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女性が「手ごろな人材」として使われている

本田 問題は、日本の女性が「手ごろな人材」として扱われているという点です。理由は2つあり、1つは、フルタイム労働者がまだ少ないこと。日本の税制には、いわゆるサラリーマンの妻を想定した配偶者控除(配偶者が年収103万円以下なら税制優遇が受けられる制度)がありますね。これによって女性側は「控除を受けたいから、給料はむしろ上がらなくてもいい」という気持ちを抱きやすくなります。企業にとっても、優良な労働力を安く使える便利な仕組みです。

もう1つの理由は、フルタイム労働者であっても、専門職や管理職といった責任あるポジションに就いている女性が少ないこと。このため男女の平均収入に差が出ています。

――日本には高学歴な女性たちが多いにもかかわらず、その能力を十分に生かし切れていない、という批判も聞かれます。

本田 2020年のデータによれば、日本の4年制大学の卒業生における女性比率は46%と、決して低くはありません。しかし、地方公務員・国家公務員の採用者を見ると、女性は30%台に減ってしまいます。民間企業における役職者となると、さらに減り、係長、課長、部長、役員……とポジションが上がるごとに、女性の割合は少なくなっています。

注)内閣府男女共同参画局「内閣府男女共同参画白書令和3年版」を元に日経xwomanが作成

――「多様性確保」のメリットを得るには、女性を単なる労働力ではなく、意思決定にかかわるリーダー層にまで押し上げることが必要ですね。

本田 はい。企業は、経営判断に関与できるようなポジションに、女性をどんどん就けていくことが大切です。将来の人口減少に備えるには、女性、外国人、若手を積極的に採用し、大切に育成して、将来の経営を担える「多様な人材」のプールを、ここ20年くらいで大きくしておくことが必要です。

もちろん、女性にも「どう生きるか」を選択する権限がありますから、全員が専門職や管理職になれというわけではありません。しかし、少なくとも、夫に養ってもらう生き方は過去のものです。未来を生きる小中高生の女の子たちには、今は8割の女性が働いていること、どの仕事も尊いけれど専門職や管理職のほうが収入は高い、という事実を教えてあげた上で、進路を選んでもらうべきだと思います。

(取材・文 久保田智美=日経xwoman編集部)

*1)国連「世界人口推計2019年版」より

*2)OECD Stat: LFS by sex and age - indicators : Labour force participation rate.

本田桂子
コロンビア大学客員教授。米国ペンシルべニア大学ウォートンスクール(経営学大学院)修士課程修了(MBA)。マッキンゼー・アンド・カンパニーのアジア部門で初の女性シニア・パートナーとして勤務。世界銀行グループの多数国間投資保証機関(MIGA)の長官CEOを2019年まで務めた。国連の投資委員会委員のほか、金融庁の政策評価に関する有識者会議の委員、シンガポール政府のAsia Sustainable Infrastructure Advisory Panelメンバーを務める。