変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

新型コロナウイルス禍が続くなか、地域の医師の数が問われている。実は日本の人口10万人あたりの医師数は「西高東低」。人口比で最も多いのは徳島県で、最も少ないのは埼玉県だ。その格差は約2倍。医師の地域偏在は大きな課題になっている。なぜ、医師は東日本に少ないのか、地域の大学や進学校とも関係があるようだ。

「コロナ禍で埼玉県の医師不足は地元の大きな課題でしょうね。県内に国公立大の医学部もありません。医学部志望者が少なくない県立浦和高校の生徒は、受験で全国を飛び回っていましたよ」。埼玉県の公立トップ進学校の浦和高の校長を務めた私立武蔵中学校・高校の杉山剛士校長は話す。

人口10万人あたりの医師数最多は徳島県

厚生労働省の直近のデータによると、都道府県別で人口10万人あたりの医師数(2018年末時点)が最も多いのは徳島県で329.5人、次いで京都府、高知県の順。一方、医師が最も少ないのは埼玉県の169.8人で、茨城県や千葉県が続く。いずれも関東地方だが、東京都だけは300人程度で上位に入る。

全国の医学部の数は82校で、このうち50校は国公立大医学部だ。東京都内には慶応義塾大学など私大の医学部は多いが、全国の人口の約3割が集中する首都圏1都3県には国公立大医学部は4校しかない。なかでも埼玉県はゼロで、「埼玉大学医学部」は存在しない。

日本の人口10万人あたりの医師数は「西高東低」(写真はイメージ=PIXTA)

日本の人口10万人あたりの医師数は「西高東低」(写真はイメージ=PIXTA)

政府はかつて「1県1医大」を推進したが、埼玉県のほか、栃木県と岩手県の東日本3県には国公立大医学部がない。地域医療は基本的に各地の国公立大医学部が支えている。医局の教授が核になり、中核病院などに医師を派遣して地域医療を担う仕組みだ。「埼玉県は人口がどんどん増え、今や730万人を超えた。他県の国公立大医学部は地域枠を設け、地元高校の優秀な生徒を集め、地域の医師として育てている。しかし、埼玉県には肝心の国公立大医学部がない。こんなおかしな話はない」と埼玉県幹部は嘆く。

埼玉県内にも西部の毛呂山町に私立埼玉医科大学がある。ただ、6年間の学費は国公立大医学部(350万円前後)の10倍強と高額だ。同県所沢市にも防衛医科大学校があるが、ここは特殊な学校だ。自衛隊に9年間入隊すれば、学費は免除、さらに給料も支給される。ただ、卒業後に任官を拒否すれば、多額の償還金を課せられる。「入学には覚悟が必要。主な患者は自衛隊員で、地域医療を支える医大ではない」(防衛医大出身の医師)。

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック