有機EL画面は見やすい 縦横比16対9は動画視聴向き
iPadやSurface Proを確実に上回っているのが画質だ。FMV LOOXは、液晶ではなく有機ELディスプレーを搭載しており、黒色が締まっていてくっきりと見やすい。仕事でWordやExcelを使っていても、文字を判別しやすいメリットがある。有機ELは、よく点灯していた部分が、使い続けるうちに非点灯時にも影のように見える「焼き付き」が気になることが多い。しかしFMV LOOXは、劣化耐性の高い有機材を採用しているので、その心配は少ないという。

画面サイズの数値は13.3型と大きいが、画面の縦横比が16対9(1920×1080ドット)なので、面積ではSurface Pro(13型で3対2)やiPad Pro(12.9型で4対3)よりもコンパクトだ。昨今のパソコンやタブレットは16対10や3対2など、より正方形に近い縦横比がトレンドになっている。Excelや電子書籍などの利用では、正方形に近い縦横比の方が広範囲を表示できて使いやすいことが多い。FMV LOOXの16対9画面は、どちらかと言えば映画やYouTubeを見たり、動画編集をしたりする人に向いているといえる。

動画視聴では、スピーカーの音質も重要だが、こちらも薄型のタブレットとしては文句なし。4つのスピーカーがあり、本体を横にして映画などを見ても、立体的な音響を感じられた。

CPUは、インテルのCore i7-1250Uを採用する。最新の「第12世代」のCPUではあるが、低消費電力タイプの「U」シリーズである点に注意が必要。このシリーズは、消費電力(ベースパワー)が9Wと小さめで、省電力性の高さと発熱の少なさが特徴だ。FMV LOOXがファンレスでとても静かなのは、このCPUの効果が大きい。
ただ、2022年4月から登場したノートパソコンの多くは、「P」シリーズ(Core i7-1260Pなど)のCPUを搭載する。こちらはベースパワーが28Wと増える代わりに、「Pコア」と呼ばれる高性能演算装置が4つ(Uシリーズは2つ)に増える。つまり、FMV LOOXのCPU性能は、こうした上位のCPUに及ばないのだ。もちろん、Uシリーズであっても約1年前の第11世代のノートパソコン用CPUよりは高性能で、個人的には十分だと思う。ただ、性能を最重要視するのであれば選択肢から外れるかもしれない。
一方、iPadに迫ると感じたのが、別売りの「LOOXペン」(実勢価格1万3200円)による手書き機能だ。ワコムと共同で開発したという専用のペンは筆記の遅れがほとんど感じられず、描いた線が途切れる“飛ぶ”現象もなかった。これまでに試したペン対応パソコンの中でも、1、2を争う書きやすさだ。

惜しむらくは、ペンがケーブルによる充電式であること。ここは、iPad Proなどのように無線充電方式にしてほしかった。富士通でもいったんは無線充電式を検討したというが、「残念ながら、アンテナやスピーカー等で内部が目いっぱいな状態で、ワイヤレス充電のモジュールを入れる場所がなかった。今後の課題としたい」(プロダクトマネージメント本部第一PM統括部第二技術部マネージャーの内田哲也氏)とのことだった。
別売りの専用キーボードも非常に出来が良かった。しっとりとした手触りで質感がとても良く、高級モデルらしい仕上がりになっている。脱着式で薄型のキーボードを採用しているが、打ち心地は文句なしだ。同社の「キーボードマイスター」と呼ばれる技術者が打ちやすい打鍵感を研究した結果、文字キーがやや重め、周辺キーがそれよりも軽い打ち心地に調整されている。欲を言えば、キーボード後端がせり上がって角度が付くデザインならさらに良かった。また、付属のペンでの手書きの際に、キーボードを裏側に回せないのも残念だ。キーボードのサイズを小さく設計したため、360度回転させることができなくなったという。

