんは言う。
「かつては人材マーケットであまりポジティブに評価されなかったMBAですが、僕自身、MBAを取りたいかと聞かれれば今はイエスですし、誰かに相談されたらお勧めすると思います」
(ライター 石臥薫子)