コロナ禍のリベンジ消費 時計が自己表現ツールに
――リベンジ消費がなぜ時計に向くのですか。
「時計が自己表現のツールであるということが大きな理由でしょう。今日、時刻を知るために時計を着ける人は多くありません。時計はその人自身を表す重要なアイテムとして魅力を発揮しています。ものすごくエモーショナル(情緒的)なものだともいえます。ダイバーズウオッチやパイロットウオッチはそのスポーツをするために選ばれるのではなく、そこに込められたストーリーやデザインに共感した人が購入しているのです」
――昨今の消費を語るキーワードの一つとして「ナラティブ(物語)」が挙げられます。時計もそうでしょうか。
「まさにそうです。最近感じるのは若い世代や時計コレクターの間で、歴史ある時計、本格的なモノに価値を見いだす傾向が強まっているということです。私はそれが近年の時計ブームの要因だと考えています」
「ロンジンには長い歴史があり、革新的な機構のパイオニアでもあります。高振動ムーブメントやフライバック機能がついたクロノグラフをいち早く開発しました。GMT(複数の時間帯を表示する機能)を開発したのもロンジンです。こうしたパイオニアとしての歴史や物語、本格感が強い関心を集めているのでしょう。近年、時計の価値観を変えたのは若者です。彼らはとにかくブランドの歴史を知りたがる。そして噓がないもの、本質的なものを求めています。豊富な史実のアーカイブを擁するロンジンのストーリーには噓がなく、説得力があります」

――時計ブランドでは名品の復刻がトレンドとなっています。新作2点の特徴を教えてください。
「いま私が着けている『ロンジン スピリット Zulu Time(ズールータイム)』は100年を超すGMTの知見とパイロットロマンが詰まったモデルです。1908年にロンジンが第2時間帯を見ることができる時計を開発したのは、当時のオスマン帝国からの要請によるものです。そして25年には初めてGMTの腕時計を世に送り出しました。それが初代ズールータイムです。新作ではさらに高度な技術を結集しました」
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