オープンイノベーションで農業の未来を共創しようJA全農・野口栄代表理事理事長

PR

PR
全農の野口栄代表理事理事長と語り合う、伊藤彰一さん、永岡里菜さん、熊坂理沙さん(右から)

これからも日本の農家は安定的に生産活動を続け、各地域の活力は保たれるか。日本の農業が今後も国民の「食」に揺るぎなく貢献していけるかは、労働力不足の克服やIT(情報技術)などに裏付けられた革新的な技術によって生産力をどれだけ向上させられるかにかかっています。全国農業協同組合連合会(JA全農)の野口栄代表理事理事長が、農業に関係するスタートアップ企業の経営者や若手の職員と環境や地域活性化の問題も含め、農業の未来を語り合いました。

存在感増す農業

「食農バリューチェーン」を構築

野口 農業の重要性ついては、新型コロナウイルスの感染拡大により、さらに認識が高まったのではないでしょうか。物流が混乱し、主要農業国でも自国を優先した輸出規制などが見られます。もはや日本でも、食料がいつでも手に入るという時代は終わったのではないか。農業生産を振興し、国内に食料を安定的に供給するということは、安全保障上もますます大事なことになってきました。

日本において、農業は各地の伝統文化や、地域の多彩な食文化の土台でもあり、農地は四季折々の美しい景観を維持するうえでも重要な存在といえます。

「農業の活性化は地域の元気につながります」(野口代表理事理事長)

そういう中で全農グループの経営理念は「生産者と消費者を安心で結ぶ懸け橋となる」ということです。生産者の営農と生活を支援し、産地や地域を元気にすることで、安全で新鮮な国産の農畜産物を消費者、国民に安定的にお届けしていく。そして消費者の求める農畜産物を生産者に提案をして、生産から流通・加工・消費までの「食農バリューチェーン」をつくっていくことが期待されています。

「農業」と一言で言いますが、米・麦・大豆の栽培あり、果樹・園芸、それから畜産・酪農もあって、多種多様です。また家族的経営から大規模化された農業もある。そうした多様性を尊重しながら農業を活性化する。それがまた地域を元気にすることにもつながります。

伊藤 地域と農業は、つながりが深い。地域を守るためには、やはり農業も守らなければいけないと、私も一農家の立場から思います。

熊坂 私も実家は農業を営んでいます。地域で暮らしていく人々の環境だとか、景観を守っていくということも農業の魅力だと思います。こうした魅力を今、おそらくSNSなど使って発信する力のある人たちが増えているというのが、すごく頼もしいと感じています。

スマート農業の推進

オープンイノベーションに活路を

野口 日本の農業には今、大きな課題は2つあります。1つは、生産現場は大変、労働力の不足に悩んでいる。まず全農としては、農業の関係人口を増やしていきたい。農業に興味を持つ人を少しでも増やし、時にはその方々に生産現場のお手伝いをしていただけないかと考えています。

2つ目の大きな課題はスマート農業。ICT化などのイノベーションを進めていかなければいけません。生産性向上のためには、革新的な技術の導入が必要です。

例えば、全農には営農管理のICTシステムがあり、栽培管理システムも新規導入しました。営農管理システムは、地理情報と栽培データをデジタル化。匠の技術をデータとして蓄積する栽培管理システムでは衛星データとAIにより生育予測ができます。環境問題が大きく注目されている中で、散布を効率化するドローンなどの技術の活用も重要です。自動収穫ロボットの活躍も期待されます。

ただ、こうしたことは、全農グループだけではなかなか難しい。伊藤さん、永岡さんのようなスタートアップ企業の皆さんと一緒にやっていくことも大事です。こうした皆様とオープンイノベーションを進めていくための拠点の一つが、今ご一緒しているここ、アグベンチャーラボ(※)です。

アグベンチャーラボ(AgVenture Lab)とは、JAグループ全国組織が運営するイノベーションラボ。「食」と「農」と「くらし」に関わる社会課題を解決するスタートアップを支援している。

「日本の農業はファンをつくり、消費を促していくことも重要です」(永岡さん)

永岡 日本が、人口減少という課題をかかえる中で、農業もどのようにして人材をシェアリングするか。そして、しっかり関係人口をつくりながら、農産物の消費を促していくことも重要です。

私たちは「おてつたび」を通じて、地域や事業者さんのファンをつくりたいという想いも持ちながら、サービスを運営しています。「おてつたび」に行った後に、農家さんの作物を購入するなど、何らかの形で関係を続けている方が、全体の6割にのぼります。

伊藤 今、農業というのは大きな変革の時代に入っていると感じています。永岡さんが運営する「おてつたび」さんの取り組みがまさにそうですが、外部の人材を農村に送り込むとか、今までアナログだった業務をデジタルに置き換えて効率化するとか、どんどん変革をしていかないといけません。

「積極的に農業を変えていこうという流れが起きています」(伊藤さん)

今、私の周りでは新規就農もすごく増えています。若くてやる気のある方がどんどん入ってきていて、積極的に農業を変えていこうという流れが起きていると感じています。

環境問題にも積極関与

生産者の環境意識も高まる

野口 全農としては脱炭素、SDGsも含め社会的課題への対応、特に環境問題への積極的な関与が必要と考えています。農業の現場から発生する温室効果ガスの削減には、肥料、農薬も含め、資機材の調達から生産、加工、物流、さらには販売、消費までの一貫した過程全体で、脱炭素化に取り組むことが大事です。

肥料でいえばまずは土壌を診断し、その時々の土地ごとの状態に合った肥料を、どう施肥するか。また、有機肥料として畜産堆肥を活用することも、畜産事業と耕種事業の「耕畜連携」という形で促進すべき課題といえます。

昔の農業は有機肥料を入れて、作物を作っていましたが、効率性を重視し、化学肥料への依存度を高めました。持続可能な食料システム構築に向けて、環境負荷低減の取り組みを強化しなければなりません。私どもは生産者の皆さんが「環境調和型農業」に向かっていくお手伝いや、消費者理解の醸成に努めてまいります。

「省力化や環境問題を意識する農家さんが増えています」(熊坂さん)

永岡 おてつたびに参加した学生と話していると、やはりSDGsのような、自分がしていることは、地球にいいことなのか、地域貢献や社会貢献に関心が高い人が多くなってきたと実感します。

熊坂 環境問題については、私は今、資材関係の部署にいる以上、関わりが大きいです。例えば農作物を育てるときに地温調整や雑草を防ぐなどの目的で「マルチ」というフィルムシートを畑の上に敷いています。これを生分解性に変えて、栽培が終わった後、その中に鋤きこめば、土壌の中で分解される。今、利用率が伸びていて、省力化や環境問題を意識する農家さんが増えていると感じています。

次の50年も挑戦続く

持続可能な農業と食のために

野口 農業には新しい領域がたくさん出てきています。全農は3月30日に創立50周年を迎えます。ここまでの50年は常に時代の変化に対応してチャレンジしてきた歴史でした。次の50年も挑戦を続けてまいります。

また、私どもは4月から、新中期計画の事業年度に入ります。これはまさにこの次の50年への第一歩になるものです。この計画では、農業、農村を取り巻く環境変化や情報社会の進展にともなうDXなどに対応するため、2050年を見据えつつも、まずは2030年の視点に立って、全農グループの目指す姿を描いています。

それは一言で言えば、「持続可能な農業と食の提供のために、なくてはならない全農であり続ける」ということです、JAと一体となって生産者にベストな提案を行い、「食農バリューチェーン」を構築し、地域の食とくらしに貢献してまいります。

座談会出席者 プロフィル(写真右から)
伊藤 彰一さん(いとう・しょういち) Agrihub(アグリハブ)代表取締役CEO。2万人が利用する農業日誌アプリAGRIHUBや JA業務の効率化を実現するAGRIHUBクラウドを開発・運営する。東京都内で自ら1haの農園を運営。前職システムエンジニアの経験を生かし、農業の現場から農業DXを推進している。「JAアクセラレーター(※)第2期(2020年)」に採択。
永岡 里菜さん(ながおか・りな) おてつたび代表取締役CEO。社名は「お手伝い」と「旅」を掛け合わせた。短期的、季節的な人手不足で困っている収穫時の農家や繁忙期の旅館などと、「いろいろな地域に行ってみたい」というような 人材をマッチングし、関係人口創出を目指しているウェブ上のプラットフォームを運営。「JAアクセラレーター第1期(2019年)」に採択。
熊坂 理沙さん(くまさか・りさ) 全国農業協同組合連合会(JA全農)耕種資材部総合課・入会9年目。農家が使う農薬や肥料、トラクターのような農業機械や出荷用段ボールなどを扱う部署に所属。経営企画部で新規事業の開発を担当した経験も。「JAアクセラレーター」の伴走者としてスタートアップ企業とJAグループ内の橋渡しを経験。実家は山形県のサクランボ農家で、今回の座談会参加をきっかけに、実家でも「おてつたび」を活用してはどうかと興味を持った。
 
※JAアクセラレーターとは、JAグループが日本の農業・地域社会が抱える課題の解決に必要な新たな商品・サービスの開発を支援するオープンイノベーションプログラム。

 

【PR】提供:JA全農 / 企画・制作:日本経済新聞社 コンテンツユニット