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地方発のブックカフェが東京に 味も品ぞろえも個性的

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NIKKEI STYLE

昨今のタピオカドリンクバーから立ち飲みバル、アジアンビストロ……。毎年、カフェの新しいトレンドが現れては消える。日本のカフェの歴史は明治以降に始まったと言われるが、そのずっと後、1996年のスターバックス登場後の四半世紀だけでも、「夜カフェ」や「サードウエーブコーヒーチェーン」「昭和の純喫茶」など、5~7年周期でカフェ業界内のプチブームが繰り返されて、さまざまなカフェが話題になってきた。

そして21年、今最も新しいのは「地方発ブックカフェ」である。地方発ブックカフェとは、地方で生まれ、地元の若者に人気となった個性的なブックカフェのことをいう。それが、次々と東京に進出しているのだ。今回はそんな話題の2店を紹介する。

一店目は西武渋谷店(東京・渋谷)の地下2階にある「うのまち珈琲店」だ。「うのまち」とは岡山県南部の玉野市宇野を指している。四国や瀬戸内海の島への玄関口、宇野港で知られる町で、「うのまち珈琲店」はここで若者を中心に絶大な支持を得ているブックカフェだ。店名で検索すると、冒頭のクリームソーダの画像が無数に出てくる。

岡山県内に2店、奈良県にも1店あり、奈良での人気も高い。今年7月に初めて西日本を出て東京に進出。渋谷西武の広報担当者が「うのまち珈琲店さんが来てから、お客さまの年齢層が一気に若返ったんです」と話すほど、東京の若い客層も強くひきつけている。

40代後半の筆者も、一度訪れて魅力を実感した。レンガのアーチの入り口をくぐると雰囲気が一転。親しい友人宅で、ふわりと心が落ち着くような空気感にはっとする。明るいインテリアの中に、約1000冊の本がディスプレーされている。

名物の「うのまちクリームソーダ」(800円)と「クレームブリュレの季節のパフェ」(1000円)を注文し、待つ間に店内を眺めていると、スティーブ・ジョブズの自伝のようなビジネス寄りの本から、お笑い芸人のエッセー、昭和のスポーツ指南書、なぜか今上天皇と皇后の成婚パレードの大型写真集まで……。ジャンルはバラバラで、「なにこれ!」と手にとってしまう不思議なラインアップだ。

読む本を探しているうちに、クリームソーダとパフェが運ばれてきた。美しい色味に、思わず本と並べて写真を撮ってしまう。クリームソーダはシュワシュワした炭酸にバニラアイスの優しい甘味が溶ける、昭和の定番の味。パフェはクレームブリュレに牛乳プリン、生のキウイフルーツ、アイス、グラノーラなどが何層にも重なりすごいボリュームだが、適度な甘さの中にいろいろな食感を楽しめて、案外ぺろりといけてしまう。これを食べながら、手元には興味深い本が選び放題で……。なるほど、人気が出るわけだ。

本を読まないタイプのオーナーでさえ「読みたい」本をチョイス

しかし、創業者でオーナーの小田墾(つとむ)さんは意外にも「僕は本はあまり読まないタイプで」と苦笑いする。「そんな僕でも『手に取ってみようかな』と思える本を並べているので、ミーハーさがかえって受けているのかもしれません。当店は開業当初は自らSNS(交流サイト)で発信するのを控え、お客さまが投稿してくださるすてきな画像で、認知度を上げてきました。本やスイーツをきっかけに、『ふらっと立ち寄ったら思いのほか、ゆっくりできた』と満足していただくことを目標にしています」(小田さん)

また同店にはユニークな「しおりサービス」がある。店内の本は持ち帰れないため、読み終えられなかった本には、客席にあるしおりをはさんでおける。そしてこれにはSNSのアカウントを書き込めるのだ。次にその本を読んだ人が、しおりを見てSNSから呼びかけることもできる。

偶然同じ一冊を手に取ったことが新たな出合いに発展し、映画や小説のような展開がネット時代に起こるかもしれない。話題性があり、さりげないしかけが実にうまいのである。

地方発ブックカフェ、2店目は日本橋高島屋S.C.(東京・中央)新館4階に入る「黒澤文庫」だ。同店のルーツは東北。16 年に仙台市にオープンした1号店「青山文庫」が人気店となり、秋田市に「赤居文庫」を出店、今年7月に東京に進出した。

こちらはぐっと照明を落とし、黒とダークブラウンが基調のシックな内観だ。コンセプトは「本とコーヒーとインクの匂いを感じる文庫カフェ」だそうで、古い掛け時計やラジオ、タイプライターなど「昭和ロマン」な雰囲気を思わせるアンティーク品が随所に飾られている。客席ごとにテーマを変えた本もぎっしり並べられている。また、壁際にはベージュの塊がずらりと置かれているが、これは実は、カバーを外した大量の文庫本!  店内で読んで、続きが気になったものは100円で購入できる。

客はコーヒーと軽食を楽しみながら、これらの本を自由に手に取って読むことができる。コーヒーにはこだわりがあり、「世界最高品質のコーヒーを追求する」とうたうミカフェート(東京・千代田)とコラボしたオリジナルブレンドを、一杯ずつハンドブレンドで提供。さらに午前10時半から夜の閉店までの営業中、「グッドモーニングブレンド」「アフタヌーンブレンド」「ナイトブレンド」(いずれも660円)と、時間帯によって豆を変え、香りや味の違うコーヒーを堪能できる。

充実の食事メニュー「ガレット」「焼きカレー」

食事メニューはそば粉のクレープに具材を包んだ「ガレット」各種(990円~)や「焼きカレー」(935円)、グラタンにシフォンケーキなどいろいろそろう。ガレットは客席に近いオープンスペースで焼くので、読書中に甘く香ばしい匂いが漂ってくる。カリッともちもちのガレットは、卵やハムと合わせると食べ応え抜群だ。

またクリームたっぷりのウィンナコーヒー、コーヒーフラッペなどブレンド以外のコーヒー系の飲み物も多数ある。アルコールも、ガレットと好相性のシードル(リンゴの発泡酒)やコーヒーを使ったカクテルなどがあり、ウイスキーは特に種類が充実している。たくさんの本に囲まれながら、これらをゆっくり味わう楽しさはひとしおだ。本好きは間違いなく通い詰めてしまいそう。

ところで、昨今は無駄をなくし物を持たないという主義のミニマリストがもてはやされているのに、この店には「モノ」が多い。前出の昭和の家電のほか、宮沢賢治の手書き原稿のレプリカ、学校で見かける掃除用具用のロッカー、理科室の実験道具など……。しかし、不思議とこのモノの多さが気にならない。逆にモノに囲まれることで心が落ち着き、なぜか自分と向き合えるような気分になるのだ。

「懐かしい雑貨やたくさんの本が混在する部屋にまぎれ込み、雑多な空間だからこそ味わえる安堵感を楽しんでいただければ。2000年代初めに起きたカフェブームでは、当時のカフェは家とも職場とも異なる『第3の場所=サードスペース』であるとして脚光を浴びましたが、当店はお客さまがご自身と向き合い、リセットできる場所=『ゼロスペース』となるのではと思っています」(副社長の最上明彦さん)

以上、地方発ブックカフェ2店を紹介した。都内にも書店の横や内部にカフェが併設されている蔦屋書店のようなブックカフェはある。しかし、今回紹介したカフェほどの、本やインテリアに店主の個性が光る店は見当たらない。

最近、本はネットで探すのが主流だが、やはり誰かが自由に集めた紙の本を、手に取るのは楽しい。一緒においしいドリンクや食べ物があれば言うことなしだ。なによりスマートフォンから離れ、リアルな活字に触れるのはぜいたくな時間なのだと気づいた。久しぶりに、この感覚を味わってみてはいかがだろうか。

(フードライター 浅野陽子)

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