ライフスタイルの変化に合わせて、市場のスーツがどんどん多様化してきた今、実際に“買い”の1着はどれなのか? 王道のクラシックスーツから今どき高機能ビジネススーツ、休日にも使えるリラックススーツ、コスパに優れたスーツ……。本特集では、事前に各セレクトショップや百貨店に2021年秋冬のイチオシの1着をアンケート。その結果を元に一堂に集めたスーツたちを、ファッション業界のスーツ識者たちとじっくり見ながら大品評会。ジャンル別に、今、買うべきスーツ大賞を選出した。
事前アンケートを元に、編集部がピックアップした本アワード受賞スーツのことをよく知る3人にお集まりいただき、生地にフォーカスした座談会を行った。
■生地のプロ3人と座談会
ファブリック大賞 オーダーの際にも参考に
ここ数年英国調の生地が人気だったが、コロナ禍以降、ユーザーの選ぶ生地に微妙な変化が起きているようだ。ここで選出された4着もそれを反映したものだ。
「カントリーなブラウンがドーメルで都会顔に」ー篠塚さん
■KYOTO BESPOKE(京都ビスポーク)=左
Fabric:ドーメルの「アマデウス」
「総毛芯仕立て&国内縫製を基本とする同店のオーダースーツに、アマデウスを合わせています。茶は一歩間違えるとカジュアルなイメージが強くなりますが、この生地はシャイニーフィニッシュにより華やかな場面もこなすバランス。それでいてしっかりした打ち込みにより普段のビジネスでも安心して着用できます」(篠塚さん)。10万7800円〈オーダー価格〉(京都ビスポーク 京都本店)
「こん身の一着と思わせてくれる生地です」ー山浦さん
■HIDEAKI SATO(ヒデアキ サトウ)=右
Fabric:ドラッパーズの「ブラゾンスーパー150’s」
「丸みを帯びた美しいフォルムを描く佐藤氏ならではの型紙に、ドラッパーズのブラゾンスーパー150’sをのせた一着。この生地は高級原毛ならではの光沢や滑らかなタッチを堪能できながら、経緯双糸使いによりハリコシもしっかりとある。見た目の高級感も高く、こん身のスーツを仕立てたい人に受けています」(山浦さん)。34万1000円〈オーダー価格〉(日本橋三越本店)
橋本 クラシック回帰で英国生地のトレンドが続きましたが、最近は少し状況が変わってきたようですね。
津田 光沢があって柔らか、そして少し明るい色目の生地提案が増えています。これはコロナの影響かもしれません。着ることで気分が明るくなる生地の需要が高まっている。
山浦 アワード選出スーツで言うと、ドラッパーズの“ブラゾンスーパー150’s”や、ドーメルの“アマデウス”がそうですよね。こういう柔らかでリッチな生地が売れている。
橋本 ともに経緯双糸のため程よいハリがあり、仕立て栄えもしますね。