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人それぞれの個別性が高い、孤独、正しい動き方がわからない……。社会人として立派な経験があったとしても、初めての転職活動は誰にとっても不安なものです。会社を変えたり、仕事を変えたりする決断は、万が一選択を間違えた時に、簡単に元に戻せるものではありません。転職における後悔を防ぐ7つの鉄則のうち(1)から(4)を紹介した前回記事に引き続き、人生における重要な選択の際に後悔をしないために、実際の転職者の事例をもとに"ありがちな落とし穴"とその対策についての後編をお届します。今回は(5)から(7)です。

(5)苦労して転職したのに、同じ悩みの繰り返しに

いくつかの支店を経た後、メガバンクの法人向け営業の管理職として勤務してきたWさん(42歳)は、2年前、40歳の時に別の金融機関の系列会社として新設されたM&A(合併・買収)仲介会社の営業に転職しました。

メガバンクに勤務していた最後の10年ほどの間、支店の統合やリストラが進み、業績の低迷が顕著になるなど、風向きが変わってきたことを感じるようになったというWさん。30代後半から転職を考えるようになりました。ただ、子供の出産や転勤などが重なり、じっくり転職について検討する時間がないまま30代の終わりが近づいてきた時に、仲の良かった同期が転職したこともあり、真剣に転職活動に取り組むようになりました。

「転職活動を始めたころは、金融業界の将来性に懸念を感じていたので、経営コンサルティング会社やウェブ系のベンチャーなどを中心に受けていました。ところが、書類選考は通過するものの内定をもらえない状態が続きました。活動開始から3ヵ月も経過しないうちに、自分の市場価値が想像していたより高くないということを実感させられました」(Wさん)。

それ以降、利用する転職エージェントや求人サイトの登録を複数に増やして活動していたのですが、結果的に前職と同じ業界である金融会社系列の会社に入社が決まりました。思うように転職活動が進まない時に、キャリアアドバイザーから「年齢的にも異業種に挑戦するよりやはり業界経験が生かせるほうがいいのではないか」と勧められたことがきっかけでした。

それから2年。いまWさんはその時の決断を少し後悔し始めています。

「親会社の業績悪化で、まだ軌道に乗っていないM&A事業の売却が決まりました。私自身もまだ1人前になっているわけでもなく、今後の成り行きが心配です。金融機関の将来に不安を感じて転職したはずなのに、結局、経験にこだわるしかないと考えて同じ金融業界で転職してしまった訳ですが、ぐるっと回って同じ悩みに突き当たってしまいました」。

自分が所属する業界の興亡のトレンドと、異業種に挑戦する難しさの中でどんな選択をしていくべきか。Wさんの事例はその難しさを物語っています。

(6)前職との仕事の進め方のギャップに悩む日々

1部上場の大手人材サービス企業で営業マネジャーとして働くIさん(37 歳)は、外資系コンサルティング会社から転職してきてもうすぐ1年がたとうとしています。転職直後は、これまで培ってきたビジネススキルを駆使して早い段階から業績を上げ、それが評価される好循環ができたことでスムーズに職場になじむことができたのですが、1ヵ月、2ヵ月と時間がたつうちに徐々に違和感を抱くようになりました。

転職で後悔する前に考えておくべきことは?(写真はイメージ)=PIXTA

転職で後悔する前に考えておくべきことは?(写真はイメージ)=PIXTA

仕事は、採用目標人数の確保に苦しむ大企業に対して、ホームページや求人広告、人材紹介などを駆使して、採用充足と採用コストを最適化する採用代行(RPO)サービスの提案と、受注後のプロジェクト運用です。

もともと採用業務の代行をメインにスタートした会社ということもあり、労働集約的な作業が多い性質があるのですが、Iさんが開拓した企業のプロジェクト運用が始まってみると、さすがに「その仕事の進め方は時代遅れではないか」と思うことが目に余るようになってきました。

個人情報を始め機密情報を扱うことが多いのにセキュリティーの概念が弱かったり、クラウドサービスを活用することで効率化が図れることもいまだに手作業でやっていたり、これでは利益率も上がるはずがないと思わざるを得ない状況でした。

事業部全体のKPI(評価指標)管理も体系だったものがなく、各セクション単位でベテランマネジャーが勘と経験で運営しているようなありさまです。

さすがにストレスを感じたので、上司や事業部長にそれとなく改善の方法を伝えてみても、業務ごとの特殊性を理由に、成果が見えないものにパワーをかけたくないという考え方は全く変わりませんでした。

「営業としてクライアントを獲得していくプロセスや個人の営業力が生かせるという観点ではマッチ度は高かったものの、仕事の進め方やカルチャーギャップの大きさを考えると、働き続けるイメージはどうしても持てませんでした。入社意思を決める前にもう少し日々の業務の中身を確認しておくべきでした」(Iさん)。

Iさんはいま、古巣の業界に戻るべく転職活動を進めています。

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