時間帯で味が変わるコーヒーと店内で焼くガレットが名物

客はコーヒーと軽食を楽しみながら、これらの本を自由に手に取って読むことができる。コーヒーにはこだわりがあり、「世界最高品質のコーヒーを追求する」とうたうミカフェート(東京・千代田)とコラボしたオリジナルブレンドを、一杯ずつハンドブレンドで提供。さらに午前10時半から夜の閉店までの営業中、「グッドモーニングブレンド」「アフタヌーンブレンド」「ナイトブレンド」(いずれも660円)と、時間帯によって豆を変え、香りや味の違うコーヒーを堪能できる。

充実の食事メニュー「ガレット」「焼きカレー」

食事メニューはそば粉のクレープに具材を包んだ「ガレット」各種(990円~)や「焼きカレー」(935円)、グラタンにシフォンケーキなどいろいろそろう。ガレットは客席に近いオープンスペースで焼くので、読書中に甘く香ばしい匂いが漂ってくる。カリッともちもちのガレットは、卵やハムと合わせると食べ応え抜群だ。

またクリームたっぷりのウィンナコーヒー、コーヒーフラッペなどブレンド以外のコーヒー系の飲み物も多数ある。アルコールも、ガレットと好相性のシードル(リンゴの発泡酒)やコーヒーを使ったカクテルなどがあり、ウイスキーは特に種類が充実している。たくさんの本に囲まれながら、これらをゆっくり味わう楽しさはひとしおだ。本好きは間違いなく通い詰めてしまいそう。

モノの多さで心が落ち着く「ゼロスペース」を目指す

ところで、昨今は無駄をなくし物を持たないという主義のミニマリストがもてはやされているのに、この店には「モノ」が多い。前出の昭和の家電のほか、宮沢賢治の手書き原稿のレプリカ、学校で見かける掃除用具用のロッカー、理科室の実験道具など……。しかし、不思議とこのモノの多さが気にならない。逆にモノに囲まれることで心が落ち着き、なぜか自分と向き合えるような気分になるのだ。

「懐かしい雑貨やたくさんの本が混在する部屋にまぎれ込み、雑多な空間だからこそ味わえる安堵感を楽しんでいただければ。2000年代初めに起きたカフェブームでは、当時のカフェは家とも職場とも異なる『第3の場所=サードスペース』であるとして脚光を浴びましたが、当店はお客さまがご自身と向き合い、リセットできる場所=『ゼロスペース』となるのではと思っています」(副社長の最上明彦さん)

以上、地方発ブックカフェ2店を紹介した。都内にも書店の横や内部にカフェが併設されている蔦屋書店のようなブックカフェはある。しかし、今回紹介したカフェほどの、本やインテリアに店主の個性が光る店は見当たらない。

最近、本はネットで探すのが主流だが、やはり誰かが自由に集めた紙の本を、手に取るのは楽しい。一緒においしいドリンクや食べ物があれば言うことなしだ。なによりスマートフォンから離れ、リアルな活字に触れるのはぜいたくな時間なのだと気づいた。久しぶりに、この感覚を味わってみてはいかがだろうか。

(フードライター 浅野陽子)

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