スマホアプリ開発 VCの目に留まる

当時はスマートフォンのアプリ市場が急速に伸びていた。知人のIT(情報技術)起業家から次々とアプリ開発の依頼が舞い込んだ。1件受託すれば、100万円は手に入る。年に3~4件をこなせば、生活に不自由はなかった。3年間引きこもり、アプリ開発のノウハウをブログに書き込んでいるうちに、ベンチャーキャピタリスト(VC)の目に留まった。

子供の頃から、現実のコミュニティーになじめず、「機動戦士ガンダム」などアニメやゲームの世界にはまっていた。家庭環境や境遇は自分で選べない「親ガチャ」のように、自分の意思で自分が生まれ育つ街を選べるわけではない。しかし、加藤さんは「複数の人生があってもいい。自分の意思で自分が求めるコミュニティーで生きてもいいじゃないか。そこが救いの場になることもある」と考え、メタバースのプラットフォーム作りを開始した。

加藤さんが通った京都大学

2015年にクラスターを起業。メタバースはKDDIなど大手企業からも注目され、企業主催イベントで業績が拡大し、5期目には最終利益が1億5000万円を超えた。注目のベンチャー企業に成長した。

米国のメガ企業も突然動いた。21年10月末にフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が社名を「メタ」に変更するとともに、メタバースに今後、年間1兆円強を投資すると表明した。これを機にメタバースが市場関係者の注目の的になった。

日本はアニメ文化が根付いており、加藤さんは「日本発のメタバースが世界を席巻する可能性は高い」という。今後はサービス内でアイテムなどを売買できる独自の経済圏も作る。引きこもりの京大院生から日本発メタバースの起業家に。大阪の下町出身の起業家は未来の「新世界」を築き上げそうだ。

(代慶達也)