昭和時代の偶然の出会いを呼び込む?「しおり」サービス

読む本を探しているうちに、クリームソーダとパフェが運ばれてきた。美しい色味に、思わず本と並べて写真を撮ってしまう。クリームソーダはシュワシュワした炭酸にバニラアイスの優しい甘味が溶ける、昭和の定番の味。パフェはクレームブリュレに牛乳プリン、生のキウイフルーツ、アイス、グラノーラなどが何層にも重なりすごいボリュームだが、適度な甘さの中にいろいろな食感を楽しめて、案外ぺろりといけてしまう。これを食べながら、手元には興味深い本が選び放題で……。なるほど、人気が出るわけだ。

本を読まないタイプのオーナーでさえ「読みたい」本をチョイス

しかし、創業者でオーナーの小田墾(つとむ)さんは意外にも「僕は本はあまり読まないタイプで」と苦笑いする。「そんな僕でも『手に取ってみようかな』と思える本を並べているので、ミーハーさがかえって受けているのかもしれません。当店は開業当初は自らSNS(交流サイト)で発信するのを控え、お客さまが投稿してくださるすてきな画像で、認知度を上げてきました。本やスイーツをきっかけに、『ふらっと立ち寄ったら思いのほか、ゆっくりできた』と満足していただくことを目標にしています」(小田さん)

また同店にはユニークな「しおりサービス」がある。店内の本は持ち帰れないため、読み終えられなかった本には、客席にあるしおりをはさんでおける。そしてこれにはSNSのアカウントを書き込めるのだ。次にその本を読んだ人が、しおりを見てSNSから呼びかけることもできる。

偶然同じ一冊を手に取ったことが新たな出合いに発展し、映画や小説のような展開がネット時代に起こるかもしれない。話題性があり、さりげないしかけが実にうまいのである。

「本とコーヒーとインクの匂いを感じるカフェ」がコンセプトの「黒澤文庫」

地方発ブックカフェ、2店目は日本橋高島屋S.C.(東京・中央)新館4階に入る「黒澤文庫」だ。同店のルーツは東北。16 年に仙台市にオープンした1号店「青山文庫」が人気店となり、秋田市に「赤居文庫」を出店、今年7月に東京に進出した。

こちらはぐっと照明を落とし、黒とダークブラウンが基調のシックな内観だ。コンセプトは「本とコーヒーとインクの匂いを感じる文庫カフェ」だそうで、古い掛け時計やラジオ、タイプライターなど「昭和ロマン」な雰囲気を思わせるアンティーク品が随所に飾られている。客席ごとにテーマを変えた本もぎっしり並べられている。また、壁際にはベージュの塊がずらりと置かれているが、これは実は、カバーを外した大量の文庫本!  店内で読んで、続きが気になったものは100円で購入できる。

続きが気になる文庫本は100円で買い取れるサービスも
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